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千早「新しいプロデューサー、ですか?」チャラ男P「うぃーっす!」

千早「…」
高木「彼はと私の友達の息子さんでね。出来れば、悪いようにはしないで欲しいんだ。」
伊織「社会人とは思えない格好ね。まずスーツくらい着なさいよ」
チャラ男P「いやもうこの服マジ決まってるっしょ!お気になんスよこれ。どうッスか?」
千早「私、レッスンにいきますので」
高木「ちょ、ちょっと待ってくれたまえ千早君」
千早「何でしょうか?」
高木「彼は見てくれがああでどこも雇おうとはしないが、優秀な人材であることは間違いないんだよ。多めに見てくれると助かるんだが…」
千早「…善処します。では」
春香「機嫌悪そうだね、千早ちゃん」
千早「やっと担当が来たと思えばあれだもの。指導がちゃんと出来るか不安になるわ」
美希「ミキはてきとーそうでちょっと安心したかも、あふぅ…」
春香「み、美希ちゃん…」
千早「とにかく実力を見てみないことには始まらないわ。レッスンにいきましょう」
春香「そ、そだね」

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チャラ男P「………。ふーん…あれが如月千早、と。」
高木「どうしたのかね?」
チャラ男P「いえいえ何でもないッスよー。んじゃレッスン見てきます」
高木「…?」

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千早「…ふぅ」
春香「お疲れ、千早ちゃん」
美希「うぇー…疲れたの…」
春香「ジュース飲む?お疲れ様」
美希「ありがとうなの、いただきまーす!」
チャラ男P「…これが俺の」
春香「あ、プロデューサーさん!きてくれたんですね」
チャラ男P「そりゃもう担当ッスからね〜。せっせとやらせていただきますよ」
千早「どうも」
チャラ男P「んで、早速なんすけど。ユニット決めたんスよぉ〜」
美希「本当なの!?」
春香「えっ!?」
千早「…」
チャラ男P「まぁ春香ちゃんがリーダーでぇ、美希ちゃん、千早ちゃんの三人ユニットッスね」
春香「そ、そんないきなり」
千早「いいですよ」
美希「私も異論ないの!キラキラできるかな〜」
春香「うーん…いいのかなぁ…」
チャラ男P「…」

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チャラ男P「んで〜こんな感じなんすけどぉ〜?どうっすか〜?」
AD「え、ええ。そうですね」
スタッフ「なんですかあれ…」
スタッフ2「さぁ…今時あんな古臭いチャラい格好…」
AD「それと、次回からちゃんとした服装で来ていただけると助かるのですが」
チャラ男P「えっ、今企画の話してたんスけど。話聞いてましたか?」
AD「あ、いえ。それはその」
チャラ男P「仕方ないッスねぇ〜じゃあもう一回言うッスよ」
高木「ふむ…」

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高木「新ユニット活動、ご苦労様。プロデューサー君」
チャラ男P「…そうでもないッスよ〜!これから楽しみッス」
高木「だが、君の活動の良さに反して中々。どうしてその服装にこだわるんだい?」
チャラ男P「ん〜、特に理由は無いッスよ。この服が好き、ってのは理由にならないッスかねぇ?」
高木「そこまで好きなら止めはしないが、業務に影響するようになれば。…分かるね?」
チャラ男P「うぃーっす!了解しました」
高木「分かればよろしい、ではな」
チャラ男P「…」

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真美「ねーねーにーちゃん遊ぼー!」
亜美「あーそぼー!」
チャラ男P「モンハンッスか〜いいッスよ〜」
伊織「仕事はどうしたのよあんた」
チャラ男P「後でいいッスよ〜そんなの」
伊織「そんなのってあんた…」
雪歩「伊織ちゃん、それだけど」
伊織「どうしたの?雪歩」
雪歩「プロデューサー、もう書類終わってるらしいんです。小鳥さん大喜びしてましたし」
美希「ふーん…」

