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とりあえず記憶を記録しないと




そろそろ脳の老化が激しくて今日あった事を憶えていられないという………恐ろしい


なので、目指せ1日1回ぶろぐ更新!

2年ぶり?


に、ぶろぐってみた。


なんでって…………


なんか記憶力が薄れてきたから(笑)

空色パステル4

 
 
「ずっと好きだったの。」
 
「……は?」
 
 
屋上に呼び出され、告げられたのは生まれて初めての告白。
付き合って欲しいと言う彼女に、予想だにしなかった事態で唖然としてた僕は、相当間抜けに見えたと思う。
だって、本当に初めてだったんだ。
小学の頃から、拓夢は何度もその手の告白はうけてたけれど(それはそれで悔しい)僕には一回も無かったから。
 
 
見覚えの無い彼女は、隣のクラスだと言う。
小柄で、長い黒髪がとても印象的な子だった。
 
 
「………いいよ」
 
「本当!?」
 
口から出たのは了承の言葉。
それを聞いて、彼女は真っ赤だった顔を綻ばせて笑った。
 
 
可愛いとは思う。
けれど、顔もほとんど知らないような子と、いきなり付き合うってのはどうかと思った。
 
 
 
それでも僕は、誰かが隣に居ない事に限界を感じてたんだ。
怒りや憎しみで隠そうとしても、やっぱり拓夢の居ない1年とちょっとは淋しくて。
 
 
素直な好意を向けられたのは初めてだったから。
 
 
 
 
 
 
 
 
誰でもいいから、拓夢の代わりに傍に居て欲しかったんだ。


 
 
そして、彼女と付き合い始めた僕に、人生で一番最悪な日がやってくる。
 
 
否、一番最悪な日は拓夢が居なくなった日だから、二番目に最悪な日か。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
街も人も浮足立つクリスマス。
恋人同士にとってかなり重要なイベントであるその日、僕達も例に漏れる事なくクリスマスデートというものをしていた。
 
どっちかと言うと、僕はイベントが嫌いな方ではない。普段と違って、少し非日常的な部分が見え隠れするからだ。
ただし、それは拓夢と一緒の時だけ。
 
去年のクリスマスは、拓夢が居ない初めてのクリスマスだった。
テレビでクリスマスの特番なんかを放送してるのを、ただぼぅ、と見てた気がする。
一昨年は確か、僕が行きたいって言った絵画展に二人で…………
 
 
そんな事を考えて、少し虚しくなりながらも、彼女の計画したデートは順調に進んでいった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「珪都くん……私、今日泊まるって言ってきたんだ」
 
「………え?」
 
 
少し小洒落たレストランで夕食をとった後、彼女はそう言って僕の服の裾を握った。
 
 
その言葉が何の意味を持つのか。
それがわからない程僕は子供じゃないし、そういう事に興味があるのも事実。
 
 
 
 
 
 
 
そのまま、二人して無言でホテルに入った。





 
 
 
そして僕は、………否、僕も彼女も多大なショックを受ける事になる。
 
 
 
 
もう、おわかりだろうか。
 
そう。僕は有り得ない事態に見舞われたんだ。
 
あまり、そうゆう関連の資料(エロ本だとか、AVだとか)を見たことの無い僕でも、やはりそこは本能でわかるのか、彼女の服を脱がし、白い肌に手を滑らせた。
 
小振りだけど、カタチのいい胸に触れて、温かくて柔らかいと感じたのも本当だ。
 
 
 
なのに。
 
 
 
どんなに彼女に触っても、彼女の艶のある声を聞いても、紅潮した顔を見ても。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
僕の大事なところは、まったく反応しなかった。

空色パステル3

 
 
学校へは徒歩で20分程だ。いつもなら自転車で通学するのだけれど、今日は何故か歩きたかった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「珪都」
 
学校の廊下で名を呼ばれ、振り向いた先には悠哉(ユウヤ)が立っていた。
 
「……おはよ……悠哉?何……?」
 
軽く挨拶をしてその場を去ろうとする僕の腕を、悠哉は掴んだまま教室とは別方向に向かって歩く。
 
「ちょ、離してよ。」
 
「いいから来いって」
 
ズルズルとひきずられるように連れて来られた場所は、普段授業には使われない空教室だ。
 
……凄く嫌な予感がする…………。
 
 
 
