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現実逃避
(現実逃避)
「…あーあ、金降ってこねーかなあ」
帰り道、吉田が欠伸をしながら呟いて俺にそんなことを言ってきた。
中学三年の二学期、もうすぐ高校受験を控えた俺達なりの現実逃避ってやつだ。レベルの低さに爆笑しながら伸びをする吉田に聞いた
「…金が沢山降ってきたら、吉田は何に使う?」
「…勿論ゲームだろ!お前は?」
「…俺もゲームかなあ、CDも欲しいし、彼女とデートもなあ……」
「…彼女とデートか、いいねえー!一足先に春か!」
「からかうなよ吉田!
…………なあ、なんか聞こえね?」
「…は?
……………ホントだ…キラキラって聞こえる」
頭上でキラキラ、いやゴオオが正しかったのかもしれない。
俺達の遥か頭上から落下してきた輝く大群の500円硬貨に俺達は驚いた。
夢じゃ…ねえよなあ!すげえ!
まるで流れ星のように光を反射させてきらきら光る硬貨に俺達は夢中になって手を伸ばす
これで欲しかったゲームもCDもブランドのバッグだって買えるぞ!
しかし500円硬貨は俺達の現実逃避に使われる事なく、物凄い勢いで俺達の頭蓋骨を貫通した。
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