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千早「プロデューサー、私の何処が悪いと言うんです。教えてもらえませんか」
チャラ男P「いや、悪いとは言ってないッスよ。ただ合ってないなぁ〜って、ね?」
千早「…春香と美希に合わせられていないと?」
春香「ち、千早ちゃん。ごめんね。私、上手くついていけなくて」
チャラ男P「別に誰かが悪いわけじゃないんスけどね〜。基礎能力上げが必要かぁ」
千早「…」
美希「あふぅ…私は大丈夫だよね。そろそろ帰るの」
チャラ男P「ダメッスよ美希ちゃ〜ん。美希ちゃんも持久力無いんだから鍛えないとさ〜」
美希「うぐ…なの」
チャラ男P「千早ちゃんも歌に集中し過ぎてダンスの手を抜き過ぎッスよ。もうちょっと大事にしないとズレが起きちゃったら目も当てられないッス。美人はもっと笑顔笑顔〜」
千早「…っ!分かっています!…失礼します」
春香「ちょ、ちょっと千早ちゃーん!」
チャラ男P「参ったッスねぇ〜…」
美希「…。プロデューサー、何でおバカなフリしてるの?」
チャラ男P「バカとは失礼ッスねぇ〜」
美希「ちゃんとしようと思えば出来るのに、しないのはおバカさんなの」
チャラ男P「あらま痛いことで」
美希「千早がプロデューサーの言うことちゃんと聞かないの、プロデューサーの態度とかのせいだと思うな」
チャラ男P「…やっぱそう思う?」
美希「なの」
チャラ男P「まーこの服、ちょっと訳ありでね。俺がこの服から変わる時、それは」
美希「それは?」

チャラ男P「俺が、あの子を導けた時。かな」

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千早「これが、デビューソングですか」
チャラ男P「そっすよ。やっとここまで漕ぎ着けましたッス」
千早「そんな態度でなければもうちょっと早かったんじゃないですか」
チャラ男P「そんなむすっとしてたら綺麗な顔が台無しッスよ〜笑顔笑顔〜」
千早「…もういいです。デビューの件は感謝します。失礼しました」

チャラ男P「あ、千早…ち、千早ちゃん」

千早「?…なんですか」
チャラ男P「もし、もしさ。君が覚えていない人が君と想いあった人なら。君は、どうする?」
千早「何の話かは存じませんが、一つ言えるとするなら」

千早「今を、生きます。好きだったとかそんなしがらみに囚われたりしたくはありません」

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高木「君の優秀さには舌を巻いたよ。そのせいで調べなくてもいいことを調べてしまった。すまない」
チャラ男P「いいッスよ。あの子の夢や想いは何一つ変わってない」
高木「君は今でも彼女のことを?」
チャラ男P「昔の話ッス。あの子もそう思っているそうですから」
高木「…君の事情だ。詳しくは言わない、だが。分かってほしいのは、彼女を君の罪滅ぼしの代償にしないでほしいことだ」
チャラ男P「…」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

千早「プロデューサー、タバコ吸うんですね」
チャラ男P「見られないように吸ってたんスけどねぇ。あんま見ないでもらえると助かるッスよ」
千早「ふふっ、いいですよ。その変わりに、隣に居させてもらえますか?」
チャラ男P「副流煙は喉に悪いかもッスからダメッス」
千早「心配してくれるんですか?」
チャラ男P「バカ言ってないでレッスン行くッスよ」
千早「えぇ、もちろん。」

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春香「やった…!やったよ千早ちゃん!美希ちゃん!IA部門優勝だって!」
美希「当然なの!私たちだもんね、千早!」
千早「えぇ、そうね!プロデューサーがいてくれたお陰でここまで来れたわ」

チャラ男P「やっと、終わったな。これで…俺は解放されるのかな」

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千早「プロデューサー、事務所をやめる。というのは何の冗談ですか」
チャラ男P「ん?何のことッスかね?」
春香「一年契約とは聞いてましたが、まさか本当に…?」
美希「…」
千早「納得いきません、貴方は何故そうも私たちを。私を困らせるのですか」
チャラ男P「…」
美希「プロデューサー、事務所の机の中。ちょっとはみ出してたよ、これ」
チャラ男P「!!」
千早「そ、それは…!?」

