三文ゴシップ







なんてこった…



いま自分の言葉として聞かされた常套句。
十代の頃あれほど嫌悪していたその種の月並みな言葉を、自分が一生を通じてたった一度きり言えたのが今なんだと悟ってガックリきたのだ。
あらゆる生の瞬間が似ているように、
○と名のつくものも、結局は同じようなものなのかもしれない。
びっくりしている小娘を眺めて、目を伏せぎみにもう一度だけ言おうとして、やめた。


聞き返してくれるな、と思う。
いつ死ぬかわからない、こんな自分に対して、こんな逸話を背負わされた誰かを後に残してゆくのは、奇妙なことでしかないのだ。
その誰かは十代の頃にはあれほど優しく、毒を含むこともなかった相手だったが、いまではひどく変わってしまったと、一種の自嘲の念とともに考えた。自分にはもう、あの昔の面影すらつまらないのだ。


───…彼女はいったい、どうなってしまったのか。


あのすっきりとした亜麻色の、儚い首筋の思い出を、思い描くのはもう自分しかいないのに…‥。
一瞬顔をそむけたくなった。
小娘は答えなかったが、その手を握りしめている。
自分の心臓が自分をおびえさせ、もはや馴染みとなった苦痛を認めた。一瞬でも安心していられて、誰かの肩と煙草の味をいま味わえたら──…。


けれど、いま吸うその味ほど低脳で情けないものもない。
やや気づまりな笑いを見せた小娘に、もっと気の利いた言葉を漠然と期待していたなんて。
自分のすべてにあまりにも嫌悪を感じたので、思わず嘲いが浮んできた。











きみは愛しているの、あの男を












「おまえは愛しているのか、あの男を」




fin
そうじゃないって言って。



07/23 18:44
[銀魂]




・・・・


-エムブロ-