知らないおじちゃんが捨てていった食べ物を僕はあさるよ
白いビニール袋には
アンパン・あげもの・ほうれん草。
ああハエがたかってるぞ
そこには灰色のいとこが渦巻いてる
あさるなばかたれ!と闇のそこから今日のあさのご挨拶。
やなこった ばーか お前こそやめろー
ちゆちゅーちゅちゆー
ちゆちゅーちゅちゆーちゆちゅーちゅちゆーちゆちゅーちゅちゆーちゆちゅーちゅちゆーちゆちゅーちゅちゆー
うるさいから僕は灰色のいとこをビニール袋に閉じ込めて、彼が青いお空の御使い戦士に放り込まれるのを、
にやにやしてざんぱんを食べてみてました。
知らないおじちゃんのかすかな匂いがしたよ
おじちゃんよくアンパンを置いてくよ。アンパンは灰色のいとこの大好物なのさ
。
僕はのっそり動いて、コンクリートの巣の穴で
灰色のいとこを呼びました。
おーいアンパンだぞっ
灰色のいとこの渦巻く気配はどこにもなく闇の中の2つの炎もなく
固いコンクリートから伝わる冷たい温度が灰色のいとこのぬくもりを奪っていました
ちゆちゅーちゅちゆーちゆちゅーちゅちゆーちゆちゅーちゅちゆーちゆちゅーちゅちゆー
僕はぐるぐるまわりまわり穴の中を走り
アンパンを踏み潰して
灰色のいとこを探す
僕は外が暗く冷たく優しい寂しさを癒やす空気になったことを知り
もしかしたら、灰色のいとこは出かけたからまとうではないかとじっとするのでした
灰色のいとこ。僕だけのいとこ。僕だけの友達。僕のカウンター、僕の唯一の家族。
うとうとすると
きーとどこからか鳴ります
僕の体はぷるぷる震えて失禁しそうになりながら巣にもどると
上で大きな瞳の鋭い爪の怪物がいる
灰色のいとこがいたらなぁ!
朝になると
知らないおじちゃんがビニール袋を持ってきた。
僕は灰色のいとこがいないかなとみるとまたアンパンがありました。
僕はビニール袋の中でアンパンを守り、あの青いお空の御使い戦士のなかへと
灰色のいとこに会いにいくのでした。
ぷるぷるぷるぷるぷるぷる。
ぷるぷるぷるぷる。
「はい。もしもし。こちら全日本コールセンターです」
「すいませんが、私の悩み聴いてくれませんか」
「全日本コールセンター、お悩みサービスに移行します。」
たらたらたらたらたららっらっらっらったらたらたららったらたらたら。
ぴっ。「こちら全日本コールセンター、お悩みサービスです。どうなさいましたか?」
「私、松川夏弥と言います。私、いまスッゴく悩んでいるんです。人間関係?仕事?お金?違います。
違うんです。わからないです。ぜんぶミックスされてて、なんだか言葉では言えないんです。
最近私とても寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい寂しい。悲しいし悲しいしなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでの繰り返しで。でも大丈夫。あと二時間しかないから。あと一時間、もしかしたら三十分待てば簡単だわ。ずっとずっとずっとずっとずっと一人でイヤんなる。なんで私を見てくれないのかわからない。仕返ししてやる。勝ってやる。負けないわ私。だってむかつくじゃない。
私を認めない周りが憎い。認めさせてやる!有り得ない有り得ない有り得ない有り得ない有り得ない。私を一人にするなんて」
ぴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。
「こらこら。通話中なのに勝手に切ってはためだぞ」
「すいません」
「松川くん」
「はい」