話題:『告白』

命、とは尊いものか?
というキャッチフレーズだが、そんなものは誰でも知っている。
尊くはない。
映画の内容はとにかく、スッキリしたものだ。
事故死として扱われた娘は、実は殺されたのだと気付く教師。調査していくと、犯人はあっさりと見つかった。だが、教師は犯人を警察に突き出すことも、事故死を覆そうとはしない。
少年法に守られている彼らは、罪には問われず、二十歳になるまで法の元で大切に保護されていくからだ。
「私の娘を殺した犯人は、このクラスにいます」
そう宣言しながら、教師は殺人者の名前を告げなかった。これは、特に効果的だ。人は謎がないことには興味を引かれない。多少の確信、事実。それによって生まれる人物像は実在よりも残酷なモンスターを生み出す。
もちろん、モンスターなのだから退治することは正義であり 、そこに罪悪感はない。
大人、国、法。決して逆らえない存在でさえも処罰できないモンスターを自分達は処罰することが出来る。
少年A.Bを制裁するシーンは恍惚感に酔っているかのような雰囲気さえも感じられた。
命、の尊さを学べ。とは良く言われるものだ。実際に学校でも取り組むのだろう。それに関しての生徒達の反応は一片通りのもの。
本当の声、思いではない。
彼らにとって、尊い命とは自分でしか有り得ない。後は雑草のようなもの。面白ければ良し。邪魔だったら悪だ。
何も、それが悪いとは思わない。
命は尊くはないのだからな。
尊い。そう思えるのは生き方だ。それも限られた、自分の愛せる範囲の生き方。

この映画を見ていて思うのは、大人の強烈な子供への悪意。
まぁ、それは仕方ないだろう。子供が大人に悪意を持っているのに、大人だけは許し愛するのが当然などという幻想はとうに崩れている。
ただ、子供のようにそれを口には出さない分別を持っているだけだ。
この映画でも描かれていたが、母が愛情を注ぐのは自分の子供だけだ。

こういう綺麗事を言わない映画は気持ちよい。
実に面白かったし、爽快だった。