零優零。
温度異常。
**100920








黒主学園も夏期休暇に入りました。

寮生の皆さんは帰省して
学園内は日常の喧騒から離れ、静寂な空気が流れています。


私、黒主優姫も寮から理事長の居住区へと里帰り。


夏は何かが動く予感・・・

と言っても、私の場合はいつもと変わらないんだけど。
開放感からそんなどこかワクワクする様な思いも出てくるのです。


相棒の零は食事はこちらで済ませ、何故か寮に戻ってしまいました。


(少し寂しいな)


なんて思うのは内緒だけれど。



リビングに一人取り残された優姫は小さな溜息を吐いた。
理事長も今日は帰りが遅い。

ふとリビングのテーブルにどっさりと積まれている本が目についた。
段ボールもあり、その中にも本が詰まっている。
そう言えば零が何か運んでいたっけ。

零の本だろうか。


優姫はその本の山を物色する。
零が読んでる本なんて小難しい本しかないだろうけれど。

いっつも難しい顔をして読んでいるのだから。


『あ、難しい顔はいつもの事か』


と、眉を寄せた零の顔を思い浮かべると
何故だか顔がにやけた。

今 何してるかな。

などと思いながら面白そうな本を探してみる。


『漫画なんて・・・ある訳ないか』


と苦笑いを浮かべながら物色していると単行本サイズの本が出てきた。
カバーが掛けられているそれをペラリ開くと中身は少年漫画だった。


『へっ?』


まさかホントに漫画があるとは思わず、優姫は素っ頓狂な声を上げる。

難しい顔して漫画?あの零が漫画?
しかもカバーを掛けて小細工までして・・・


『・・・ま、まぁ零も高校生だもんね!
漫画くらい読むよね!』


少し、いや、大分意外だったがそんな事もあるだろうと無理矢理納得させる。
だが何となく零の趣味を知れる様で、少し楽しくなってきた。

その後に出てきたのは心理学の本。経済学の本。
意味不明な国の文字で書かれた読解不明の本・・・・

小難しいものはことごとく。
自分には理解出来ないが、何となくそのラインナップに安心する。


そして何故か世界の犬辞典。


零が犬辞典・・・
世界中の犬を知りたいのかな。


優姫はぷぷーと笑いながら、次の本を手に取った時、
本の表紙にガン!と言う衝撃を受けて身体を固まらせた。
異色を放つそれは、女性が表紙の雑誌で・・・


『はぁッ!!!!』


優姫は思わぬ衝撃に変な声をあげて顔を真っ赤にさせた。

何故ならそこには
かわいい女の子が水着姿で写っていたからだった。


『こ こ こ これ 何?!!
ぜ、零?!え!零の??!』


優姫は思わず両手で雑誌を持ち、マジマジと食い入る様に見る。


「初恋の人は大人っぽい、年上の人だった」

そう好きなタイプを言っていた零の声が甦る。

ぴらりと中身を確認すると中から見えた女性の豊満な裸体の写真に優姫は目を白黒させて、奇声を上げた。
思わず雑誌を力一杯投げ捨てる。
壁にバシンと当たり、そのままくたりと床に落ちた。


スタイルが良くて年上で大人っぽくて・・・


優姫の頭の中でぐるぐる廻る言葉と女性の裸体。
そこに零が絡まり・・・


『ギャァアー!!!』


頭を抱えて叫び声を上げると、優姫は思わず走り出していた。













一心不乱に走り、いつの間にか来ていた場所は男子寮の零の部屋の前。
ノックもせずに開け放つのは、最早日常茶飯事の事だった。


『ぜっ、零のスケベーッ!!!』


バターン!と言う豪快な音と共に、聞き捨てならない言葉を吐いて現れた優姫の
あまりに唐突な訪問に、ベッドでぐったりしていた零はビクリと身体を震わせた。
怠そうに顔だけ優姫へと向けた零は、溜息を吐いて眉根を寄せた。


