たんたんたん、


雨が窓硝子を叩く音だけが僕の耳に届く。

時たま聞こえる車のタイヤが雨水を跳ねる音も、なんだか不思議な気分にさせる。

昼間には、あの跳ねる雨水に苛々することすらあるのに。


雨の日は不思議だ。
特に雨の日の夜は格別に。



ゆっくりと目を閉じると、トタン板に跳ねる音、屋根からこぼれる滴が落ちる音、



色んな音が聞こえる。



水の音は人の心を癒す効果があると言うけれど、それは本当にそうだと実感する。


雨は人々を憂鬱にさせるけれど、それと同時に、人々をしっとりと落ち着いた気分にさせてくれる。


僕にとっての雨空は、余りに重苦しくて、何かの重圧に押し潰されそうになる位の存在だったのに。


いつからだったんだろうか、傘をさして歩く事が心無しか楽しく感じる様になったのは。


傘を忘れた彼に差し出した自分の傘に、二人並んで入ったあの日からだろうか。



折り畳み傘は、やはり利便性を追求した小振りな造りをしていて。

体格だけは大人な僕ら二人を囲うには余りに小さくて。はみ出した肩に雨粒を感じながら、小走りで駆抜けたあの道を、


僕はまた明日学校へと辿るのだろう。





僕はベッドに横たわりながら窓の外を見て、そんな事を考える。



また明日、彼に逢えたらいいな。



きっと絶対逢えるに決まっているのに、何故か可能性の低い願望みたいなそんな切ない気持ちになる。


明日彼に逢ったら何を話そうか、
明日もオセロでいいだろうか、
明日も、
明日も、一緒に帰れるかな。


ほんの少しの事でも良い。

彼に逢って、たわいもない話をして、


そんな当たり前の日常がどうか壊れませんように、
いつまでその当たり前の日常である幸せを噛み締めていられますように、




僕はそんな祈りを込めて眠りにつく。