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千早「Pさん、起きてください。全く、だらしがないんですから」
P「ん…。朝か、毎度悪いな。千早」
千早「い、いえ。朝食、できましたから。後で食べておいてください。あなた」
P「何か言ったか?とりあえず、さんきゅー。というか音楽教室。早く行けよー」
千早「…そうですね、はぁ」
P「?」
千早「鈍感」

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千早「スーツ姿、似合ってますよ」
P「からわないでくれ、これでもちゃんと着てるつもりなんだよ」
千早「プロデューサーがこの服で仕事するんですね。私、今の内にしっかり見ておきますよ」
P「っ!で、出かけてくる」
千早「ふふっいってらっ…Pさん危ない!!!!」
P「え?」

キィーッ!ドガッ!

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千早父「君に世話役を願い出て本当に良かったよ。最近の千早はよく笑うようになった。だから、そんな顔をしないでくれ。…今回の事件は、君が悪いわけじゃない」
P「俺が…!俺があそこで……っ!!俺が轢かれていれば…!!あいつが俺を庇ったりしなければ…!!!」
千早母「幸い、千早に大した怪我はなかったわ。額に擦り傷が出来たこと。それと、記憶の混濁。貴方のことだけ、すっかり記憶から抜け落ちているの」
千早父「千早が君のことを頼りにして想っていたことは知っている。君は、どうする?」
P「俺…は…?」

千早父「伝えるか、伝えないか」

P「俺は……………」

P「伝え…ま

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P「ダメだって言ったろ。勝手に俺の机漁っちゃあ」
美希「なんだかんだで、千早のこと忘れられなかった。そうでしょ?」
春香「ぷ、プロデューサー?この千早ちゃんと手を繋いでるのはまさか」
千早「いっ…!痛…!!何………これ!?」
P「せっかく、髪の色や服や口調まで全部変えてたのにな…台無しだよ本当」
千早「貴方は…あなたは…まさか」

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P「…私は、せめて。あの子の夢を叶えてあげたい。あの想いは、今となっては受け入れることは出来ないししてやれない。なら、これだけは…これだけは」
千早父「…いいだろう。お願いしよう」
千早母「いいの?貴方」
千早父「彼がそう言った以上そうする以外は選択肢は無いのだろう。…千早には知っていることが幸か不幸かは、私には分からないんだ」
千早母「あの人も、ですか」
千早父「…」

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千早「あ、あぁ…」
P「分かったろ、千早。これ以上俺に構うことはない。俺は君を助けられなかった。君の想いもちゃんと見てやれなかった。俺は君といる資格はない。記憶を取り戻したなら尚更。違う仕事を探して、君とは二度と会わない」
千早「なら…何で、私にまた会いに来たんですか…?」
P「罪滅ぼし。君は歌手になりたいと言っていた。それを叶えて【あげて】俺は罪から解放されて君は夢が叶う。間接的な叶え方になったのはすまないとは思ってる」
春香「そんな…そんな、酷い。千早ちゃんはプロデューサーさんのこと!ずっと…」
P「恨んでくれて構わない。これは俺の自己満足だ」
美希「…プロデューサー、いい加減猿芝居はやめるの」
P「………なんだと」
千早「美希…?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

千早父「君は何故、わざと写真を机にいれているんだい?」
P「誰かが気付いて、俺が罪滅ぼしなんて自己陶酔に近い真似を非難してくれれば。大成功なんですけどね」
千早父「…恨まれれば解決するとでも」
P「少なくとも、俺はただの憎い他人になれる。千早は違う想いを抱くことが出来る」
千早父「………」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

美希「そもそもおかしいの。こんなバレたらまずいような写真、ミキでも自宅におくか捨てるの。今日、わざと出してたんでしょ。プロデューサー」
P「あぁ、そっか。分かってないのか。なら」

