話題:創作小説
流血注意。
みどりちゃん→蒼くん。
自分の生死に頓着しないみどりとなんだかんだでほっとけない蒼くん。ちゅーしてるけど甘さなんてない。
重ねられた唇からは血腥い臭いがして思わず顔を顰めた。自分の血やら返り血やらで真っ赤な彼は、僕の姿を見るなり倒れ込むように抱きついて噛み付くように唇を奪うと好き勝手に口腔を蹂躙する。
今更こいつに何されようが驚きはしないが、その性急な行為に息継ぎが出来ない。苦しくなって背中を思いっきり叩いてやればようやく濡れた音を立てて離れた。
「……っ、なんだ急に」
「血ぃ浴びたら気が紛れるかなーって思ったんだけどね、駄目だね。ヤらせて」
「良いよ。――なんて云うと思ったかこの変態!」
蹴り飛ばせば呆気なく崩れ落ちる体。本当にボロボロらしい。仕方なくしゃがみこんで全体を眺めるとその凄惨さに眉が寄る。
「よく生きてるな、お前」
「人間ってね、存外しぶといもんなんだよ」
地面に体を預けながらからからと笑う声に生気はない。なにがそんなに楽しいのか、一生掛かっても僕には理解出来そうも(したくも)ない。
このまま放置しても勝手になんとかするのだろうが、うっかり死なれても困るので溜め息一つ零して一番深そうな腹の傷口に掌を翳す。淡い光と共に削がれた肉が再生されて行く。我ながら、気味の悪い力だ。同じ事でも思ったのかみどりも眉間に皺を寄せていた。
「あー気持ち悪い……」
「悪いな、こんな力で」
「そっちじゃなくて。肉の感覚」
言いながら癒えていく傷口を指される。どういう原理なのか知らないが、大概の傷は紡いでしまえるこれはその感覚もそのまま伝えるらしい。今更ながら知る自分の力に改めて引く。
「どうしてお前はすぐボロ雑巾になる」
「やー、イライラすると体動かしたくなるじゃない? 血ぃ見るとすっきりするじゃない? 痛いの気持ち良いじゃない? それだけだよ」
「理解に苦しむ」
一蹴すればまた楽しそうに笑った。そのまま後頭部に手を回されてぐいと顔を寄せられる。
「離せ」
「ヤらせてくれないならキスだけさせて」
「さっきしただろ」
「足りないの」
言うなり上体を起こしてちうと吸い付かれた。毎度ながら人の意見なんか聞きやしない。治ったら一発殴ると心に決めて、拳を固く握った。