なぜ敵船の方がここに居るのだろう、と不思議に思っている様子のブルック。
どうりでさっきから少し騒がしいと思った、とため息をつくナミ。
あら、この人達も来たのね、といった様子で笑っているのはロビン。
フランキーは、ルフィやチョッパーやウソップと一緒になってお菓子サニー号に目を輝かせている。
「おい、ルフィ!」
そこにまた、別の声が聞こえた。サンジの声だ。
「何だサンジ!メシの時間には少し早いぞ?」
「今日は特別に、船長だけのおやつフルコースを準備した。来い」
「マジでっ!?いつもはナミとロビンばっかひいきするのに!」
「…今日は、特別扱いはお前だけだ」
サンジの熱烈な告白…と、ルフィ本人は理解していないようだが。
サンジの料理の腕はルフィが一番よく知っている。そんなサンジがルフィだけ『特別』の『おやつフルコース』を振る舞うというのだ。
ルフィの意識は完全にサンジ(のもてなし)に向いた。
「あ…」
「ちょっ、」
「待て!」
というローやキッドやクロコダイルを置いて、ルフィはさっさとサンジの方に走っていってしまった。
「せっかくだけど、うちの船長との面会時間は終わりのようよ?」
とロビンが告げると、3人の(招かれざる)客は、肩を落として帰っていったのだった。
*
ゾロは陰からコッソリ、サンジにもてなされるルフィを見ていた。
サンジもこのバレンタイン行事の事をあらかじめ知っていたのか、と悔しく思う。
でなければ物資のないこの海の上、この量の、この質の準備ができるはずもないのだ。
「ルフィは、今日は甘いモンたくさん貰っただろう?」
「うん!あの3人の前には、ゾロにチョコクッキーももらった」
「…あぁ、それは知ってる。何日前だったか、キッチンの器具の配置が変わってて不思議に思って調査したら、あのマリモがロビンさんに教わりながら菓子の練習してたんだ」
「そうだったのか!ゾロの奴わざわざ練習したのか!」
バラすなよ、とサンジに怒りを覚えつつ、陰の努力がルフィにバレた恥ずかしさに赤面するゾロである。
「ゾロもだけど、あの3人も…サンジも。なんで今日はおれにいっぱい菓子くれるんだ?それもチョコばっかり」
首をかしげたルフィに、サンジは笑うだけで、ルフィの問いに答える事はしなかった。
続く