ビリッ

春香「プロデューサー!?写真が!あぁっ!!」
P「これで分かったろ?俺はもうウンザリなんだ。過去の罪に囚われるのも、想いに囚われるのも」

パンッ

美希「…何処かで信じてた。だけど、そんなことするプロデューサーなんて」
千早「美希…私…私は…」
美希「ほうっとこう。春香、千早。じゃあね、【そこの人】」バタン

P「…………………」

P「はは……」

P「平手…痛かったな………」

P「痛い……なぁ……」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

高木「君はやはり才能があるね」
P「何が、ですか」
高木「愚か者の、だよ」
P「皮肉のつもりですか」
高木「ハッハッハ、まだ怒る元気はあるようだ」
P「………お世話になりました」
高木「待ちたまえ」
P「なんですか」
高木「先輩からの助言を一つだけ。君はまだ取り戻せる、頑張れ」
P「………っ!……失礼します!」

バタン

高木「いつも答えは単純だ、なのに複雑に考え過ぎてダメになるのをいつも見てきた私としては。彼には幸せになってもらいたいものだね」
小鳥「しゃ、社長!!」
高木「何だね?小鳥君、そんなに慌てて」
小鳥「千早ちゃん、プロデューサーを追いかけてます!仕事ほっぽらかして!!」
高木「ハッハッハ!結構結構、それでは私の曲芸でも見せに行こうじゃないか」
小鳥「えっちょっと社長!?しゃーちょー!!!!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

P「タバコ…あれ、ねぇや」
P「いや、そろそろやめないとな」
P「このスーツも一年ぶりか」
P「千早も似合ってるって言ってくれたっけ」

次の面接の方、どうぞー

P「………行こう」

ガチャ

千早「プロデューサー!待って!待ってください!!」
P「ちっ、千早!?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

春香「千早ちゃん、プロデューサーさんのこと。好き?」
千早「………好きよ」
春香「それは昔のプロデューサーさん?それとも、今のプロデューサーさん?」
美希「ちょっと春香、千早をいじめたらダメなの!」
千早「分からない…分からないの」
春香「聞いて!千早ちゃん!!」
千早「あ…」
春香「プロデューサーがバカな人で、とても良い人で、いつも自分を犠牲にするような人だってこと。分かる?」
千早「私…」
春香「どっちのプロデューサーだって関係ない。簡単だよ、簡単だったのよ…。千早ちゃんは誰が好きなの?」
美希「春香…」
千早「私、プロデューサーが好き。昔とか今とか関係ない。ずっと昔から変わってない」

千早「プロデューサーが……好き…!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

P「…アイドルがいきなりプロデューサー大好きです宣言ってお前な………」
千早「だ、だって。そうでもしないと」
P「分かった。分かったよ。本当、千早には負けたよ」
千早「プロデューサー、それで。返事は」

P「いいのか?」

千早「何がですか?」

P「俺で」

千早「はい」

P「即答かよ」

千早「あなたがどんな想いでアイドルにしてくれたのかは分からないです、けど」



千早「貴方が良いんです」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

美希「良かったの?春香」
春香「何が?」
美希「分かってるくせに」
春香「私じゃあ勝てないもん。絶対」
美希「いちごババロア、食べる?」
春香「バカ…」
美希「そこで盗み聞きしてた小鳥さんに奢ってもらお?」
小鳥「ピヨッ!?」
ゴゴゴ
小鳥「春香ちゃん閣下オーラ出てる!出てるから!!嫌ぁあああああ!!!!」

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P「またよろしくお願いします。社長」
高木「あの服装はやめたのかね?」
P「趣味じゃないもので」
高木「ははっ!だいぶよくなったようだねキミィ」
P「お陰様で、ところで社長。この経費ですけど、どこから出たんでしょうか?」
高木「ぐむ…優秀なのは困りものだね。それはだね…」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

