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黒い円

(黒い円)
ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ



時刻は昼下がり。窓際1番うしろの席は日当たりがいい。
五限目の授業中に、それは起こった。担任の抑揚のない教科書の朗読を耳に入れる事なく隣の席のやつが織り成す不協和音に気持ち良く寝てた頭を起こされた。

ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ


("五月蝿えなあ")



ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ


右側の女。渕無しの眼鏡をかけて下に結んだ二つの髪束が音に合わせて揺れる。くそ真面目が似合う女。
確か名前は、…


ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ






(…おい"ヤマダ"、うるせえんだけど)


「…!………、」


一瞬だけ跳ねた肩、びくびくと黒目が動く、そしてまたガリガリガリガリと右手がせわしなく動き出すヤマダ。さっきからの不協和音はアレだったのか。机に向かって一心不乱に何かを書いているヤマダ。
棒読み朗読が終わろうとするころ、動いていた手は止まり、平然とした顔でノートに板書を写し始めた。




("迷惑な奴………")




放課後、誰もいない教室に俺は居た。友達には委員会の用事だと言って先に帰っててもらった。俺の興味の全ては今ヤマダの机に注がれていた。


("ブス")
("キモいんだけど")
("ガリ勉眼鏡猿")
("タヒタヒタヒタヒタヒ")

机は沢山文字が彫られていた、
いじめを受けていたであろうヤマダの机は傷だらけ。彼女もそれ相応の傷を受けたことだろう。

机に上がっていたクラスメートの落書きだらけのノートをどかす、ノートの下には握り拳程に大きくて黒い円が書いてあるのが見えた。

「…なんだこれ?」

指でなぞると亜鉛がびっしりと人差し指にこびりつく。心なしか筆圧に負け机が凹んでいるようだ。
俺はその円をもう一回汚れた指でなぞった。


「…ぁ、」

何が起こったのかわからない
ただ、体が人差し指を筆頭に穴に吸い込まれていく。直径に合わせて肉が裂けたりよれたり骨が砕けてグキグキニチャニチャと生ぬるい音が教室にこびりつくように響いたかと思えば、俺の存在はヤマダが書いた円の中に木っ端みじんになって消えてしまった。
















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