城門を見たとき、2人は驚きました。
錆び付いて、片方が砂をかぶりながら倒れているのです。
「誰もいなさそうだな」
「うーん、じゃあ使えそうなものだけ拾っていこうか」
門から真っ直ぐ伸びた“道”を辿って進みました。
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「うわー。しげこさんこゆーのやだわー」
「かわいい方だよコレ」
道を辿りながら走っていると、ぽつぽつと餓死体が倒れていました。
老若男女さまざまで、目のやり場に困ってしまいます。
因みに、罪歌の云うかわいいにはちゃんと理由がありました。珍しく。
「かわいいしか形容詞を知らんのかお前は」
「いやいやホントホント。骨格がいいし、変な感染症にかかったあとがないから、多分、段々食べる量が減ってきて、栄養失調で餓死したんだよ」
「はぁ、これだから中二病は…。無駄な知識ばっかり……」
「腐れメガネ」
「メガネ腐ってもゴーグルに度ォ入ってますからー」
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全ての建物を回ったわけではないが、どの建物の中も、金目のものや生活家具が一切ありませんでした。
「くそーッ!腹へった!」「食べ物は、無いと思うし」
科学技術が発展してなかったのか、電子器具がありません。
子子や罪歌はそんな国をいくつも見てきたので、そこまで珍しいことではありませんでした。
「おっ」
「なにーなんかあったー?」
屋上を探索していた子子から声が聞こえました。
じゃりじゃりと砂が舞う階段を上り、屋上を覗くと、子子が仁王立ちしていました。
「あれ、さー」
「建築物?」
特別、一件だけ日差しが反射する建築物が見えます。
反射する、ということは土で出来ている他の建物とは物質が違うということです。
「行ってみる?」
「そーだな」
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「うげ」
「あうち」
かっ飛ばして漸く到着。
メタリックのような素材の建築物には死体が一人。
壁には引っ掻き傷が、周りには一人の死体が、無い目で空を見ています。
「じゃー、しげちゃんお願いー」
「え、やだムリ」
子子には特殊能力があります。
接触感応能力者(サイコメトリー)で、触ったモノからそれが感じていた事情を読みとることが出来ます。
しかし、
「オレっち、こーゆーグロいの嫌なんだよねー」
「…えい」
「!」
ガッ!
罪歌が愛の足蹴りを子子に。
罪歌は念動能力者(サイコキネシス)で、精神の力でものを動かすことが出来ます。
その応用で、人を操り人形感覚で動かすことも出来ちゃうのです。
「くそー!横暴だ!人の体を勝手に使うなー!」
「ほらほら早く」
ぺた。
触ってしましました。
「うおおおおっ、すげェェェ!」
莫大な事情にのみ込まれないように注意を払います。
ここで、疑問。
「は?窒息死?」
脳に酸素が回ってないこと、それが死因。
「はー。ふーん。へぇー」
「ちょっと子子さん、気持ち悪い」
「―――うむっ」
♪
彼らの国は、夜がこない地帯だった。
夕方、地平線に太陽が滑り、そのまま転がって朝がくる。
ある日、滞在に来た旅人から買った夜空の絵本。
それから彼らは夜に焦がれてく。
彼らはまず、暗闇を作ることから始めた。
それも、国全体を包む大きなもの。
豊かな国は“夜”を作ることに資材を使う。
食物を作ることより、科学技術の方へ。
その為、食べ物の数は減り、彼らはやせ細ってゆく。
そのことに気づかない位、彼らは“夜”に盲目だった。
そして、ついに国全体を覆う密閉のドーム屋根が出来上がる。
暗闇を作るために、粘着物で城壁の隙間もふさいだ。
これで暗闇の完成。
そして、星のかわりにドームにつけた可燃物に着火。
これで星の完成。
これで、“夜”の完成。
♪
「そしたら密封状態での酸素の消費で窒息死じゃん。練炭自殺的な」
「や、オレに言われましても」
「マヌケ間抜け。で、この建築物は?」
「主に研究してたところ?みたいな?」
「んー」
手をかざして、建築物の中心に力を集めて、破裂させます。
バヂンッッ!がんっ、ガガカカガガガガッ―――!
崩れていく建築物と、埋もれていく一人の死体。
そして、二人は国から出て行きました。
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「あの引っ掻いてた奴さぁ」
エンジン全開で砂場を走るバギーの操作をしながら、子子は思い出したかのように語ります。
「こうなるってわかってて、止めれなかったんだって」
「3へぇ」
砂埃が舞う。
届かない意志を抱きながら彼は彼らの目を覚ますことが出来なかったです。それでも、彼らが作った“夜”は彼らの期待の分だけ、とても残酷に煌めいていたのでした。焦がれた浄土に身を取られ、水の中で窒息する魚のように。(地上で窒息する人間と、)
♪
疲れたです。
でも個人的には好きなオチです。
な、長くてさーせん(^ω^)