千早「歌手転向とは、思いきりましたね」
P「大好きですー!発言が思いの外拡がってな。ここ数ヶ月千早のファンのお陰で死にかけたよ」
千早「大好きとは言ってません、プロデューサー」
P「嫌われたなー…」
千早「愛してますから」
P「惚気られちゃったなー…」
千早「?何で顔を逸らすんですか?」
P「いやーなんでもないッスよ〜。んじゃ営業行くッスよ〜」
千早「イラつくのでやめてください」
P「ひっどー、それとな。千早、忘れてたけど」
千早「なんですか」
P「俺も愛してる」
千早「はい、あなた」




終わり

前川みく「暇にゃ」

みく「仕事に空きが出ちゃったし、Pちゃんも他の女の子の担当に向かっちゃったし。暇だにゃー」

周りを見渡すも今日は誰もいない

みく「…まぁ暇だし、勉強でもするかな」

そして、私は眼鏡を取り出して普段の自分に戻る。
いつもはネコみたいな話し方だけど、学校でこのキャラを通すわけにはいかないわけで。
プロデューサーには悪いけど、私のキャラは一般受けしないのだ。まぁ知ってると思うけど

みく「最近勉強出来てなかったし、丁度いいかな」

私は普段しない独り言を呟きつつノートを開く。思えば一人になったのはいつ以来だったろうか。
プロデューサーがいつも連れ回してるからか、一人の時間。というのがどんどん減ってきた。
嫌、というわけではない。だけど、戸惑いはあった。
いつも勉強ばかりで、アイドルになるまで遊びは断った。
別に親が厳しいわけでもない。
自分から切り捨てて、みんな離れていった。
何かしらの感慨を感じたことはない。
目を逸らしていたから。
自分がそれ以外を教えられていないからしていなかっただけの話で。
何でだろうか、今はとても充実している。

みく「そういえば明日って誕生日だっけ?」

すっかり忘れていた。まぁいいか、忙しいし皆覚えてないだろうから

みく「プロデューサー遅いなぁ」

勉強もしばらく続けていたが流石に戻ってこないのでやめた。帰ることにしよう。腰をあげたところで電話がかかってきた。

P「みく、今事務所か?」
みく「そだけど、どうしたにゃ?」

内心、素の自分が出てないかヒヤッとしたが。どうやら大丈夫なようだ。
別に素の自分が出ても問題ないはずなのだけれど。
気恥ずかしいのかもしれない。そう思い込むことにした。

P「あぁ、大した用じゃないが。皆直帰するらしくてな。鍵を閉めて帰ってもらえると助かる」
みく「わかったにゃー」
P「すまんな」

気にはしていない。というか、鍵を閉めて帰っても。
プロデューサーは仕事をしに戻るのだろう。
そう思うと残りたい気持ちもあるが、何故か明日は早くに仕事が詰め込みである。
早めに寝ないと遅刻するので帰ることにする。

P「それじゃまたな」
みく「またねー」

通話を切る。もっと話していたいと思うものの、話題が思いつかない。もどかしい気持ちを抑えて帰路につく。
明日は誕生日、もうちょっと話せたらいいな。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

?「みく、起きろ。」
みく「おかーさん、後もう少し寝させてよぉ…まだ大丈夫でしょ…?」
?「いいから、朝ご飯出来てるぞ」

相変わらずうるさいなぁ。あれ?
お母さんってこんな声だったっけ。
そっと見上げる。
布団をそっと降ろした。
やだなー、まだ寝ぼけてるのかなー。

P「起きろってば、ほら。」
みく「に"ぃ"や"あああ"あ"!!!!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

みく「…」
みく母「やだーもうみくったら普段のみくと全然違うじゃない。」
P「そうなんですか?」
みく母「からかいのつもりでお家にいれてみて良かったわぁ。みくがあんな奇声あげてるの初めて聞いたのよー。」

…どうなってるんだろう。これ

P「あ、そろそろ時間ですね。ご飯美味しかったです。」
みく母「あら、引き止めて悪かったですわぁ。いつでもいらっしゃってくださいな。」
P「そちらが良ければ是非また。みく、行くぞー。」
みく「あ、うん。」

