2009年3月4日 12:03
6は23題《10.ドッキリ》<六は+α> (キサキ)

登場キャラ:六年生。

留三郎+長次+いないようでいる用具委員。
伊作+仙蔵+いないようでいる文次郎と小平太。
……の内訳です。

ドッキリってこれしか思いつかなかった…。

ちなみにこれの楽屋裏話はこちら

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10.ドッキリ



 いつものように用具倉庫の前で委員会活動をしていたところ、不意に背後から名前を呼ばれた。
 作業を一旦中断して顔を上げてみると、そこには珍しい客人が立っていた。

「お前がここに来るなんて珍しいな。何かあったのか長次?」
「……小平太が」
「…あの破壊魔、今度は何を壊した」
「馬の飼育小屋の壁と、中の柵を」

 聞いた瞬間、ああもう!と喚いて留三郎は頭を抱えた。
 小平太がものを破壊するのは毎度のことだが、だからといって毎度用具委員会がその後始末に駆り出されるのは、どうにも納得がいかない。それが仕事だと言われればそれまでだが、委員会活動の三割は小平太が原因ですと言っても過言ではないこの状況では、文句のひとつやふたつ、言いたくもなるというものだった。しかも今回壊したのは、馬の飼育小屋の壁。
 あぁ生物委員たちがさぞかし泣いていることだろうなと、留三郎は心の中で合掌する。

「今生物委員会が総出で逃げ出した馬の捜索に当たっている」
「っつーことは、その間に小屋の修理を終わらせなきゃいけないわけだな」

 ふぅ、と溜め息を吐くと、留三郎は手元の作業道具を一旦片付けた。

「作兵衛、壁の修繕用の道具を持ってきてくれ」
「はい」
「長次、わざわざ知らせてくれてありがとな」
「…いや。級友の不始末なれば当然のこと」
「先輩、持ってきました!」
「あぁありがとう。よし、じゃぁ用具委員会出動だ!」
「「「「おーっ!」」」」

 委員長を先頭に、三年と一年がバタバタと元気良く駆けていく。
 用具倉庫の戸は開け放たれたままだった。
 一人その場に残った長次がニヤリと笑ったのを、誰も知らない。



「おい」
「あぁ仙蔵、どうかしたのかい?」
「怪我人を持ってきた」
「は?」

 ぽいっと仙蔵が投げて寄越したのは、見るも無残な文次郎と小平太。あぁ道理でさっきから焦げた匂いがすると思った、と伊作は冷静に考える。大方仙蔵が二人に宝禄火矢を投げ付けたのだろう。

「で、何でこんなことになっちゃったの?」
「煩いから黙らせた」
「頼むから怪我しない方法で黙らせてくれるかな」
「出来ると思うか?」

 あーうん、と三秒ほど考えてから、ごめんと伊作は謝った。文次郎ならともかく、小平太を穏便な方法で黙らせることなど出来そうもない。

「まぁしかし怪我をさせたのは事実だ。どれ、今回は特別に私が手伝ってやろう」
「へ?」
「火傷の薬はどこにある?」
「あ、えっと上から二段目の引き出しに入ってるけど…」
「これか。よし」
「あ、ちょっと待って仙蔵それ違」

 ―――ぺと。

「「ぎゃあああぁぁっっ!!??」」

 医務室に二人の断末魔が響き渡った。
 その混乱に乗じて棚へ手を伸ばした仙蔵がニヤリと笑ったのを、誰も知らない。



「留さん、今晩委員会の会議を開くから、僕部屋に戻らないからね」
「伊作、今晩委員会の会議を開きたいんだが、俺らの部屋使っていいか?」

 授業を終えた教室にて。二人が口を開いたのは、ほぼ同時だった。
 お互いに顔を見合わせる。

「あぁそれは別にいいけど…臨時の会議だなんて何かあった?」
「いや、その、まぁいろいろと。そっちこそ急に会議だなんてどうしたんだ?」
「いや、その、まぁいろいろと…」

 二人とも視線を逸らして、はははと曖昧に笑ってみせた。

(倉庫の備品が無くなったなんて言えない…)
(医務室から胡椒が盗まれたなんて言えない…)

 言ったが最後、目の前の級友に馬鹿にされるか怒られるか。ならば相手に知られる前にことを解決してしまえばいい、と二人は判断したのだった。

((絶対犯人を取っ捕まえてやる!))

 熱い決意を胸にした二人がことの真相を知るのは、その晩のことである。



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原作44巻の3章に続きます。

用具委員会のお仕事は、小平太三割(器物破損)、小松田さん三割(尻拭い)、綾部一割(穴埋め)、他の全校生徒で三割くらいな感じで。
用具委員会は、何だかんだ文句を言いつつイキイキと現場へ駆け付けそうです。委員長先頭に一列に並んで走ってると大変微笑ましいと思う。
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