「すき。すきよ。あなたがすきなの。」
器用に絡まる指に逃げられず御手合せ。
瞳を潤ませ頬を桃色に染めた少女がわたしに迫る。
突然の奇行に焦ることしか出来ない能無しなわたし。
状況はこうだ。
つまり目の前の美少女に愛の告白をされたのだ。
放課後、教室、セーラー服。
ほら、この三つの単語だけでなんだか秘密の恋の予感がするでしょう。
あぅー がぶ。
彼女はいきなり僕の鎖骨の少し上の肩に噛り付いた。
なにしてんの
「「カニバリズムー」」
ふうん。
また変な真似を。
タバコ取ろうと手を伸ばした瞬間、首筋に痛みが走った。
いてぇよ。
甘噛みならまだしも本気かよ。
あーあ、歯形ついてるし。
不機嫌な態度をとると、彼女はしゅんとした表情になり、僕の肌に出来た赤く窪んだ部分を舐めた。
次第にそれは激しさを増し僕を誘う。
動物みたいだ。
野性的とは少し違う。
本能的な彼女。
そんな君が
僕は羨ましかった。
自然体で、純粋すぎる君が憎らしくて愛しくて、
僕は君になりたくて、
君を手に入れた。
君とひとつになった。
君に最も近い存在になれた
筈だった。
彼女の華奢な身体や柔らかい髪をどんなに彼女を触ろうと、感じようとしてもまるで水を掴むような感覚になり、
途方も無いような錯覚に惑わされ続け気が遠くなる。
すきだ。あいしている。
歯の浮くような台詞を言っても何も満たされはしなかった。
「「うそつき」」
彼女は僕の気持ちを見抜いて笑った。とてもかわいかった。
甘い香りとその中に香る野性的な匂いが鼻をくすぐる。
その後すぐに胸が苦しくなったんだ。