今さっきのは完全に素だったけど、もう気にならないくらいには焦っている。
サプライズパーティにはまだ早いんじゃないだろうか。

P「朝早いから迎えに車で来たんだがな。お母さんの方に自分から起こしにいってくれー、って頼まれて。…何かすまなかったな。」
みく「いーよ…別に。」
P「ふぁあ…。」
みく「眠たいの?」
P「あ、あぁ。ちょっと仕事でな。」

気まずそうにプロデューサーが鼻をかく。あれは嘘をついてる時の仕草。たまに他のアイドルに絡まれて、まゆちゃんから誤魔化す時によくするので気がついた。
何を誤魔化してるんだろ。気になるけど追求しても答えてくれないのは分かってるから聞かない。
今は営業に集中しよう。イレギュラーなことが多過ぎた。みくはネコのみく。
よし、切り替えた。頑張る。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

みく「や、やっと終わった…。」
AD「お疲れ様でしたー!タクシー呼びましょうか、みくさん!」
みく「大丈夫ですにゃー、お疲れ様でしたー!」

そそくさと帰りの支度をする。最近は良い人に恵まれているな、と思う。
最初の営業回りの時は邪険に扱われ続けたものだが、プロデューサーの努力のかいあって今はどこの局からも引っぱりだこな始末である。
文字通り嬉しい悲鳴が続く今この頃。現実は非情、なんてね。
とりあえず、プロデューサーの迎えを待とう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ふとしたら、電話がかかってきた。プロデューサーからだ。

P「あぁ、みくか。今日はちょっと他のアイドルが仕事終わってなくてな、9時ごろに終わるんだが。」

時計の針は8時をさしている。タクシーを呼べば8時半には事務所に着く。

みく「そっか…それじゃタクシーでm」
P「た、タクシーは経費が。な?」
みく「にゃ?ウチの事務所ってそんな気にするほど貧乏だったっけ?」

今のモバプロはちひろさんがスタエナの販促をしなくなって、お金と見つめあって黒い笑顔を何度も見せるくらいには繁盛している。
タクシー代なら予定経費内に入っているはずなのだが。どうしたんだろうか。

P「と、とにかく俺が迎えに行くから!待っててくれ!なっ!」
みく「い、いいけど。どうしたのいきなり。」
P「…」

しばらくの沈黙。何かを模索してるようだ。言い訳には間違いないだろうけど。

P「最近は物騒だからな、心配なんだよ。だから、待っててくれ。」
みく「ふーん…。わかったにゃ、待ってるにゃー」

心配しているっていうのは本当らしいから、ちょっと嬉しい。
でも、何でかは分からないからちょっと凛ちゃんに電話して聞いてみる。
渋谷凛、ニュージェネレーションの一人で私の友達。
ニュージェネの三人とは結構仲が良くてたまに遊びに行ったりする。
特に凛ちゃんとは勉強を教えたり教えられたり、Pちゃんとの恋愛相談もよく受ける。
みくは良く分からないけど、凛ちゃんはただ話を聞いて欲しいらしい。
卯月ちゃんは上手く流すようになった上、未央ちゃんは話を聞くことすら拒否するようになったそうで消化不足らしい。
私は話を聞くことが好きだし、1時間から2時間まで話してくれる凛ちゃんの話のレパートリーの豊富さにはびっくりする。
ただ、その話の大半がプロデューサーなのがまた凄いところ。

みく「凛ちゃん。Pちゃんって今他の子についていってるって聞いたんだけど。知ってるかにゃ?」
凛「んー…。知らないね。」
みく「そっかー…」
凛「まゆに聞いてみたら?あの子なら知ってそうだし」
みく「あー、そうだにゃあ。聞いてみるにゃ。凛ちゃん、ありがとねー」
凛「それじゃあね」

