いつかこの日がくるとわかってたけど
いざそうなるとやっぱり怖くて








「麻衣、帰ろう」



「あ、うん」




久しぶりにかけるから誘われて
嬉しいような複雑な気持ちで
だってかけるから誘うときは
決まってなにか話があるときだから








「今日部活は?」




「あ〜休みだよ、試合終わったから」




「頑張ってたもんね〜」






かけるは昔から一つのことにしか
集中して出来ないタイプだから
大会までの間夜遅くまで
練習してるのが想像ついて
なんでもわかるんだなって改めて思った







「麻衣はさ、好きな人いる?」





「え?急にどうしたの?」





なんとなく、なんとなくだけど
そんな話なんじゃないかと思ってたから、、





「ん〜いるよ」




「え?いんの?」





かけるだよ。って言えたらいいけど
今はかけるの言葉を聞こう






「どうして?」




「俺、好きな人できた」






わかってたよ。わかってたけど、
かけるの口から聞くともう
自分に言い訳出来なくてなって
苦しくて泣きたくてほんとに
なんでかけるなんだろうって思ってしまうから







「え、珍しいねかけるの恋」



「ん?そう?そうかもな〜」





かけるが今振り向いたら
きっと心配させる顔をしてる気がして
少し間をとって歩くけど
かけるはいつも絶妙な距離を保ってて
これもまた一緒に過ごした月日を感じる







「かけるの好きな人ってどんな人?」





「ん〜なんかすごく落ち着く空気を持ってる人かな。あと守りたくなる人?」





「そうなんだ〜」






かけるの中には私なんて
これっぽっちもなくて
その人を思い浮かべながら話すかけるが
今まで見たことないような優しい顔してて
あぁ、もう私じゃ無理なんだ。って








「好きな人ってだれ?」





「ん〜、、、西野」







絶対言うなよ。って笑ったかけるが
傷だらけになった心に塩を塗るように
塞がらない穴を作っていく。






ねぇ、かける、私はどうしたらいい?





言葉にならない言葉が
迷子になってしまわないように







一つのことしか見えないあなたは
誰かを想うのに精一杯で
それでもあなたが笑ってくれるなら
私の想いは浄化されていくの







これが私の愛の形なんだ。