「珪都……」
 
「……っん、ゃ………」
 
 
案の定、悠哉は戸を閉めるやいなや、僕の唇に自分の唇を押し付けてきた。
濡れた感触。
侵入してきた舌を、必死に押し戻そうとするけれど、悠哉の巧みな舌使いに逆に舌を絡みとられてしまった。
 
 
「………っ、」
 
 
濃厚なソレに、酸素が足りないせいか頭の芯がぼぅ、としてくる。
フラついた足元を支える為に悠哉にしがみついた手を、肯定のソレだと思ったのか、悠哉は口付けを止める事なく僕を抱き締めてきた。
 
 
……こんなところで、盛んなよっ
 
 
そうは思っても、抵抗は無意味と知ってるから、黙って悠哉の口付けに答えた。

 
 
「なぁ、ヤろう?」
 
「ばっ………!学校じゃ嫌だって言ってるだろ!?」
 
「そうだけど………」
 
 
解いた口付けの後、悠哉は僕の服の中へ手を差し入れてきた。
背筋に沿って指を這わせられ、ゾクリと肌が粟立ったけれど、密着する胸を叩いて身を離した。
 
 
「悠哉……俺、嫌だって言ってるだろ?」
 
「………っ」
 
ジロリと睨みつければ、さすがの悠哉もわかってくれたのか、おとなしく手を離してくれた。
 
「授業始まるから、行く」
 
「珪都っ!」
 
 
背中に向かって呼び留められる声が聞こえたけど、そんなものはお構い無しに空教室から出た。
 
 
 
 
「勘弁しろよ………」
 
人の気配が無い廊下に僕の呟きだけが響く。
もうとっくに授業は始まってる時間だ。
あんまり遅刻とかはしたくないのに、悠哉にも困ったものだ。
 
 
 
彼、悠哉と僕は多分、恋人同士の関係だ。
多分、と付くのは、あまり僕に気持ちが無いから。
それでも悠哉はいい奴だし(盛りがつかなければ)好きだと言ってきたから付き合った。
 
 
そう、僕は世間一般で言われるところの“ゲイ”だ。

 
 
僕がそっち側の人間だと気付いたのは、やはり拓夢が居なくなってからだ。
 
当たり前のように隣にいた存在をある日突然失って、はっきり言って僕は自暴自棄になってたと思う。
拓夢を中心に生活していたから、まず何をすれば良いのかわからなくなった。
 
普通に学校へは行ってたけれど、拓夢以外に親しい友達が居なかった僕は、拓夢が居なくなってからの中学生活を本当に一人で過ごしたんだ。
 
仕事人間の両親。
傍に居ない年の離れた兄。
 
家族はこんなもので、相談なんか出来るわけがない。
むしろ、したくもなかったけどね。
 
 
あんなに好きだった絵もまったく描かなくなった。
……絵を描けば想い出さずにはいられないから。
 
 
毎日、拓夢を思い出せば泣いて、考えないようにしようとがむしゃらに勉強だけはした。
 
 
お陰で、近所でも有名な進学校へ入学出来た。
本当は拓夢と二人で、美術に力を入れてる高校へ進学するつもりだったんだ。
だけど、拓夢が居なくなった今、一人で入る気にはなれなかった。
 
 
だって、僕達の絵は、どちらかが欠けたら完成しないものだから。
 
 
筆をとる事も無くなって、極真面目な高校生活を送る中、転機が訪れたのは高校1年の12月。



 
 
あれはクリスマスを間近に控えた放課後だった。

空色パステル2

 
 
 
ピピピ、ピピピ
 
 
 
けたたましく鳴る不快音に、まどろんでいた頭を無理矢理覚醒させられた。
一瞬何事かとも思ったが、条件反射で手を伸ばしてから、ソレが目覚ましの音だったと気付く。
見れば時計は6時半を指している。もうベッドから起きて支度しなければ完璧に遅刻する時間だ。
 