通話を切り、次はまゆちゃんにかける。
佐久間まゆ、プロデューサーの為に読モをやめてアイドルになったそうで。
まゆちゃんからも結構な頻度で恋愛相談を受ける。
他のアイドルとは話すと争いの種になるようで、みくみたいなケースは稀有らしい。
凛ちゃんとは特にまずいらしく、顔を合わせたらしばらく睨み合いになる。卯月ちゃんの胃が酷いことになりそうだ。

まゆ「はぁい、もしもし。みくちゃんですかぁ?」
みく「あ、まゆちゃん?プロデューサーって今何処にいるか分かる?」
まゆ「え?」
みく「え?」

あ、これまずい空気だ。

まゆ「プロデューサーさんのこと、何で探してるんですかぁ…?」
みく「い、いや違くて。プロデューサーさん、迎えに来てくれるはずなんだけど何だか遅れるらしくて…」
まゆ「?…あー。………(まずいですねぇ)」
みく「まゆちゃん?」

何だか空気が変わった。普段では聞けない焦りの混じった呟きも聞こえる。

まゆ「ま、まゆにはちょっと分からないですねぇ…ごめんなさい」
みく「そっかー…手間かけてごめんにゃ」
まゆ「…いえ、気にしないでください」

通話を切る。これは…ちょっと調べてみたほうが良いのだろうか。

私は

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

つまるところ。俺はみくの誕生日会を企画していた。
これはプロデューサーとしては失格なのかな、と思いつつにやけながらケーキの準備を終わらせた。
車を出してみくの迎えにむかう。
今回の準備で驚いたのはみくの人望と言うべきか、友好関係と言うべきか。
あの凛とまゆですら喜んで協力するとは思ってもみなかった。
話を聞くと相談に乗ってもらっていたらしいが、その内容を聞くと2人とも苦笑いして話を濁した。一体何を話していたんだか。
とりあえず楓さんや志乃さんが飲酒パーティ始める前には帰らないと。
パーティの準備をアイドル達に頼んだお陰か。これなら8時半くらいには帰れそうだ。主賓を待たせ過ぎても悪いし、さっさと迎えに行こうか。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

なんで?
みんな遠いところに行くの?
何で私は追いつけないの?
私を置いていかないで。
独りに、しないで。

…………うたた寝をしていた。

あんな想いはしたくない。

怖い。

誤魔化さないと。

嫌な子だと思われたくないから。

でも。

私は。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あれ?帰っちゃったのか。
いや、いる。何だかうずくまっている。
調子が悪いのか。
それなら早く車に乗せてやらないと。

「大丈夫か?迎えに来たぞ。みく」

俺はそう言った。みくは何かを告げようとしたが、何も言えていない。気付いていないのか?

涙の跡がある。

俺は

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

大丈夫だよ、心配しないで。Pちゃん

声は出てるはず、聞こえていない?
そんなはず、ない。

だって

違う

嫌だ

怖い





みく「あ…」

ゆっくりと
安心して、と
そう言っているように
プロデューサーは私の身体を優しく抱き締めた。
それでいて離さないと言わんばかりに強く抱き締める。少し痛いけど、凄く安心する。

P「そんな顔をしないでくれ。待たせて悪かった。悪かったよ。」
みく「そうじゃない…違うの…」

私はプロデューサーにこの夢を打ち明けた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

結果、プロデューサーは大爆笑である。
私は久しぶりに本気で怒った気がする。

P「いやー…。まさかなぁ…ハハッ…」
みく「むぅ…」
P「まぁそう怒るなよ。みくは頭はいいのかに察しが悪いから、本当…バカだよなぁ」
みく「…怒るよ」
P「いつでもどうぞ。それに…そんなお前だったことを知れたのも、悪くない」

プロデューサーはちょっと真面目に言う。
臭いセリフだって自覚してるのかな。
そんか言葉にときめく私もどうかしてる。

P「お前の勘違いも、これで解消するだろ。とりあえず事務所に着いたぞ。ほら、降りて」
みく「うっさい。催促しないで」
P「あっれー?みくにゃんが冷たいぞー?」

うざい、あのドヤ顔が非常にうざい。
一度楓さんにでも張り手されてしまえばいい。
この時私は、アイドルとしてのみくなどすっかり忘れてそんなことを考えていた。
この後散々ネタとして引っ張られることになるが、それはまた別の話。

