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レン+ミクオ+カイト

※レン+ミクオ+カイト
(会話文だけ)



「最近流行ってる花柄のツナギみたいなの。オレあれ結構好きかも。ミクに着てほしいな」
「いや、ミクちゃんはスカートの方が似合うと思うな。女の子らしいし。長いスカートも流行ってるみたいだけど僕はあんまり好きじゃない」
「ナニ? 人の彼女にカイトの好みに合わせてミニスカを穿けっていうの? アンタ何様?」
「いや、そういうつもりじゃ……」
「嘘だよ。レンはどんなのが良い?」

「Tシャツとズボン」
「は?」
「いや、フツーに俺らが着てるような」
「マジで?」
「うん、マジ。シンプルだから女らしさが引き立つというか」
「それってよっぽど可愛くないと厳しくない?」

「リンが可愛くないっていいたいのかよ、バカイト。リンなら何でも似合うに決まってるだろ」
「ぷ」
「あぁ、もう。……ハイハイ。二人ともご馳走さんです」

more..!

あんなにも一緒だったのに

 夏休み。リンは部活で学校。
俺は小遣と長々としたお小言と引き換えに買って貰ったギターを背負ってカイト兄ん家に向かって歩いていた。彼がプロのミュージシャンでギターの名手なのは、この辺りの人間ならよく知るところだ。
ギターを習いたい。14歳のガキの言うほんの思いつきのような願いをカイト兄は忙しいにもかかわらず快く引き受けてくれた。

 ――歌うの嫌いになっちゃったの?

 生まれる前から一緒だった片割れの叫びにも似た悲痛な言葉と泣き顔が頭から離れない。あれを機に俺は二段ベッドから降り、部屋も分けた。
リンとこんなにも離れていることは初めてだった。いつも当たり前に傍にいた存在がいない。何か大切なものをなくしてしまったような、すかすかとした気持ち。表現しようもない違和感が付き纏う。だけど、きっとこれが自然な距離だ。

 マンションのインターホンを鳴らす。オートロックを解除して、部屋へ招き入れと。俺の顔を見るや否やカイト兄は言った。いつものように困った微笑を浮かべながら。

「ひどい顔だな」
「かもね。絶賛☆喧嘩中だから」
 しかも、かつてないほど険悪な。世話焼きなこの人は何があったのか気になるのかなと思ったけれど、あまり思い出したいことではなかったし俺の口からは自嘲のため息しか出てこない。
しかし人生経験の差だろうか、頼りないように見えて自分よりもよっぽど包容力のある年上の彼は何となく悟ったらしい。ふっと真面目な顔に切り替える。

「謝ったのか?」
「いや」
 俺は曖昧に笑ってごまかした。
リンは部活に戻れと言うけれどこれだけは譲れない。
歌うことか嫌いになったわけではないし、むしろずっとリンの隣で歌っていたかったとも思う。

 だけど気づいてしまったから。自分が本当にやりたかったことに。

「そうか」
 ほどほどにしとけよ、後に引くと大変だぞと諭すカイト兄の家を後にしたのは、6時を過ぎた頃だった。まだ空は明るい。
むわっと青い緑の混ざった、夏の夜の匂いがして電柱に貼られた花火大会のチラシに目を取られる。
もうそんな季節なのか。

 これを仲直りのきっかけにしよう。リンとの間に生じた溝は深い。だけどきっと和解の難易度はぐっと下がるはずだ。我ながら良いアイデアだと思った。
誰もが気分の浮つくお祭りで、互いに笑えることが出来たなら今までのことだって水に流してしまえるはず。

 そう思うと、いてもたってもいられなくなって俺は家の方へ駆け出した。自然と口元が笑んでくる。解決の糸口が見えた。希望が見えた。足どりもだが風船のように心が軽くてすぐにでも家へついてしまいそうなくらいだ。
 気分良くまたひとつ角を曲がると先の十字路にリンがいるのが見えた。思わず足が止まる。
部活帰りだろう。俺もよく知ったその先輩と並んで俯き加減に何かぶつぶつ言っているのかと思えば、急にはにかんで見上げたりなんかして。リンがこちらに気づく様子は全くない。