『優姫・・お前なぁ・・・』

『零のバカバカ!スケベ!バカ!』

『いきなり来て何なんだ。つかスケベって何だ。』


ピキリと空気を震わせて零は上半身を起こした。
優姫はズンズンと零が居るベッドへと近づく。


『いーっつも小難しい顔してあんな、あんな・・・
て言うか全然大人っぽくないし!年だって私と変わらない位の子だし!』

『は?』

『破廉恥なんだからぁ〜ッ!!』


優姫はそう言うと零に掴み掛かる様にベッドに飛び乗り、胸をバシバシと叩いた。


『破廉恥、てお前何言って・・おい、近寄るな・・・』

『確かに む、胸は大っきくて、スタイルだって良かったけどッ
どぉおせ私は胸ちっさいしっ、ちびだしっ・・』

『お前何言ってんだ?て言うか泣いてんのか?』

『泣いてなんかないもん!
零があんないかがわしい・・破廉恥な雑誌見てるからっ!
零が悪いんだからっ!』


バシバシと叩きながら顔を上げる優姫の瞳には涙が覆われ、真っ赤に染まっていた。
ううう。と呻きながら目を擦る。

破廉恥だとかいかがわしいだとか普段聞き慣れない言葉を浴びた零は
優姫の口から出た最後の"雑誌"と言う言葉で何と無く思い浮かぶ物にぶちあたる。

止まずに振り下ろされる優姫の手首を掴むと、零は真っ直ぐに視線を優姫に合わせた。


『すっかり抜け落ちているみたいだが、夏休み前に大々的な持ち物検査で、お前も没収してただろうが。』

『うぇ?』

『雑誌。それの事だろ?』


優姫は記憶を夏休み前の大仕事に戻した。
抜き打ちで寮掃除と称して行った持ち物検査。
何故か要らない物を押し付けられたりして膨大な量の不要物が出たのだ。


『男子寮は色々出てきた。お前が知らない物もな。
俺の所持品じゃない。』

『ぜ、ろのじゃ、ない?』


優姫は後から浮かんできた羞恥心に、あわわと唇を震わせながら
顔をかぁっと灯らせた。
零は掴んだ優姫の手首を引くと、軽く頭を寄せて優姫の額に自分の額をコツンと重ね合わせた。
優姫は交わる零の視線に思わず目をキュッと閉じる。


『ひょわぁあ〜。ご、ゴメンね!疑って・・あのっ、ち、近いよ零っ』

『ふぅん。
お前、ヤキモチ妬いたのか』

『ひょっ?!』


優姫はピクリと反応すると目を開けた。
間近で見る零の瞳は相変わらず綺麗で。
ニヤリと笑う意地悪な表情にも眩暈が起きる。


『何だか、お前といると、クラクラする』

『ぜ、零?目が、据わってる、よ?』


どこかいつもと違う空気の零に、胸の鼓動が早鐘を打つ。
のぼせた様に体温が上昇し、優姫の思考を奪っていった。


夏はなにかが動く予感−−−−


確かにそんな事を思ったけれど。
いきなりの展開に、ドキドキし過ぎて胸が苦しい。


『近寄るなと言ったのに・・・』


零の指が優姫の髪をさらりと掬い、吐息が首筋に掛かる。
手首を掴む零の手は熱を帯びていて、二人の共有する部分は体温異常を起こしそうだ。



『一緒にいると・・・襲いたく なる だろ?』


耳元で囁く様に響く零の声は、振動を起こして優姫の全身に巡った。


『ぜ、零ぉ・・・』


優姫は堪らずに吐息の様に零の名を呼んだ。
ずしりと覆いかぶさる様に零の重みが優姫にのしかかり。
そのままドサリと二人の身体はベッドに沈んだ。


(ひゃあひゃあひゃあー!!!)


優姫は目を固く閉じ、零の動向を探る。
零の重みは増し、熱は上昇するばかりで。


『・・・・・?』


しかしその後、全く動かなくなった零に優姫はそろりと瞳を開ける。


『ぜろ?』

『あつ い・・』

『え?』


よくよく見ると零は苦しそうに眉を寄せ呼吸を乱している。
身体を触ると全身が熱を持っていた。
熱っぽさを感じたのは本当に熱を持っていたのかと優姫は慌てて身体を起こす。

確かに今日の零は少し怠そうにしていた。
夏の暑さが得意でない事も知っている。


『もしかして・・・暑さにのぼせたの?!』

『・・・世界が、廻る・・
カステラに、マラカス・・・』

『何か変な事言ってる〜!!
ちょ、しっかりして!零ぉお!!』


優姫の雄叫びは寮内に響き渡った。







零は
暑さに滅法弱い。



この時の出来事は体温異常を起こした零の記憶には一切残らず。
一人ドキドキした優姫は恨めしげな目線を零に向けるのだった。









20100813−−−−−−−》》
残暑見舞いすぺさる!!

仕上がるのやらあれな状態でしたが
何とか終わらせたゼ。

たまには他サイトさま巡りもするべしやな。
てな訳で。
やるつもりは毛頭なかったGDGD第8弾!
サイト記念9ヶ月!でございます!

あの ほら 一万堕も全く進んでないので
いくらかその辺りも織り込んでみたつもり。
(え。どこら辺が?)


だからぁ 乙梨基本恋愛鈍い子がすきなんだってぇえ!
頑張ったんだってぇえ!
(;Д;)ノシ

(memoあぷしていた残暑見舞いGDGDテキストでした)







  


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