柳を助けに来て、暗い空間に化け物が居た
最初は夏乃さんの姿をしていたけど、皮が剥がれて化け物になった
あれが貘らしい
実際目にすると気持ちが悪い

夏乃さんはこういうのに慣れているらしく
敵を倒したりするのが凄く上手い
ここで変に手を出すよりは、柳を目覚めさせる方がいいと思い、必死に柳に呼び掛ける

貘のキシキシという奇妙な笑い声のなか、何かが地面に落ちる音がした
そちらを向くと、倒れる夏乃さんと、それを踏み潰そうとしている貘の姿

よく見ると夏乃さんの足に何か絡まっている

「夏乃さん!!!」

駆け寄り夏乃さんに向かって下ろされた足をラケットで弾く
踏まれるのを覚悟していたのだろう、夏乃さんが俺を見る

「すまない、助かった…」

小さく言われたその言葉
夏乃さんでも焦るのかと、驚いた

しかし、それもすぐに持ち直し
脚に絡まる黒いものをちぎって立ち上がり、貘を睨みつける

「幸村くん、少し、手伝ってもらっていいか?」
「うん、何をすればいい?」

夏乃さんに続いて立ち上がる
貘は相変わらず奇妙な笑い声をあげている
きっと俺達には何も出来ないと思っているのだろう

「あいつが此処…柳くんを完璧に支配してしまうのも時間の問題だ…だから、柳くんが目覚めるまで足止めを頼む…」

「わかった…」

貘を睨み頷く

「だいたいの奴の弱点は目だ、いいか、目を狙え」
「この距離で…?」
「君の武器はラケットだけじゃないだろう?ボールだってほら、出せる」

そう言った夏乃さんの手元にはテニスボール
いつの間に出したんだろう

「君が願えば出て来るいいな?」
「うん…」

少し不安が残る中、貘に向かう
夏乃さんは貘の足や目を撃つ

まず、ボールが出るのか…
ボール、ボール…と、ボールをイメージする
すると手の平にボールが現れた
俺にも出せる!!

夏乃さんと貘の動きを見る

こういうゲーム、前に丸井がしてたな…
急所だけじゃなくて…足とか鼻を攻撃して…
怯んだ所で…確実に…

バシュンッ

『ぐぁ゙あ゙あ゙ああああっ!!!』

貘の目にボールが当たる
叫び声により空間が揺れる
目から黒い液体が流れ出し、動く度にそれが飛び散る

『人間が…許さん…許さん!!!!!』

怒りに満ちた声
貘が暴れ出し、地面が揺れる

「う、わ…っ」
「真田くん!!まだ起きないのか!?」
「真田、早くしろ!一杯気合いをいれてやれ!」

生温い起こし方じゃ起きないなら、少し乱暴だがいいだろう

「む、わかった!蓮二!!起きんかー!!!」

バチン!!

真田の叫び声と、殴る音が響く

どれほどの強さで殴ったのか…