"とても楽しそうだ"
 見てはいけないものを見てしまったような気がした。
 俺は何に浮かれていたんだろう。仲直り出来るとも限らない、出来たとしてもその後もリンが俺の傍にいるとは限らないのに。
俺に俺だけの夢があるようにリンにだってリンだけの夢があるのかもしれないし気持ちだってあるだろう。

 あんなにも一緒だったのに。
いつの間にか俺の知らないリンがいた。いつの間にかこんなにも隔たってしまっていた。

 …――だけど、どうか、お願いだから。もう少しだけ。
俺だけのリンでいてください。

 真摯に祈るも、足は梃子のように動かなかった。
少し前の道を行くセーラー服と白いシャツが妙にくっきりと視覚に焼き付いた。



___

男女の双子で5題より
title by "1141(七瀬はち乃)"

成長した半身

※学パラ双子/中学生



 あたしたち双子はこの町ではちょっとした有名人だった。
鏡を合わせたようなそっくりな容姿に、人々を魅了する声、美しく響き合うユニゾン。その希有、特異さから地元メディアに取り上げられたことも度々あった。
 まだあどけないともいえる歌声がしっかりと紡ぐメロディーは、どこまでも伸びやかで透明。天井の高い音楽ホール全体に溶けるように響いてく。
 スタンディングオベーション!
割れんばかりの拍手が送られる度に、幼いあたし達は顔を見合わせて笑い合ったのだった。

 ……だけど、どんな物事にだって、やがて終焉は訪れる。じわじわと蝉の声が響く中であたしはその言葉を聞いたんだ。


「合唱部やめたから」
 ぽつりと。低く変わりつつある声は平坦で感情を感じさせない響きで言った。
少し後ろを歩いていた裾捲りのズボンがゆっくりと歩みをやめると、あたしの真新しい白のスニーカーも静かに止まる。僅かにじゃり、と砂の擦れる音がした。振り返るとレンが険しい顔をしてそこに立っていた。

「なに?」
「だから部活やめたって」
 じりじりと照りつける太陽、黒々とした影を落とす街路樹、いつもの通学路、そして微かに香る緑の匂い。何もかもが遠くて幻のように思えた。
さわ、と草木がそよぐ。まるでその場に滞った空気を読んだかのように湿った風が頬を撫で髪を遊んでゆく様にあたしははっと我に返った。

「は? あたし、何も聞いてないよ!」
「だって言ってないし」
 そういうことじゃなくて……ッ! 言葉にしたくとも上手く言葉にならない。
納得がいくはずがなかった。レンが歌をやめるなんて。
ずっと一緒に歌ってきたのに。言葉にせずともわかりあえる最高の相方だと思っていたのに。ここまで互いの声を綺麗に響かせ合えるのはきっとレン以外にいないのに。

「少し休んでから別のパートで復帰したっていいじゃんっ」
「でも、もう決めたことだから」
 レンは困ったように微笑んだ。だけど変声が始まったばかりの声はひょっとした瞬間に裏返ってしまう。少し前からは考えられない酷い声。それなのに、どうしてそんなに晴れやかに話すの?

