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途中で挫折

「愚かなレプリカルーク」

背筋がぞくりと震えるほどの冷たい声音に、思わず自らの耳を疑った。
聞き間違いかと背後に立つ彼へと顔を向けようとするが、激しい頭痛に襲われて思わず頭を抱え蹲る。


痛みに思考が埋め尽くされていく。


光の粒子が掲げた指の先に集まってくる。
それは徐々に勢いを増していき、恐怖に目を見開いた彼へと襲いかかる。


『光に食われる』


恐怖に、のどの奥からひきつった悲鳴が漏れた。

体の奥底から、自分でも知らない何かがせきを切ったかのように溢れ出る。


(逃げなくては)


頭ではわかっていても体は動いてはくれなかった。

光は、どんどん自分を飲み込んでいく。


その間も容赦なく襲いくる頭痛と吐き気に、今すぐに崩れ落ちて心地よい闇に身を任せてしまいたかったけれど、背後でしっかりと自分の支える彼の人は、それを決して許してはくれなかった。


「ヴァン…せん…せ…」


誰よりも信じた大好きな彼に、かぼそい声で救いを求める。

そうすれば彼はきっと、いつものようにおれを助けてくれる。
そしてまたあの大きな手で自分を撫で、優しく微笑むのだ。

『どうした、ルーク』と。



しかし視界の端に見えた彼の横顔は


どこまでも冷たく



そして穏やかだった。



「用済みだ、ルーク」



(嗚呼)



痛みに埋め尽くされた、靄がかった思考の片隅で、ルークは漠然と思った



(せんせいはもう、)




(――――おれに、けんをおしえてはくれないんだな)



「ルーク……!!!」




最後に見たのは、音をたてて崩れていくアクゼリュスの姿と

鮮やかな深紅の 光 だった。





さようなら、俺の世界。

連載予定だったもの

「生きている…?」


目を開けると、真っ青な青空が飛び込んできた
空をせわしなく飛び回るあれは鴎だろうか。だとしたら海が近いのだろう
生暖かい風と共に、かすかな塩の香りがした。

「何故――――…」

何故俺は生きている?

言葉にしたはずのそれは酷くかすれていて、不快感に眉を寄せた。
起き上がろうと腕に力を入れてみるが、しかし体はまるで鉛のように重く、思うように動かない体は持ち上げようにもわずかに身じろいだだけだった。
何度か力を入れてみるが、やがて諦めたようにひとつ息を吐くと、何とはなしに空を見上げた。

どこまでもどこまでも澄んだ、晴天の空だった。


(長い、長い夢を、見ていた気がする)


思えばこの七年、まるで怒涛のように過ぎて行った。

尊敬していた師に突然裏切られ、家と家族と名前をも奪われ
そうしていつしか血を浴びることを覚え、付いた名は鮮血。昔、炎みたいで美しいと幼馴染の彼女が微笑んでくれたその髪色と同じ二つ名。

やがて月日は流れ、家族や幼馴染と再会し憎むべきレプリカ野朗と出会った。
かつては師と仰いだ彼を止めるために手を組み、共に戦い、そして...


「俺は、死んだ…。」

自由の利かない利き腕をなんとか持ち上げ、その掌を見つめる。
ふと、その掌に何処か違和感を感じ、眉を寄せる。

「…?何だ…?」

気のせいだろうか…?何故だか疲れているようだし、きっとそうなのだろう。
そう自分に言い聞かすも、視界の端で捕らえたそれに、アッシュは体の疲れも忘れ、思わず叫んでいた。

「…ッ!!!!どういうことだ!!?」

自分より、わずかに色素の薄いその髪。
毛先がかすかに金色がかったそれに、アッシュの目は驚愕に見開かれた。

「何故だ!!!奪われるのは…消えるのは…」

俺じゃなかったのか…!!