P「さて、俺はちょっと一服するから。先に事務所入っててくれ」
みく「プロデューサー、この仕事始めてから禁煙したんじゃなかったっけ?」
P「えっ、あー…ま、まぁやることがあるんだ」
みく「ふーん…」

疑わしい、が。聞くのも面倒臭くなっていた。
事務所は暗くなっている。照明を着けないと。

みく「んーと…何処だろ?」

あ、見つけた。ポチッとな。

「「「「お誕生日おめでとう!!!!」」」」

目をぱちくりさせてしばらく考え込む。
私は事務所から出る。

卯月「ちょ、ちょっとみくちゃーん!?」
未央「つ、連れ戻すよー!」
のあ「…」
みく「の、のあさん怖い!速い!嫌にゃあああああああああ!!!」
P「はは、のあさん。連れていっちゃってください。」

うわぁ…何だろ。私、今囚人みたいなんだけど。隣に凛ちゃんとまゆちゃんいるんだけど。今凄い怖いんだけど。ガッチリ掴まれてるんだけど。

凛「全く…なんで誕生日会なのに逃げるかなぁ」
まゆ「凛さんが怖かったんですよぉ」
凛「何か言った?」
まゆ「いいえ、何も」

うええ、誕生日会じゃないよ修羅場だよぉ…。

卯月「もー!せっかくの誕生日会なんだから!凛ちゃん、笑顔。」
凛「えーっと」
卯月「笑顔。」
凛「はい」

凛ちゃん気圧されてる。卯月ちゃん凄いにゃー。

未央「あ、やっと笑ったね。」
かな子「それじゃ、特製ケーキ。入刀しちゃいましょうか」
拓海「よだれ、よだれヤバイってかな子」
志乃「お酒は開けてもいいかしら」
瑞樹「まだダメ」
志乃「えー…」

私の誕生日会だよねこれ?

P「はーい皆一度注目ー!」

視線が私に向く。
なんだろ、前は怖かった視線が。
今は、凄く心地がいい。

P「普段のみくにお世話になってる連中が集まったこの誕生日会だが、みくにゃんの祝いをしたいかー!!!!」

「「「おー!!!」」」

P「ブラジルへ、行きたいかー!!」

「「「おー!!!」」」

みく「みくのお祝いはっ!?」

どっと笑い声があがる。…なんだろ、変なこと考えてたのがバカらしい。
プロデューサーが私をバカって言ったのは、あながち間違いじゃなかったのかな。余計腹立たしいけど。

みく「こーなったらさっさと入刀するにゃ!私が1番に食べるにゃ!」
かな子「うーあー…」
拓海「抑えろ、ハウス。ちょ、かな子待て。おい誰かかな子とめろ」
みく「にゃあああああ!かな子ちゃんがケーキに突っ込んだああああ!!」

P「な?大丈夫だろ?」

そう、プロデューサーは一言呟いた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

起きた。今日がオフとはいえ、事務所で寝るとは思わなかった。
掛け布団、プロデューサーがかけたのかな。

ところで、凛ちゃんとまゆちゃんが隣で寝てるのは何?これ、ハーレム?
寝ぼけてるだな、色々。と思いつつ私は洗面所へホールドが痛い痛い痛い

凛「ぷろりゅーさぁ…ん…」
まゆ「Pさん…んん…そこは」
みく「肋骨ッ!折れずにはいられない…ッ!!いや冗談言ってる暇じゃなくて!痛いにゃ!肋骨が!肋骨がッ!!」

あ、ヤバイ。天国見える。
楓さんが女神かー。妥当かなー。

そんなことを思いながら今日も、慌ただしい一日が始まる。



おわり

神崎蘭子ちゃん

真理Pと申します

たまに妄想創作書きます。モバマスかアイマス関連になるかと思いますんで良かったら見てね
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