2009年4月3日 12:31
六は23題《12.痛い目》<伊留> (キサキ)

登場キャラ:六は

な…何か初めて(?)ちゃんと伊留っぽくなった気がする!
定番風邪ネタです。風邪は一旦ぶり返すと厄介ですよね。

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12.痛い目



 一体何がいけなかったのか。朦朧とする意識の中で、留三郎は考えた。
 思い当たる節はいくらでもある。
 二日前に文次郎と盛大に一戦やらかしたこととか。昨日たまたま通りかかった池で、誤って転落した後輩を助け上げたこととか。急ぎの修理の依頼をほぼ完徹状態で仕上げたこととか。
 あと、自身の勝手な判断で、三日前から薬を飲むのを怠っていたこととか。

「全部だ馬鹿」

 機嫌の悪さを隠すことなく、伊作はバッサリと切って棄てる。
 あ、やっぱり?と留三郎は苦笑いを浮かべた。
 伊作があからさまに溜め息を吐く。

「僕が忍務から帰るまで薬は続けて毎日飲むことって、何度も言ったよな?」
「体調も良くなってきたから、もういらないかと思ったんだが…」

 それを聞いて、伊作の機嫌が更に急降下した。まだ下があったのか、と留三郎は感心する。
 べしっと少々乱暴な手つきで額へ湿らせた布が充てられた。

「あぁ馬鹿だ。大馬鹿だ。君ね、風邪は治りかけが肝心なんだよ。一度ぶり返すと中々治らない。なのに文次郎と喧嘩?池に入った後はちゃんと温かい風呂に入ったんだろうな?入ったとして、その後に完徹?それじゃぁぶり返すの当たり前だろ!何をやってるんだこの大馬鹿者!」
「あ゙ー分かった。馬鹿認定でも何でも甘んじて受けるから、余り大声出さないでくれないか…」

 頭に響く。勘弁してくれ、とうんざりしたように留三郎が言う。熱が出ているのだ。意識は宙に浮いているかのように朦朧としていて、身体は怠いし頭はガンガンする。
 しかし、伊作は聞く耳など持たず。

「いいや、君は分かっていないね。君っていつもそうだもの。そんなことを言って、どうせまた同じ事を繰り返すんだろ」
「いや、今回は懲りた。ちゃんと分かったから、」

 だから静かに、という留三郎の言葉は、伊作が手にした液体を目にした途端に止まってしまった。

「…善法寺さん。その臭いのキツイ物体は一体何ですか?」
「君は一回痛い目見ないと理解出来ないんじゃないかと思って。大丈夫、とても良く効く薬だよ。…悶えるほど苦いけど」
「ふ、普通の薬でいい!」
「何言ってるの。それだと君が学習しないでしょう。僕が君を躾けてあげるよ」

 痛い思いをしたら次からは気を付けるものさ。犬猫と一緒だ、なんて可愛らしい笑顔でとんでもない発言をする伊作に、「俺は犬でも猫でもない!」と突っ込むタイミングすら奪われて。

「あぁ、口移しでもしてみれば、少しは甘く感じるかもしれないね?」
「ちょ、いさ、待…っ」

 あぁ本当に次からは気を付けよう、と。
 留三郎はそう肝に免じたのだった。



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移サレマシタ。

実は元々は伊作の風邪を移されたのだ、という裏設定(43巻時の)
なので口移ししても伊作に風邪は移らないよ!

しかし留さんの風邪がここまで酷くなった一番の原因は、伊作がいなかったからです。伊作がいたら、留さんに風邪ぶり返すような真似は絶対させない。
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