攻める。
ディフェンスをフェイントとバックステップでかわす。
そのままゴール下まで進み、誰よりも高くジャンプして。
ピーッ
バスケットボールが綺麗にゴールに入り、得点が入った事を知らせるホイッスルが鳴る。
その途端、自校も対戦校も問わず女子の黄色い声が体育館に響いた。
しかし、7番を背負ったその男――岡田一夜(オカダカズヤ)は周囲の女子は気にも留めず、チームメイトには軽く手を上げて試合に戻った。
その後、試合の結果は岡田の活躍により圧勝で終わった。
「お疲れ様、岡田センパイ。」
試合終了直後、男子バスケ部マネージャーの広瀬成海(ヒロセナルミ)は、真っ直ぐ岡田の元に向かいタオルとスポーツドリンクを渡し、上着も彼の肩に掛けた。
女子からはまた大きな羨望の声が上がったが、岡田達の所属する学校では男子部のマネージャーは男子、女子部のマネージャーは女子と決まっていたので、幸か不幸か男子バスケ部のマネージャーの席に女子が殺到する事はなかった。
しかし。
「ありがとう、広瀬。」
ちゅ、と岡田が広瀬の瞼にキスを落とした為、更に大きな女子達の悲鳴が上がった。
見学する女子の目的の大半が岡田だからだろう。
だが、当然の権利だと云う態度でそれでも嬉しそうにするマネージャー――広瀬との噂も近隣に広まっている筈だから、2人の関係を確かめに来た他校生も多いという理由もあるかもしれない。
結果として、女子マネージャーに抜け駆けされる心配はなくとも、広瀬と云う相当な美人の恋人が常に側に居るのだから、岡田狙いの女子としては五十歩百歩だろう。
いや、既に付き合っている分――しかも未だ蜜月のよう――、尚性質が悪いかもしれない。
「おーい、広瀬!俺達にもタオルくれよ!」
「はぁ〜い。」
それでも、岡田と広瀬が付き合っているのは全校周知の事実であり、広瀬の岡田特別扱いも日常茶飯事だったので、チームメイト達はいつもの事、と苦笑混じりで声をかけた。
からかい半分でもあっただろう。
しかし、広瀬も一応常識を知っている人間――それより自分の欲求に忠実なだけで――だったので、岡田以外のメンバーにもタオルやスポーツドリンクを渡して回った。
現在男子バスケ部のマネージャーは広瀬1人なのだ。
「お疲れ様です。」
「サンキュ。」
「でも、例え目的が岡田と分かっていても広瀬みたいな綺麗所がマネージャーなのは良かったよなぁ。」
「男のマネージャーなんてむさ苦しいだけなのにな〜。」
「ホントだよ。」
「誉めたって何も出ませんよ。俺の目的は岡田センパイの側に居る事だけですから。」
「まあまあ、そう言わずに……。」
「御免被ります。」
この手の掛け合いは部内での定番の冗談だから、お互い笑って言い合える。
広瀬の目当てが広く知られていても、彼自身の性格や人柄で、先輩達にも可愛がられている。
だが、同級生達からも煙たがられる事なく、好意的に受け入れられているのはやはり人徳と云うものだろう。
「ひーろせ。何ぼく以外の男と楽しそうに話してるの?」
「別に楽しそうになんかしてないよ?」
広瀬の後ろから、岡田が抱え込むようにしてゆったり抱きついてきた。
「そう?そうは見えなかったんだけどなぁ〜。」
「も〜、岡田センパイってばやきもち焼いてるの?」
「当たり前だろう?可愛い広瀬がいつ取られるんじゃないかって、いつもヒヤヒヤなんだから。」
「大丈夫だよ。俺は岡田センパイ以外目に入らないから。」
そのまま、広瀬が振り返って2人は抱き合った。
「俺は岡田センパイだけが大好きなんだよ?」
「ぼくも広瀬だけを愛してるよ。」
そのまま、体育館内の衆目を気にせず深いキスを重ねる。
チームメイト達はごちそうさま、と早々に引き上げていったが、2人の関係を知らない対戦校の面々は唖然としているし、当然のごとく、集まった女子の黄色い声が響き渡った。
「ん……ふぅ……んぁ……。」
「……かわいい。」
「センパイは、カッコ好いよ?」
体育館を一杯にしている女子達の興奮も冷めやらぬ勢いだったのだが、睦言を囁き合う2人がそれらを気にする事はない。
硬直していた対戦校のメンバーたちが我に返ったのはもう暫くしてからのことだった。
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要望があったのでシリーズ続き☆←
需要があったのはホント嬉しい。
でも、今回の話は自分的にはネタ練ってた時は良かったけど、書いてみたら面白くなくなっちゃったのでorzって感じです。
表現しきれなかった……。
取り敢えず、だらだら続けるのは避けましたけど……。(>_<)
あー、文才欲しいな……。
せめてノってる時に書き上げたかったかも。(´・ω・`){しゅん...
あと、いくつか書けてない裏設定もあるし。
2人の図太さ加減が書けてないし。(ここ超重要だと思うんだけど。←)
こんなのでも読んでくれて、まだこのシリーズでリベンジしてみてって言って下さる方がいらっしゃれば、今度こそはによによできるものを書きたいなぁ〜。
ではっ(`・ω・´)ゞ
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