「まったく…懲りるという言葉を知らないんですか貴方は…」
洋平の姿を見て、平祐はため息混じりにそう言った。
またどこかの見知らぬ女とトラブルを起こしてきたらしい彼の頬には赤く手形が。口の端からは血が滲んだりしていた。
当の本人はというと、特に痛がったり不快な態度は取っておらず、あっけらかんとしていた。
「いいからまた手当、頼むぜ平ちゃん。」
全くこの人は、自分がしてきた事が分かっていないのか。
大体、自分のところに来るのはおかしいんじゃないのか。彼は今一人で住んでいないのに。
「…手当なら彰くんにやってもらうのが普通では?」
「…あいつは、心配しすぎるからな」
あぁ、そうか。この人は、
「あだっ、平ちゃんもうちょい優しく!」
「少し痛いくらいじゃないと懲りないですからね、貴方は」
この人は、彼に心配をかけたくないのだ。
だからこそ、手当も手早く綺麗に出来る自分の元に来て、傷が残らないようにという気遣いもできる。
…だとしても、ある一点が抜けている気がする。
切れている口端に絆創膏を貼り、頬を冷やすようにと氷の入った袋を渡す。
救急箱を片付けていると、大人しく頬を冷やしていた洋平が口を開く。
「…なぁ、怒ってんのか?」
「……えぇ、そうですね。」
「俺がちゃんとしねぇから?」
「そうですね、それもありますが…」
またなんの小言を言われるのかと身構えている洋平を尻目に、平祐は続ける。
「心配しているのが彰くんだけだと思っていることにも、怒っています。」
「………」
予想外、とでも言いたげに、洋平はポカンと口を開けていた。
平祐は本日二回目のため息をついて、洋平のほうへ向き直った。
「貴方が自分を蔑ろにする度に、彰くんだけじゃない、姉さんや、真純ちゃんや望加にも心配されているのがわかっていない、それに腹を立てているんです。」
普段とは異なり、真っ直ぐ目を見て話す平祐に面食らい何も言えなくなった洋平を見て、平助は一度眼鏡を直した。
自分の気持ちは彼に伝わったのだろうか、と少しだけ危惧したが、確認するのも面倒だと思いまた淡々と片付けを進めていった。
「…なぁ、お前はどうなんだ、平祐」
不意に聞こえた言葉に、ピクリと反応した。
ちらりと見た洋平の顔は少し情けなく見えて、一度目を伏せる。
「…心配していない人の手当をすると思いますか?」
遠回しに、けれど的確な答えを口にして、平祐は洋平に背を向けた。
素直じゃない。そう思ったが、あえてそれは口にせず、洋平は口元を緩ませた。
(心配だからこそ、貴方が大事だからこその行動と分からない貴方ではないでしょう?)
(お前達がいるからこそ、俺は立ち直れたんだろうな。)
―――――――
前々から描きたかったのに画力の問題で描けなかった洋平と平祐の話。
洋平も彰の比じゃないくらい自分を蔑ろにする気概があります。
彰はもちろん洋平を慕ってますから突然怪我を作ってくる洋平が心配。
洋平も心配されるの分かってるから段々彰にそういった姿を見せないようにしていました。
結果、進路上医学方面にも精通している平祐を選んだわけです。
でも平祐も家系上愛のある人ですから、怪我するたびに自分の元に来る彼を心配している。
だがしかし顔に出ないもんですから洋平もそれを利用してホイホイ平祐の元へ。
そんでもってとうとう平祐の堪忍袋の緒が切れてこんな事言われちゃいました〜みたいな( ´_ゝ`)
設定をちゃんと言わないと何が何やらですね…すいません書きたいだけ書いてるもんで…