数分間のふしぎ


だらりと沈み込んだベッドの中から、部屋の一点を何気なくみていた。


突然
世界が、使い古されたフィルムのようにざらざらとしたドス暗いモノクロームにぱちりとかわる。


ミシミシと床を踏み鳴らし、何かがゆっくり部屋を動き回っている気配がする。

わたしも動かなきゃいけない気がしたのに、イモムシみたいに体をよじって頭をぐらぐらさせることしかできなかった。

わたしはゆっくり口を開けた。
大きく大きく大きく

ミシミシと動き回るアレをどうにかしたかったのか、もう何がなんなのか全てがさっぱりわからない。
けれどわたしは大きく口を開けた。


ガチャガチャと玄関のドアノブが鳴ってドアのバタンと閉まる音がする。

きみが帰ってきたのだと思って、瞬間的に、大口開けてイモムシ状態のこの状況を見られたくないなってのと、なんか部屋にいるんだけどどう説明しようとか、頭フル回転してぐちゃぐちゃになりそうだった。



その一拍後、唐突に世界がかえってきた。

どんよりと暗かったモノクロームはパッと明るく色を取り戻し、うねうねとしか動けなかった身体は通常運行をし始める。


夢でもみてたのか
それにしては吐き気がするほど音も感覚もリアルで、わたしはしばらく一点から目をそらせずに瞬きを繰り返す。

きみは帰ってきていなかった。
窓を開けて車と他人達の生活の音に安心してから、台所に立って煙草に火をつける。


つかれていた。のかな。久々の金縛りだった。
そこまで頑張っているわけでもないのに、なににつかれてんだかさっぱり分からないけれど

そう思った瞬間に、目の前の玄関のドアから控えめなノック音。覗き穴をのぞく。誰も、なにもない。

遊ばれているようで少し苛つく。




煙草のケムリをそっと吐き出して、薄いコーヒーを淹れた。


日本のホラーは怖すぎるとおもうんだよね。

事実は小説よりも奇なりってか?ほんと、夢だろうが現実だろうが何でもかんでも奇天烈だよ。

よく分からないまま過ぎることばっかりだ。





数分間のふしぎ
2016/04/09 17:32

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