話題:自作小説
僕以上にボケの麻里ちゃん。この麻里ちゃんは僕とは違い、作りでない天然のボケだ。ボケ要素ありありの、僕から言わせてもらえば天性のボケさ。
しかし。
『僕の名前は太郎じゃなくて次郎だよ』
そんな甘いツッコミを僕はしない。僕としては甘くてもされたいが、それを他人にはしない。だって僕も属性はボケなんだから。
「おいおい麻里ぃ。僕と君はもう付き合って二年も経つんだ。もう俺の事は太郎って呼べって言っただろ?」
麻里ちゃんの肩を抱き言ったセリフ。このセリフには三つのツッコミ所がある。一つ、まだ付き合って二週間。二つ、僕の名前は次郎。三つ、『麻里』なんて呼んだのは初めて。
一人称が『俺』の事は気にしないで欲しい。外キャラっていうのが誰でも持っているモノ。そうアムちゃんが言ってたし。
(さぁ、来い! 別に軽く「また冗談言って」ぐらいでもいい。いいんだ。僕は君に、君に分かって欲しいんだ。僕が努力をしてるという事を!)
肩を抱いた手が震え、麻里ちゃんの表情を見る余裕が無い。流れに任せて調子に乗ってしまったが、こんなモテモテな僕でも女性と触れ合うのは初めてなんだ。
「ま、まだ……たった二年じゃない……」
(あくまでも僕にツッコまれたいんだな! あくまでも僕に突っ込まれ……ごほん)
頬を赤く染める麻里ちゃんに対して、数個のセリフが光の早さで頭に浮かぶ。
『違うよ! 一年と半年だよ?』
(この上にボケを被せても何も進展しないの見え見えでしょうが!)
『そうだね、まだ二年だもんね』
(ダメだぁぁぁ! これじゃただのバカップルだぁぁぁ!)
『違うよ。僕達まだ付き合って二週間だよ』
(普通ぅぅぅ! ツッコミ普通過ぎて話の広がりが見えんっ)
『なんでやねん!』
(全てを誤魔化せる関西の一言……)
浮かびは消え、浮かびは消えで、もう僕の頭には残る一つの方法しか無かった。これを決行するのは僕としてはいかがなものかと思うのだけど、仕方がない。
「教室、行こうか」
スルー。ツッコミ側としては最悪だけど、ボケ側としてはどうなんだろう? 僕としては相手が麻里ちゃんの場合のみ有効だと思う。
「うんっ」
この屈託の無い笑顔が出来る麻里ちゃんに限り有効だと思う。