アッシュは強く地面に拳を叩きつけた。
赤い血がじわりと滲み出たが、痛みは感じない。何度も何度も打ちつける。

――アッシュ…――

突如として脳内に響いた声に、アッシュはハッと我にかえる。
目を閉じ、全身のフォンスロットに意識を集中させると、おぼろげだったその声は、しだいにはっきりとしてきた。

旅の途中、幾度となく感じた感覚。
あいつと自分を繋いでいた、完全同位体の繋がり。

けれどもそれは、アッシュの望んでいた声とは全く違うものだった。

――さすがに音譜帯からでは声が届きにくいようだ…。アッシュ、久しぶりだな。――

「ローレライ…か?」

確かめるように問うと、ローレライは「いかにも」と短く肯定の言葉を返す。

――少々動きづらいだろうが、血中の音素が安定してないだけだ。じきに慣れるであろう――

自由に動かない身体に内心毒づくアッシュの心中を察してか、ローレライが落ち着いた口調で語りかける。
しかし今のアッシュにとってはどうでもいいことでしかなく。アッシュは胸をよぎる嫌な予感に駆られるがままにローレライに向かって叫んだ。

「そんなことはどうでもいい!!!それよりあいつは…ルークは何処だッ!!!」

ルーク

自分が考えた以上にさらりと出たその名前に、アッシュは内心驚いていた。
旅の途中、一度たりとてまともに口にすることのできなかった…自分にとっては口にするのも忌々しい名であったのに。

――ルークは…――

ローレライは躊躇うように言いよどむ。
それを見たアッシュの胸中にもやもやとしたものがよぎった。

まただ。また…。

(俺は、やつを憎んでいるはずなのに…)

自分でもわけのわからない感情に、アッシュは戸惑う。
けれどぐるぐると渦巻く自分の思考から目を背けるかのように、アッシュはローレライに先を促した。

ローレライは暗い口調で、真実を告げる。

――ルークは…もういない。――

あぁ、嫌な予感とはこのことだったのか、と頭の隅で呆然と思う。

――アッシュ、お前は勘違いをしている。
大爆発によって消えるのは、被験者ではない。…レプリカである、ルークだ。――

どうしようもない喪失感が体を駆け巡る。



『戻らない時に悲しみは募るばかり』








ーーーーーーーー



結局ボツったもの。サイトにあげる気はないけどもったいないのでこっちに。

リカエル

「好きだ」

はじめに驚き、次に戸惑い
そして浮かんできたのは

紛れもない、喜びの衝動




『堕ちようとも、どこまでも』




かわすことは簡単だった。
ただ一言、冗談やろ?と笑いかければいいだけなのだから。
彼は何も言わないだろう。ただいつものような苦笑を浮かべて、肩を竦めるだけ。
あとにはきっと、何も変わらない。いつもの二人がいるだけ。

けれどエルマーナはそれをやらなかった。否、できなかった。

ただ吸い込まれるように彼の瞳に見入り、せわしく回る思考の中で、手探りで言葉を探す。
男の瞳が、言葉が、纏う雰囲気が、すべてが彼が真剣なのだということを示している。

それはまるで戦闘時のかの姿のように、エルマーナを捉えて逃がさない。


「…友達として、娘として、………女と、して」


いつの間にか止めていた息を吐き出したのは、それから随分と時間が経ったかのように感じた一秒後のこと。
まっすぐに射抜いてくる視線をすべて受け止めて、エルマーナは言葉を紡ぐ。


「おっちゃんの好きは、どれなん?」


答えなど、わかりきっている問いを投げかける。
彼はそれをどう受け取ったのか、僅かな困惑の色を滲ませながらも口を開く。
鋭かったはずの眼光が、途端に勢いをなくしていく。「…お前は、どうなんだ」


(…ちゃうねん。)


まるでそれに比例しているかのように、途端に沈んでいく心を鼓舞する。
伸ばした腕で顔を覆い、こみ上げてくるものを押し込めようとでもするかのように、空を仰いだ。


(…そんな顔、させたいんやない)


