紅茶一杯。



レンタルビデオの日と師弟
2016年12月15日 19:38

話題:二次創作文

※モブサイコ100
※師弟で鑑賞会


「師匠、今日は何を観るんですか。」
ソファーの前で体育座りして、側に立つ師匠に訊いた。DVDのケースを開いていた師匠はモブを一瞥してデッキにセットする。
「ちょっと前に話題になってたアクション映画だ。」
パッケージを見ると公開中、学校でもよく聞いたタイトルが書かれていた。
テーブルの上にはスナック菓子と飲み物。いつもの光景…になったのは、いつからだろうか。
15日がレンタルビデオの日だと教えたのはどっちだったかな、とモブはマグカップの中身を飲みながらぼんやり思った。
(なんで師匠のうちで一緒に観るようになったんだっけ…)
今観ているアクション映画はあまりお気に召さなかったらしいモブは、ぼんやりと別のことばかり考えた。
チラリと師匠を盗み見ると、欠伸をしている。
「師匠…これ観たかったんじゃ…」
首を傾げると、師匠は滲んだ涙を指で拭いながら
「人気だっつーから、とりあえず借りただけだ。」
とあっさり言った。お前は楽しんでるか?と訊かれて、モブはあんまり…と返してしまう。
「そうか…でもまぁ勿体無いし、話のネタにはなるだろ。」
と視聴続行を下す。二人でぼんやりと眺めながら、集中なんて出来ず内容が入ってこない…と途方に暮れる。

スナック菓子の咀嚼音をさせて師匠が次回のリクエストを訊いてくる。モブは相変わらず口の周りを汚してる…と眺めていた。
「で、ないの?あるの?」
「特には…」
そもそもなんで、こんな事になったんだっけ。モブは再び考えにふける。
「じゃあもう止めるか。」
その言葉が、耳元で言われたみたいにハッキリとくっきりと聞こえて、モブは師匠を見た。目を見開いて、驚きの表情を見せていた。
このリアクションに師匠が面食らい、困惑する。
「な、なんだよ…だって観たいもんねぇなら、必要ないだろ。」
ちょっと体を引いてしまった。モブは茫然としたあと、ゆっくりと元の姿勢に戻ると、不満そうに眉根を寄せて
「…師匠。なんで鑑賞会始めたんでしたっけ。」
と呟いた。
なんでだっけ。師匠は茫然とする。

そういえば、いつから始めたんだっけ。何がキッカケだったっけ。
師匠は困惑した。モブを見ると、むっつりと不機嫌そうだった。
「確か、随分前にお前が15日はレンタルビデオの日だとかって言って……」
そうか、じゃあなんか観るかって、部屋に誘ったような。
「あ。」
小さくつぶやくと、師匠はみるみる赤くなっていった。
そう、思い出したのだ。なぜ、誘ったか。なぜ、鑑賞会を始めたか。

(一緒に、居たかったからだ。)

プライベートな時間を、一分一秒でも長く、一緒に過ごしたかった。ただただ、それだけだった。
それに、利用しただけだった。だから何でもよかった、だから観たい物が特に思い付かなかった。
ただ、一緒に居たかった。少しでも長く。
仕事場以外の場所で、時間で。

思い出して赤面する師匠の向かいで、モブも体育座りのまま赤面していった。お互いに見つめ合う。
モブも思い出した。なぜ、この鑑賞会に乗ったのか。
気持ちは同じだったからだ。
一緒に居たかった、過ごしたかった。キッカケなんて何でもよかった。記念日を告げた時は特になにも考えてなかった。
師匠が食い付いて、部屋に誘われて。その瞬間に、モブはこれをチャンスだと乗ることにしたのだ。すっかり忘れていた。
(なんでこんな大事なこと…)
モブは赤い顔のまま俯く。
(忘れちまったんだ…)
師匠は顔を背ける。最初は盛り上がった。突っ込みを入れたり、理解できない顔をするモブに解説をしたり。
それが段々、ぼんやりとただ眺めるようになって、今では惰性になってた。
内容なんか入らない、ただ作業的に眺めてた。だから忘れてしまったのだ、最初の気持ちを。
「師匠。鑑賞会、止めましょう。」
「ああ。」
再生を止める。部屋の電気をつけると、モブが立ち上がった。
「次回から、15日は一緒に何かする日にしましょう。」
また、忘れないように。マンネリ化したから失敗したとモブは判断し、師匠はそれに同意した。
「で、なにする?したいことあるか?」
師匠に振られ、モブが考える仕草をする。と、腹が鳴った。
「…餃子作りとか。」
それ今食いたいだけじゃねーのか、と笑いつつ、ああやっぱり会話があってこそかもなと師匠は納得した。
ただ同じ空間に居るだけじゃ駄目だ。
(そうか、俺はモブと『会話』のコミュニケーションがしたかったんだな。)
だから鑑賞会は失敗したんだと気付き、スッキリした。





・せっかく一緒に居るのに、ただ観て終わり解散。なんて悲しいじゃん、てとこに来てた師弟。起死回生。
てか見切り発車だったからなんとかオチついてよか、良かったぁ……(ついてなかったらすみません)


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モブサイコ100




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