いつの間にか暑くなって、長袖を腕まくりしていたあの頃が遠くなってきた。

結局、私はあの助手席に乗る夏を迎えることはなかった。彼が自由に近づいて、別れたのはすぐのことだった。蒸し暑くなってきた、梅雨の始まりだった。

所詮、恋人同士であれど、私と彼は他人でした。同じ季節を二度繰り返しても、そこを越えることができなかったのです。今思い返すと、大人の恋愛ぶった、勘違いだらけの恋愛でした。

それでも、彼が好きでした。
私と背が変わらなくても、ちょっと太って来ても、ヒゲの剃り残しがあっても、いくら約束を忘れられて喧嘩になっても、彼の体温を感じるだけで、幸せを感じていたのです。その声に名前を呼ばれただけで、その瞬間は世界一贅沢な人間になれました。


恋愛感情も時間と共にどんどん薄れて、今ではもうわからないくらいで、それでも、告白されたあの日のことは、きっとずっと忘れないだろうと思います。

彼は確かに、私を好きでいてくれました。
私も、彼が、好きでした。

うん、好きでした。



話題:過去の恋