アタシの事なんて本当は少しも好きじゃないくせに。何でそうやって優しく抱くの。いっそ乱暴にしてくれれば、嫌いになれるのに。



「気持ちエエ?」
「あ…ッ…。」



抵抗したくても幼少の頃から躾られたこの身体は簡単には直らないらしい。アタシの身体は身勝手なこの男を喜んで受け入れて、意志とは関係なく声を漏らす。



「乱菊は綺麗やなぁ。」



やめて。優しく瞳を細めて愛しそうに名前を呼ばないで。綺麗だなんて言わないで。アタシはアンタのそういうとこが大嫌いなのよ。



「…最中に考え事やなんてエエ度胸しとるなァ?」
「や…ッ!ギ、ン…!」



自分が気持ち良くなる為だけにアタシを利用してるだけの事。愛なんか感じちゃいけないって分かってる。






それでも。






「愛しとる。」






そんな大嘘を吐くアンタ以上に、僅かな期待を抱いてしまう自分が、憎い。





─『憎い』05/05/04執筆







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