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おんぶ


「おんぶしてぇー。おんぶしてぇー」


ぼくの目の前を歩く,三才くらいの子どもがおじいさんにおねだりしています。

おじいさんは大きなカバンを重たそうに持っています。おんぶしたくてもできません。おじいさんは困ったように
「もう少し,もう少し。もう少し歩いたらお母さんのところに着くから。がんばって歩こう。さぁ,しんちゃん」

しんちゃんと呼ばれた男の子は,ぼくの方をちらっと見てから,しぶしぶ歩きだしました。よく見ると,男の子の足首から血が流れています。

「だいじょうぶ。血が出てるよ。おじいさん。ぼくがおんぶしてあげようか」

「おや,ぼく。親切にありがとう。大丈夫。ちょっとバラのイバラにひっかけただけだから。さっ,しんちゃん。行こう。母さんが待ってるよ」

ぼくの言葉に,しんちゃんという男の子が,
「いたいよう。歩けないよう。おんぶぅー」

と言いだして,また,止まってしまいました。

おやおや。親切に言ったつもりなのに,おじいさんをさらに困らせてしまいました。
おじいさんも,困ってしまって,
「ぼく,悪いけど,この荷物を持ってこの先のお店までついてきてくれないかい」
そう言うと、茶色の大きいカバンをぼくに差し出した。



「はい。持ちます」
ずしんと重いカバンを受け取ると,喜んでおじいさんの背中におんぶしてもらった男の子に向かって,

「ぼく。よかったね」

「しんちゃん。おにいちゃんにお礼を言いな」

「ありがと」
小さな声がきこえました。

「これ。しんちゃん。大きい声で ちゃんとお礼を言いなさい」
「あっ。いいです」

とっさに ぼくは言いました。

これを,空の上から見ていた者がいました。

テドゥウです。

テドゥウは,親切にしたつもりの男の子の頭の中に呼びかけました。

『おじいさんは,本当に助かったのかな
 男の子は,がまんできなかったのかな
 本当の親切は,どうすることなのかな』
と。

テドゥウとは,リスのような姿をしてますが,姿を消して空を飛ぶことができる不思議な生き物です。子どもが困ったり悩んだりするとすぐそばに来てくれます。

重い荷物を持ちながら,
ぼくは、

『おじいさん。カバンより重い男の子をおぶってる。
 しんちゃんという男の子は,このことで,あまえんぼうにならないだろうか。
 しんちゃんに「がんばれ」と言えばよかったのかなぁ』

と,つぎつぎと,今回の自分の親切にしたつもりの行動を思い返していました。

「ぼく。ありがとう。ここでいいよ。重っかったでしょう」
おじいさんから声をかけられてハッとしました。

「ぼく。ありがとう。しんちゃもお礼を言いなさい。もう,わがままでしょうがいの。ごめんなさいね」
お母さんらしき人からもお礼を言われました。

「いいえ。ぼくが,よけいなことをしたために,かえっておじいさんに迷惑をかけて・・・。すみませんでした」

そう言うと,ぼくは,走ってその場から離れました。

後ろから
「ありがとう」
とかわいい声がしていました。

おふろ

1.石ケン

「ぼく,おふろ入るのいやだぁー」
「さあ,おばあちゃんといっしょに入りましょ。今日は頭を洗わないからね」
「いやだ。いやだー」

おやおや,小学校低学年くらいの男の子がだだをこねています。

「しんちゃん。今日はいっぱい遊んでどろだらけでしょ。おばあちゃんが待ってるわよ。入りなさい」

お母さんからも言われましたが,しんちゃんは「いやだ。いやだ」と言って,とうとうお風呂に入らないで寝てしまいました。

これを見ていた者がいました。

テドゥウです。
テドゥウとは,リスに似た生き物で,子どもが困ったり悲しんだりすると頭にある角で感じ取り,近くに現れて何とか解決しようとする生き物です。
姿を消したり空を飛んだり,いろんなものに化けたりもします。

海に沈むきれいな夕陽を見ていると,
どこからか
「いやだ。いやだ」
と男の子の叫ぶ声が聞こえたので,
『なんだろう』と姿を消して様子をうかがいに来たのです。

男の子がおふろ嫌いなのを見たテドゥウは,こっそりと小さな石ケンの姿にかえてしんちゃんのふとんにもぐりこみました。


そして,
「おい。しんちゃん。起きろ」

としんちゃんの鼻をつまみました。
しんちゃんがびっくりして目を覚ますと,そこには手と足がはえた小さな石ケンが立っています。

「おい。しんちゃん。おまえは今日もおふろに入らないで寝たな。こらしめてやる」

小さな石ケンがしゃべりました。
よく見ると,石ケンに目や口がついています。

2.戦い

お化け。

と思ったのですが,
あまりに小さいので,しんちゃんは石ケンをやっつけてやろうと思いました。

「石ケンの化け物め。やっつけてやる」

と言って,石ケンをつかみました。

すると,指と指の間から

 するり 

と抜けてしんちゃんの頭の上に飛び乗りました。

「やぁい。しんちゃん。つかまえられるものならつかまえてみろ」

石ケンに化けたテドゥウが,しんちゃんの頭の上から言いました。

「くそ。えい」

しんちゃんは,もう一度つかまえましたが,また 

 つるり 

と逃げます。
ふとんの上をちょこちょこ走りまわる石ケンを,
今度は足で,エイッとふんづけました。

すると足の指の間から,

 するり 

と逃げます。
もう一度ふんづけると違う指の間から

 つるり 

と逃げます。
手や足の指の間,わきの下など

 するり  つるり

と逃げ回ります。
しんちゃんは疲れてきて座り込んでしまいました。

ハアハア息を切らしながら,石ケンが通った指の間が気持ちいいことに気づきました。

「どうだ。しんちゃん。石ケンが通ったところは気持ちいいだろ。おふろに入るともっと気持ちいいぞ」

しんちゃんは,石ケンが通らなかった指の間が気持ち悪くなってきました。


しんちゃんは急に部屋を飛び出しました。

そして,おばあさんに,



「おふろに入ろう。ね。おばあちゃん。いっしょに入って」

と言いました。

おばあさんは,さっき一人で入ったばかりでしたが,喜んでいっしょに入ってくれました。

おふろの中から,きゃっきゃ きゃっきゃ としんちゃんの楽しそうな声が聞こえてきます。


テドゥウは,その声を聞くと安心したように山へと帰って行きました。

テドゥウ始まる

みなさんはテドゥウという生きを知っていますか?

ふだんは目に見えないのです。


子どもが好きで,いつも子どもの近くにいます。

もし離れた所にいても,子どもがこまったり悲しんだり苦しんだりしていると,

その体や心の「痛み」に気づいてすぐそばに来てくれるのです。


また,よくないことを考えたりしたりすると,止めに来ます。

 そして,なんとかしてその子どもの「心の痛み」が和らいだりなくなったりするように,
また,「よくない心」が消えるたりなくなったりするように教えてくれる生き物なのです。

「テドゥウ」の姿や性格はどんなものかというと,少しリスに似ていて・・・

それは,物語の中で少しずつ紹介していきましょう。

 みなさんも,やさしいテドゥウに会えるといいですね。




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               てどぅう

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