「Hey,誰だか居やがるならとっとと出てきやがれ!」
気が付いたのは数分前。
徐々に霧が晴れるかのように我に返った俺はいつの間にか親父が逝った所にいた。
血が流れたことが嘘のように跡形もなく、ただ夕日にきらめく美しい川が目前にあった。
「訳わかんねぇ…なんで阿武隈川に…。」
周囲を見回すも、馬で来た様子はない。
となると徒歩かと思ったが一刻かけて歩く間ずっと意識がなかったってことになる。
さっと刀の柄に手を掛けた。
馬でも徒歩でもなく、意識のない間にこんなところにいた。
残す理由は、第三者に連れて来られたか。
秋の夕暮れ。
辺りは静寂に包まれて、川が煌めき、岸部で赤い彼岸花が揺らめく。
何の反応もないことに軽く警戒を解いたのも一瞬のこと、即座に緊張が走った。
「っ、てめぇ…っ!!」
「ふふ、会えて嬉しいぞ?伊達政宗。」
一瞬の隙に背後から首筋に刃物が突き付けられた。
鈴を鳴らすような声は女のそれで。
甘い匂いが絡むように漂っていた。
姿を見ることは叶わないが気配の消し方から忍だろうと察した。
「…どこの者だ。」
「どこ、とは住み処を問うておるのか?愚問じゃのぅ。妾は国中どこにでも居るが?」
「はっ、根なし草ってか?俺はてっきりどこぞの大名が刺客寄越してきやがったんだと思ったぜ。」
「笑止。妾は妾のためにしか動かぬ。」
一寸先は闇。
一突きでもされれば俺は冥土に向かうだろう。
だが、この隙のない束縛から逃れる術を俺は持っていない。
「All right(そうか),なら俺の首を取るか?」
「無論。そなたをつけ狙う輩ならばな。」
「…我ながら早い潮時だぜ。」
親父が死に、翌日俺まで死ぬ。
しかも知らぬ間に連れ去られ、殺られたなんざ伊達家の名折れだ。
何とか拘束を解く方法はないか思考を巡らせていると、女の愉快そうに笑う声が聞こえた。
「何を寝惚けたことを言うておる伊達政宗。何時妾がそなたを殺すと言うた。」
「……Ah?」
俺が言葉を理解しかねていると女は俺からするりと身を離した。
振り向くと、そこには上等な朱色の着物を纏った緋色の髪の女がいた。
歳の頃は二十あたりで、女は紅の引かれた口元を上げ、朱を乗せた目尻を細めてふわりと笑って言った。
「妾と約を交わさぬか?伊達政宗。」
★…………〃
はい、ここで終わり。
なんかオチもなけりゃあ目的もなく、だらだら書くにも書けなかった。
コンセプトって必要やね…++
あの時から時間の流れが狂っている。
親父が死んでから一日。
「Hey,Dad?」
一通り葬儀を終え、輿に乗せられた親父は幕に隠され姿は見えない。
返事など来ないとわかっているのに呼び掛ける自分がおかしくて、俺は嘲笑った。
「今日が最期の夜だな。はっ…皮肉なもんだぜ。アンタと初めて枕並べて寝る日がこんな日だなんてよ…。」
神無月の夜は少し肌寒くて。
物言わぬ親父と自分だけでは、この部屋は広すぎる。
「……必ず、畠山はこの俺が潰してやる。アンタは望んじゃいねぇかもしれねぇが、このままじゃ収まりがつかねぇ。」
恩を仇で返すように、俺の居ぬ間に父を拉致した畠山義継。
銃で撃ち殺されたのは当然の報いだ。
そして、あの場で亡骸を斬り刻んだのも間違いだとは思わない。
親父は義継の隣で絶命していた。
ところどころ空いた風穴から赤い血が流れていて。
足元が崩れていくような感覚に囚われた。
だがそれも一瞬のことで。次の瞬間には怒りと憎しみが俺を突き動かし、刀を手にしていた。
親父の致命傷は銃弾ではなかった。
一斉射撃の手前で、義継は親父の心の臓を脇差で貫いていたのだ。
伊達家の名誉を守った父は身内に引導を渡されることなく逝った。
「あと六日だ。六日後には畠山を攻めて、アンタを常世へ向かわせた罪、償わせてやる。」
死んでもなお俺の強行案に異を唱えてきそうな親父に有無を言わせぬよう、俺は輿を睨み付けた。
そこで、妾は見ておった。
“ワシに構わず義継を撃てッ!!伊達の名に恥を残してはならんぞ!!…撃てぇええ!!!!”
男が声を張り上げた直後、一斉に炸裂音がそこらじゅうで鳴り響いた。
曇りなき青の空の下で。
妾は人がいくつも折り重なって逝ぬ姿を見た。
その向こうで。
集団の先頭に立っている男が大音声を上げた。
“すぐにだ…すぐに親父を助け出せッ!!!!”
号令に従い家臣共は蜘蛛の子が散るかのように男の側から離れた。
妾は顔が見たかった。
今男はどのような顔をしているのか。
“…大丈夫だ。お前も行け、小十郎。”
“…はっ。”
家臣が去り、一人きりになった男は無表情だった。
ただじっと男の父親が立っていた場所を見ておって。
何も映さぬその一つの瞳に、妾は魅入ってしもうた。
真夜中を過ぎた頃。
誰もいないはずの部屋に人影が動いた。
机の前でぴたりと止まり、自らが灯した蝋燭の火で姿を現した男は、口の端を持ち上げる。
鋭く微笑んだ男の手に握られたボールペンがかすかに軋んだ。
小さな怪音に少女は足を止めると、眠い目をこすりながら廊下の突き当たりに目を止めた。
灯りが漏れている。
先に寝た部屋の主に代わって自分が消灯したはずなのに。
それにこの音…。
少女は眉を寄せ、抜き足指し足と音をたてないように怪音の方へと近づいた。
「その十五…私はアタリ星の元に生まれた星王子。ドンピシャの旗を背に…未来に叫ぶゥゥゥウ!!!」
雄叫びと共に男は目をカッと開き、血走った瞳が小さな白いキャンパスを捉える。
何かがポキリと鳴った音を皮切りに、音を立ててボールペンを走らせた。
★………!
何考えてた当時のあたし(笑)
これ銀魂の銀さんが懸賞ハガキに念を込めて書き上げてる様子です。
キャラ名の欠片も出てねぇ(笑)
月の満つ宵の頃、静かな水辺に蛍が浮かび踊るように飛び回っていた。
淡い月光と共に蛍は鉄格子の合間から舞い込むと、女の髪をかすめて光の線を描き飛んで行く。
手を組み、膝まづいたままの女は瞼を閉じ、ただ一心に祈りを捧げていた。
頬に一筋の髪が流れる。
月の光に晒された髪は乱れ、唇は乾き、唯一身に纏う薄い着物ももはやくたびれている。
「…よ…、主、よ…」
女の唇がかすかに動いた。
消えそうな声が途切れ途切れに、小さな吐息と共に吐き出される。
女の長い睫毛が震え、恐る恐る瞼が押し上げられる。
固く組んだ指をほどき、手の中の十字架…
★………!
えー…めちゃ冒頭で書き損じた?いや、打ち切った代物。
政宗の乳母、喜多さんの話だったんだけども回りくどかったから(--;)
でもとりあえずUP。