「すき。」



確かにそう紡いだはずなのに、

喉元からしぼり出たのは何とも情けない掠れ声。
彼に届く前に消えてしまいそうな程、脆い言葉。


「…ラルモ。」

「ちょぉ待ってぇな…頭ん中ごちゃごちゃやん…」

「そうか」

「そもそもいきなりすぎるリカルドが悪いんやで。」

「それはすまなかったな」

「全然悪い思とらんやろ、自分…。」


ただ淡々と返される言葉が妙におかしくて、思わず笑みを零した。
向けた視線の先には、ほんの少しだけ誇らしげな男の微笑があって、そのことにほっと胸を撫で下ろす。

あのつぶやきが、彼の耳まで届いたのかどうかはわからないのだけれども



「お前の好きは、どれだ?」


(…なんや、聞こえとるんやん)


答えなどわかりきった意地の悪い問いを投げかけてくる男に、エルマーナは堪らず小さく噴き出した。



友人として、父親として、男として


「全部、って言うたらどうする?」

「ずいぶんと欲張りだな。」

「せやかて全部本物やもん。どれかひとつなんて選べへんって」


そう結論づけるエルマーナに、リカルドは苦笑を零す。全くお前は…と零された呟きにすら確かな愛しさを感じて、少女ははにかんだような笑みを浮かべた。
遠慮がちに回された腕に応えるように、自分より幾分高い位置にある首に腕を回す。
そうするといつもよりほんの少しだけ早い彼の鼓動が感じられて、妙に安堵をおぼえる。

少し視線をあげればほんのりと染まった頬に、いつもの仏頂面。
赤い耳元に唇を寄せ、エルマーナはそっと囁いた。



「おっちゃん、これ犯罪やで?」



答えなんてわかりきっていたのだけれど。







『堕ちようとも、どこまでも』







開き直るしかないのだから

とにかく書くしかないと思った

ある月の奇麗な夜、私は彼に聞きました。



「私はいったい、『何』なのでしょうね」

それは誰に聞くでもなく、こぼれた言葉でした。

大好きだったあの人が死んだ時、涙すら流せなかった私は、誰ですか。
何万という人を殺したあの時、何も感じなかった私は、誰ですか。

そして今、大切な彼に、絶望の選択肢を突きつけた私は、何 ですか


答えなど、はじめから期待していなかったのだけれど。


だけど彼は答えました。
そんな私を見て、笑いました。

『なぁジェイド、過去を振り返ることができるのは人間だけなんだぜ』

ジェイドは人間だろ、と

彼は笑いました。

笑ったり、怒ったり、悔やんだり
そんなことができるのは、人間だけなのだ、と

私を見て彼は笑いました。



だから私は、聞いたのです。


『ならば貴方は、何なのですか』


悲しみの鎖を断ち切れずに
多くの罪を悔みながら

その身にたくさんの傷を負って尚、私たちのために笑い続ける貴方は、何なのですか。




けれども彼は、答えてはくれませんでした。






『答えなど、はじめから期待していなかったのだけれど――ー…』

世界の終わりの日

別に、何か言葉が欲しかったわけじゃないんだ。


大丈夫だとか、きっと何とかなるからとか
根拠もなくあると信じた未来への、慰めの言葉が欲しかったわけじゃなくて。
それでも気付けば全身で彼を感じようと、彼の言葉を聞きのがさまいと、己の中にあるはずの彼を探していたりして。

結局何がしたいのか、なんて時々自分でもわからなくなる。
ただ「その時」が近付くにつれて、わけもわからない不安にかられるがままに、必死に彼を追い求める自分がいて、
夢に浮かぶ彼の面影にすら、無駄だとわかっていて手を伸ばす。


いつもそれは彼に届く寸前に、水面に広がる波紋のように散ってしまうのだけれども


(嗚呼)

言葉が欲しかったわけじゃないんだ

(声が聞きたいだけなのに、)



ただ側に、感じていたくて




独りは、怖いんだ









突発物。携帯に埋もれてた没文。
これは…最終決戦直前のあするくイメージかな?

最終的にはやっぱり、二人にはお互いしかいないんだよね。
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