もう君は、
俺に心を向けてくれないのか。


「オイ、猿。」
「…何よ。」


もう君は、
俺に顔さえ向けてくれないのか。


「…俺は、」
「もう帰るわ。」


無理矢理に抱き締めた身体。

するり、



腕を通り抜けていく。


嗚呼、大事なものが
この手から零れ落ちていく。


今、必死に手を動かして
掴めたのは、この、空気だけ。


かつて俺達が恋人だった頃、
俺が君を捨てたように


今度は俺が捨てられた。


否、今考えてみれば
あの時捨てられたのは君じゃない。


そう、俺の方だった。


俺ばかりが君に未練を残して。
こんな悪態ばかり晒して。


「あや「私、好きな人がいるの。」
「強くて、優しくて…ステキな人。」





坂田銀時なんか大嫌いだ。






-エムブロ-