腑抜けども、悲しみの愛を見せろ







ちいさな手をとり、寝床に座った。


そのまま万年床の上に、動かずに長々と横たわったままでいた。
少女はそんな自分を見おろして座り、ひんやりとした手で彼の顔を撫でている。
銀時の心の中には次第に不機嫌さと怒りがこみあげきた。
暗黙のうちに神楽に、神楽のために冒してきた数々の違反を心中ひそかに全部思い起こしていた。
だがそんなものは上っ面の咎めたてであって、怒りの本当のもとは、ずっと深いところにある。
ここでは保護者という皮を被った化け物が、年端もいかぬ少女の膝枕に横になっている。
銀時には自分が十字架に引き下ろされ、嘆き悲しんでいるマリアの手に抱かれている、裸のキリストのように思え、同時にその考えにぎくっとした。
自分がここへ来たのは慰めや同情を受けるためではなく、まったく別の目的のためだった。だから───彼は神楽にしつこく頼みこみ、顔や服にまでキスをし、気づかれないよう少女の服のボタンを外しにかかった。


かつてないみじめさで、自分は女というものの同情をひこうとしている。


思いの遂げられない悲しむべきみじめさを、憩いのない日々が果てしなく続くみじめさを、あこがれの満たされない永遠の屈辱を…。
銀時には、神楽を得ようとして逆にどんどん嫌われていく腐れ縁どもや、彼女との関係上の忌まわしき複雑さに手をこまねいている肉親、その忠実な下僕、さらには声すらかけられない臆病な男たちが思い出せた。
だがいま自分こそが、神楽をものにしようと虚しくもがいている。
銀時は大声を出して不満をぶちまけたい気持ちだった。
どうして神楽は、子供だから処罰を受けず、世間から後ろ指をさされず、犯罪者のレッテルも張られず、大人として責任を追及される銀時といっしょにいる時だけは、こうして大人な態度を取るのか。どうして愛においても子供でいてくれなかったのか。
そして自分はなぜ成人のあらゆる屈辱を甘受しなければならないのか。
銀時は神楽をひどく愛した。
神楽が自分を愛していないのを知っているだけに、なおさら彼女を愛した。
それは、神楽の無抵抗があまりにも無意味で理解し難く、無益で、銀時を狂気にかり立てたからだ。
こうして半時間ばかり黙りこくっていたが、彼はまた彼女に襲いかかった。






さて、彼女はどうして彼を愛せたのか?










fin


01/27 12:03
[銀魂]




・・・・


-エムブロ-