ひたり、と冷たく鈍い光を放つ刃を、暗闇でも分かる彼の白く細い首筋に宛てがう。

「逃げねーの?」

唯ぼんやりと遠くを見詰める、朱の着物を肌蹴させた其の男の妖艶な事。

「…早く殺してくれ。」

俺にはもう何も無い、と。久々に聴けた第一声がそんな言葉だなんてあんまりだ。

俺が居る、と言い掛けて、己も彼を裏切った一人だと気付き、自己嫌悪に陥った。

「見てらンねーんだよ。」

オマエが傷付いてく姿。それ故に彼を独り戦場に残して来た事を、今更悔いても遅い。

「俺も一緒に探してやる。」

高杉は意味が分からないといった様子で眉を顰め、初めて俺へと目線を向けた。

「前にも、あっただろ?」

───ガキん頃、先生が居なくなったってオマエが大泣きして、仕方無く俺が手ェ引いて一緒に探してやった事。

意味を理解したらしい高杉は一度隻眼を見開いた後、ゆっくりと頷いて薄く微笑んだ。










俺達は手を繋いだまま互いを貫いた。






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