2008年8月22日 08:34
六は23題《4.あだな》<伊留> (キサキ)

こちらのサイト様から素敵なお題をお借りしました。

登場キャラ:六は。

前半書いてて伊留とも留伊とも取れるなぁと思っていたら、最後に伊作が暴走して伊留になりました(何)

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4.あだな



「と、いうわけで。留も僕のことをあだなで呼んでくれないかな」
「どこら辺が『と、いうわけで』なんだかさっぱり分からないんだが?」

 部屋に戻ってくるなり伊作に腕を引っ張られれた。引っ張られて、向かい合うような形で座らされた。しかも正座でだ。
 そうして、第一声がそれ。


「よく考えたらずるいよね。何だかこれじゃぁ僕ばかりが君を好きみたいじゃないか」
「…………すまん伊作、話が見えてこないんだが」
「だからあだなの話だよ!」

 いきなり怒鳴られた。理不尽だ。そんな中途半端な言葉じゃ誰も理解出来ないと思う。
 とりあえず、こいつは俺にあだなで呼んでほしいのだ、ということは第一声で既に分かっている。分かってはいるが。

「お前をあだなで呼ぶ必要性が感じられないんだが」
「酷っ!?ちょっと留さん酷すぎないかい!?」
「は?何が?」

 俺今そんなに酷いこと言ったか?と問うと、伊作はわっと泣き出した。勿論嘘泣きだ。

「だってあだなっつーのは呼びにくい名前を呼びやすくする為に付けるものだろう?」
「ちょっと何その夢も希望も愛もない考え方!」
「お前の名前三文字だから呼びやすいし」
「あ、ありがとう。―――ってそうじゃなくてっ!」

 言って伊作はバンっと床を両手で叩いた。しかし叩いた場所が悪かったらしく、手を抑えて涙目になって蹲る。さすが不運。
 ちなみに、今度は本物の涙のようだ。

「百歩…譲ってっ、君の考え方を肯定するとして…!」

 伊作が痛さの所為で途切れ途切れになりながらしゃべる。そんなに痛いのなら痛みが引いてから言えばいいだろうに。
 自業自得とはいえあまりにも伊作が痛そうにしていたものだから、さすがに心配になって大丈夫かと背中を撫でてやる。

「君、確か三年生の富松作兵衛くんのことは『さく』って呼んでたよね?」
「え、ああ…まぁ」
「僕は三文字、富松くんは四文字。三文字と四文字に間にそびえ立つ壁って何?何なの留さんッ!」
「ちょ、落ち着け伊作…っ」

 ……なんて人が優しくしてやったら、伊作が突然俺の肩を掴んでユッサユッサと左右に揺らしだした。目が回る。お前さっきまでの痛みはどこへ行った。
 とりあえず何とか伊作を落ち着かせて、再び向かい合わせで座る。勿論正座でだ。

「いいかい留さん。そもそもあだなというのは別名愛称とも言って、親しみを込めて呼ぶものでもあるんだよ?」
「へー」
「だから君も僕のことを称で呼んでくれないか!」
「何か今やたら『愛』の部分を強調しなかったか?」

 そんな俺のツッコミは軽く無視されて、伊作は俺の両肩に手を置く。そうなると自然、見つめ合う形になるわけで。
 伊作の目は真剣だ。

「…何だってお前、そんなに俺にあだなで呼んでもらいわけ?」
「僕は君に、君だけの呼び方で名前を呼んでもらいたいんだよ!」

 他の誰かはあだなで呼ぶくせに僕には呼んでくれないなんておかしい。僕の一番は留なのに。留の一番は僕じゃないの?、と。
 そこまで言われて漸く俺は、あぁ、と合点がいった。そして同時に、そんなことをする必要などないのに、とも思う。
 だって、そんなことをしなくたって。


「なぁ伊作。俺たちは、呼び方ひとつでどうにかなるような関係じゃぁないだろう?」
「……留?」
「あだなで呼ばなくたって、俺はお前のこと、ちゃんと大事に思ってるよ」

 だから、呼び方なんて大した問題じゃないと思うけどな。
 そう言うと、伊作は急に俯いてしまった。俯いて、そのまま顔を上げる気配がない。

「伊作…?」

 もしかして伊作にとっては『大した問題』だったのだろうか?
 心配になって顔を覗こうとすると。

「うっわ、も、何君…」
「え?」

 伊作は顔を真っ赤にして口元を抑えていた。

「君、今物凄く恥ずかしいことをさらっと言ってくれたね?」
「え、」

 今のはそんなに恥ずかしい台詞だっただろうか?
 だって本当のことだし、と俺が首を傾げると、伊作がお返し、と言ってすっと俺の耳元に唇を寄せてきた。
 そして、耳元で。


「ねぇ留。僕も君のこと、ちゃんと大事に思ってるよ」
「………っ!」


 ついさっき自分で言った言葉をそのまま反復されて。
 あぁ、これはもしかしなくても恥ずかしいかもしれない、と思った。

 今度は、俺が顔を赤くする番。



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ま さ か の 甘 オ チ 。
書いててめっちゃくちゃ恥ずかしかった。何あんたら!何こいつら!も、馬鹿っ!!(馬鹿はお前だ)
実ははじめはギャグオチも考えてたんですが、何かこれ書いてたらいっぱいいっぱいになってきたので(自分が)もういいです。

こんな話書いてますが、留は伊作のことを「いさ」と呼んでれば萌えます。でも滅多に呼ばないんだよ!割合的には7(伊作):3(いさ)くらいの比率、みたいな!
も、萌え!!(煩い)
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