「……ねぇ、歌うの嫌いになっちゃったの?」
「じゃなくてさ、どうしても他にやってみたい事が出来たんだ」
 レンのやってみたいことって何だろう。例えようもなく不安だった。
あたし達はずっと歌で繋がっていた。歌を歌うことによって伝わるモノがたくさんあった。あたしにとって片割れが歌をやめることは文字通り半身を千切られたように痛かった。
聞きたくない! だけど確かめなきゃいけない。引き止めなきゃ、笑って今のは嘘でしたって聞かなきゃいけない。

「それって何? 二人で歌うのよりも大切なこと?」
「ごめん言えない。でも父さんと母さんにはもう話してあるから」
 決定打だった。レンの瞳は揺るぎない。
 あたし達は小さな頃から二人揃って音楽の英才教育を受けてきたけれど。
昔からそうだった。ころころと意見を変えるあたしと違って一度決めたことをしっかりとやり遂げるのはいつだってレンの方だった。

「だから、ゴメン」
 レンが掠れた声で繰り返す。とても申し訳なさそうに。
ねぇ、どうして謝るの。そんなことが聞きたいわけじゃないの! ぎゅっと目をつむると頬に熱い雫が伝う。

「リン!?」
 レンはぎょっと目を見開いた。そりゃ驚くだろう。突然泣かれたりしちゃ。
だけど仕方ないじゃない。悪いのはレンなんだから! 
鼻をすんと鳴らすと、おろおろと慌てる彼があたしの目元に手を伸ばそうとするのがわかって、あたしは勢いよくそれを叩き落としキッと睨みつけた。

「レンなんて知らないっ!」
 それだけを言い捨てて、あたしはくるりと逆方向に走り出した。背後でレンがうろたえる気配がする。
だけど振り返りたくなかった。レンの顔を見たくなかった。だって彼の空のように青い瞳には困惑の色しかなかったから。

 なおも降り注ぐ蝉時雨の中で、何かが壊れる音がした。


___

男女の双子で5題より
清香にしては珍しく(短いですが)連載モノになりそうです。暫くの間お付き合い頂けると嬉しいです^^*

title by "1141(七瀬はち乃)"

我慢の限界だ(リン+レン)

※無知リンとレン/若干シモい



「レン。ぎゅっとして?」
「また今度な」
「うー。レンっていっつもそうだよね。ねぇ、男の子って小さいのがそんなに嫌なことなの?」
「急になんだよ」
「あのね、友達にレンがリンを抱いてくれないの、なんでかなって聞いたら小さいのを気にしてるんじゃない? って」
「抱くって……つか、小さいって何だよ……」
「あ、やっぱり嫌なんだ。それなら大きくするにはリンがレン自身にたくさんキスをすれば良いんだって」
 してあげるーなんて嬉しそうに笑いながらリンはレンの額に頬にと次々にキスが落としてゆく。

「これで背が伸びるといーね!」
 あくまでも無邪気な彼女の様子にレンは心の中で小さくゴチた。
本当にシてくれたらな……、とか。マジで勘弁してくれと思った。


(誰だよ、リンに変なこと吹き込んだ奴!)

more..!

ミク+リン

※学パラ


 学校からの帰り道、リンちゃんから貰った黄色いキャンディが口の中でからころと音をたてる。
お腹が空いているから噛んでしまいたいところだけど舌の上で何度も何度も転がすたび、じんわりと甘味と酸味が広がっていく。おいしい、と顔を綻ばせたところで私ははたとあることを思い出した。
 甘酸っぱくて爽やかなその味は昔からよくあるものに例えられていた。

「ねぇ、ファーストキスってレモン味って本当なのかなぁ?」
「覚えてないよ、そんなの」
 彼女の幼い容姿に似あわぬその言葉に、私は驚いて隣を振り向くと

「だって、あたしのファーストキス、レンだもん」
 だからどのくらい前なのかわかんない、とリンちゃんは呟いた。
まずきょうだいとのキスってカウントのうちに入るのかなぁと疑問に思ったけれど、校内中にブラコンで知れ渡ってる彼女にはそのキスも意味のあるものなのかもしれなかった。

(ちなみに弟の方もかなり重度のシスコンだ)



___

ファーストキスをテーマに何か爽やかなのを書こうと思ったけれど、思った以上に話が膨らまなかった\(^0^)/
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