悟飯は俺を好きだと言う。幼い頃は可愛いもんだと鼻で笑って特に気にも留めていなかったが、どうも俺の考えていたものとは意味が違ったようだ。青年期を迎えたにも関わらず、奴は同じ台詞を繰り返す。しかも年を重ねるに連れ声色と眸の奥に熱を帯びてきたものだから、俺は困惑で閉口せざるを得なかった。

「おまえは尊敬と恋を間違えて捉えているだけだ。幼い頃、孤独な中で俺が師となったことで刷り込みが生じた。それだけだ。」

「違います。僕はピッコロさんが本当に好きなんです。…あなただって、もう冗談じゃないことくらい分かっているでしょう。」

冗談だなんて最初から思っちゃいない。その真剣な眼差しを見れば分かる。ただ、勘違いであって欲しかった。俺はこいつが可愛かったし、師として道を踏み外して欲しくなかった。俺は異星人である上に性別もない。本気か冗談かという以前に、微かにでも恋心を抱くなどということがあってはならないのだ。

「本気なら尚更、応えられん。俺はおまえたち人間と違って色恋なんぞに興味はないし、そんな概念もない。しかもおまえは俺の弟子だ。おまえが道を踏み外そうとしているならばそれを留めるのが師というものだろう。」

瞬間、悟飯の顔が歪む。その筋肉の収縮の仕方から泣くんじゃないかと思ったが、奴は堪えた。当たり前のことだが、外見だけじゃなく中身も成長しているんだなと今更ながら感慨深く思う。いつまでもガキ扱いではいられないことが、俺の胸に焦りを生んだ。深呼吸をした奴は、真っ直ぐ俺を見つめて頬に手を伸ばす。

「…でもピッコロさんは僕を守ってくれた。厳しく優しくしてくれた。それって僕が好きだから…じゃないんですか?」

俺は何も答えなかった。否、答えられなかった。どうして触れてくる悟飯の手を振り払えない?なぜ頭の中では警鐘が鳴り響いているのに体は逃げることを拒否する?俺は自嘲する他なかった。悟飯の為だと尤もらしく正当化して説得を重ねていたが、本当に説得したかったのは、勘違いだと思い込みたかったのは──、






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