白銀の月を見ていたらアンタを思い出したの。月光が透けるように綺麗で、掴もうと手を伸ばしたわ。けれど意思に反して、手は無意味に空中に弧を描いたの。

ううん。掴めるだなんて最初から思ってなかった。なのにこんなにも悲しいのは、涙が溢れるのは、なぜ?

月は煌々と惨めなアタシを照らし続ける。今度は去り際の、アンタの皮肉っぽい笑みを思い出して、アタシはまた声を上げて泣いた。

夜が怖いの。もう今では思い出せない、小さい頃アンタがアタシに与えてくれた温もり。アンタがアタシの手の届かない所にいる現実を、思い知らされるのよ。







こんな綺麗な月の夜は。
月光に包まれて、アンタに抱かれる夢を見させて。





─『月』05/05/04執筆







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