昼休み海老原に声をかけられたので、放課後どこか遊びに行くつもりだったけど、結局そのまま帰ってきた。
他のクラスの奴らが海老原を変なふうに言ってるのを、本人が聞いてしまって、テンション下がったみたいだ。
男漁りとかパパとかどこから出てくるのか。アホらしい。
一緒にいた一条は、アホたちを「悪い奴らじゃないから」とフォローしていて、さすがコーちゃんは気配り屋さんだなと思った。
俺はもう少し早く止めればよかった。何もできなかったのに海老原には礼を言われてしまった。
素直に礼を言ってくる海老原に若干驚いた。可愛いじゃないか…。
帰ってきたら、テストでトップだったからと叔父さんが30000円くれた。30000円て。二度見してしまった。桁が違くないか。大丈夫か。
いいのだろうかと思いつつ、何かと入り用なのと、気を遣われてる感じがしたので、うっかり受け取ってしまった。大人になったら恩返しせねば…。
叔父さんは急に思い立ったらしくジュネスにも連れていってくれた。完二の一件が落ち着いたから余裕ができたのか?菜々子が大喜びだった。よかった。
何か買ってくれるっていうのでどくだみ茶を買ってもらった。急かされてたので適当に手に取ってしまったが他になかったのか俺は。飲むけど。
それにしても聞き込みで俺の成績知ったってどういうネットワークだ。
田舎凄い。
放課後することもないので商店街をぶらついて、暇そうなガソスタのバイトの人と立ち話。
この町は過疎が進んで静かだったのに、最近は事件のせいでみんなが怖がりながらもどこか浮かれてるように見えると言う。
見えるかな…見えるかも。
被害者について好き勝手に言う人とか。自分が巻き込まれているわけではないのに当事者みたいに話す人とか。いるよな。そういう人ばっかりじゃないし、そういう人も喜んでるわけではないとは思うけど。
事件のことを話す俺たちもそういうふうに見えるのだろうか。
マーガレットさんから「もっと心を見せて欲しい」と言われたが、筋肉は見せなくてもいいのか?
自慢げに見せるほどはないので鍛えておくべきか…。
いや見せてどうするってもんでもないけど。
あって困るものでもないし。
叔父さんに、ジュネスで溜まってることや家電売り場に入り浸ってることを怪しまれてしまった。
人目がなくなる隙を窺ってずっとうろうろしてないといけないから、まあ傍から見れば怪しいだろうな。
間違っても入るところを見られないようにしなくては。
という話をされて焦っていたら、菜々子が…。
俺ばっかりずるいか…。
菜々子はお父さん大好きだもんな。
あんなに好かれているのに、叔父さんはどうして自分じゃ菜々子の家族として勤まらないなんて言うんだ。
思わず「意味がわからない」と口から出てしまった。本当に意味わからん。
菜々子の父親は叔父さんにしかなれないんだから、わからないことを言わないで、頑張ってもらわないと。
とはさすがに面と向かっては言えないが。
何を考え込んでいるのだろうか叔父さんは。
菜々子がいる時は、あんまり叔父さんと二人だけで話さないよう気をつけないといけないな…。