 
「なんか……夢見悪い………」
 
一人ごちてのっそりとベッドから這い出した僕、由良珪都(ユラ ケイト)は、寝癖を直すように髪を撫でた。
 
僕の髪は猫っ毛でクセが強いため、朝起きると大抵爆発したように跳ねまくっているのだ。
毎朝のセットにえらく時間の掛る自分の髪は、数多くある僕のコンプレックスのひとつでもある。
 
 
 
 
 
『珪の髪、柔らかくて好きだな』
 
 
 
 
 
 
 
「……今更……………」
 
 
ふいに脳裏に蘇った声色。
鮮明に思い出す事の出来るその声は、今最も思い出したくない人のものだ。
 
意識して記憶から削除していたのに、やはり先程見てしまった夢の影響なんだろうな、と、溜め息を吐きながら、汗に濡れたTシャツをベッドに脱ぎ捨てる。

 
 
そのまま軽くシャワーを浴び、誰も居ないリビングを通り玄関を抜けて外へ出た。
9月も終わろうというのに、今日はまだ残暑厳しく朝から日差しが強い。
 
額に手をかざして空を見上げれば、そこはいつもと変わらぬ青い空。
 
 
 
 
――――空は何一つ変わってないのに。
 
 
 
 
少しの風で心地好い葉音を奏でる並木道を歩きながら、珪都は今朝の夢を思い出していた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
* * *
 
 
 
 
あれは、中学最後の夏。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「え………?」
 
「だからな。浅賀は転校したんだ。昨日付けで」
 
「……嘘、でしょ?ねぇ……先生っ!?」


それは突然担任から告げられた残酷な現実。
 
 
(嘘だよ……だって昨日普通に……いつも通りに………)
 
 
学校はまだ朝のHRを終えたばかりなのに、僕は内履きのまま学校を飛び出していた。
 
 
 
拓が。
 
 
拓夢が転校って…………。
 
 
そんなの嘘に決まってる。
 
 
 
だってそうでしょう?
昨日だって絵の話してたじゃない。
今度の展示会、何を描こうかって。
じゃあな、っていつもと変わらずに手をあげて帰ったじゃない。

だから嘘だよ。
  
 
 
 
走って走って。
 
 
 
辿り着いた馴染みの家は、
 
 
 
 
「拓っ!拓夢っ!!!!」
 
 
 
 
 
 
 
 
変わらないのは外側のみで、家の中は蛻のからだった。


 
 
アイツ、浅賀拓夢(アサガ タクム)と僕は、15年来の幼馴染みだ。
それは生まれた時から一緒だったと言っても過言ではない。
 
 
たまたま近所に住んでいて、たまたま生まれた病院が一緒で、たまたま生まれた日が近かっただけで、僕と拓夢は当然の様にいつも一緒だった。
 
物心つく前からずっと傍にいて、下手な兄弟よりも共に月日を過ごしてきた。
 
 
 
 
そんな拓夢が、僕に黙って転校する筈がない。
 
 
そう思ったのに、実際はそうじゃなかった。
 
 
 
否、そう思ってたのは僕だけだったのだ。
 
 
 
 
目を背けたかったけど、理解しないわけにはいかない。
拓夢はもうイナイのだ。
少し残っている家具と、誰も居ない部屋。
そこにはまだ拓夢のほのかな香りが残っているのに。
 
「拓………っなんでだよ……なんで……!?」
 
 
 
涙が溢れた。
深い深い哀しみは、いつしか憎悪に変わる。
 
 
 
 
 
――なんで僕を捨てた……っ!?
――なんで僕を置いてった……!?
 
 
 
 
 
 
 
 
自分を捨てた拓夢を、憎みでもしなければ辛くて辛くて、息も出来なかった。
 
 
 
 
 
 
 
* * *
 
 
 
 
それから長いようで短い月日が流れ、僕はいつしか隣に誰も居ない事に慣れてしまった。
否、慣れるしかなかった。
僕は捨てられたんだ。
 
 
哀しみと憎しみに身を焦がして、気付けば高校も3年に進級していた。


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