追記より、企画4作目です。タイトルはエナメル様よりお借りしました。
のぼり様よりリクエストいただきました、[サビ善・浴衣]から制作しました。
リクエストありがとうございました!
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藤善透現在地、猫柳の村。
状況、渋谷サビ丸の太ももに頭を置いて寝転がっている。いわゆる膝枕である。
(どうしてこうなった…)
なんのことはない。夏季休暇になった途端に例のごとくお庭番に拉致、もとい保護・隔離されただけだ。隠れ里である猫柳の村には刺客の脅威も見えない。また、万が一刺客がやってきたとしても、凄腕のお庭番の拠点であるこの村ならば安心だ。
しかし善透の目が死んでいる原因は現在地よりさらに、現在の状況にある。渋谷サビ丸。善透のお庭番であり、「すっごいカワイイ(はあと)」「モデルみたい!!」と異性からの評判も上々。現在は善透と色違いのしじら織の浴衣を着ているが、普段は真冬でも頑なに半袖のYシャツで過ごしているちょっとふしぎな現役男子高校生である。
男子。
男。
水着その他を見る限り、実は男装の麗人という線もない。太ももはがっちりと固く、女の子のような甘い匂いもない。善透と同じく、男である。
同性の膝枕。夢も希望もロマンもない。
しかし、そう思うのは善透だけらしい。
「お目覚めですか、善透様」
うふふだかえへへだか、とりあえずやたら嬉しそうに笑っているサビ丸は、どうもこの状況を喜んでいるようだ。正座しながら団扇で善透を扇いでいる。浴衣とはいえ暑いので、ゆるやかに送られる風は確かに気持ちが良い。しかし膝枕をする必要はなかろう。
そもそも善透が昼寝を始めた時、サビ丸の姿はなかった。村長に呼ばれたかなにかでサビ丸が部屋を出た後、電波の入らない僻地ではやることもなかったため、畳に寝転がって寝てしまったのだ。不用心とは思うが、少なくともこの村にいる間は生命の危機に見まわれることはないだろう。そう思う程度には、猫柳の村を、サビ丸を信頼していた。
その結果が現在である。
過程がどうあれ、膝枕をされていも気づかないほど熟睡するとは。
溜息をつきながら、寝乱れた浴衣の裾を適当に直す。
「善透様せくしーですね」
「うるさい」
色違いの浴衣。紺と碧。それぞれの瞳の色に似た浴衣を、互い違いに着ている。
頭を太ももに預けたまま、瞼を閉じた。
やわらかな笑い声と、ゆるやかな風。
「おやすみなさいませ」
他の誰とも交わさない挨拶。眠りに落ちる無防備な姿を晒せる相手。
「おやすみ」
投げ出した手に感じる、他人の体温。
汗ばんだ手を振り払うことなく、善透は穏やかな眠りについた。
いとしさで世界が傾ぎそうなほど
誕生日 | 10月1日 |
血液型 | A型 |
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