つづくことば213
次の言葉の続きを考えましょう。
詩や小説のタイトルにするのも可
*空は冷たくて
*冬の気配は
*君といれば
*そうだね。君は
*僕の帽子と
*愛しているよ
一月の空は冷たくて、濁った色も降りてくる温度もすべてが鈍色に僕を沈めていく。
日を増すごとに大きくなっていた冬の気配は、今は莫大な存在感でそこかしこに居座っている。
例えば君と歩く道の端、早朝の土には霜がおりていて、そこを踏むたびにさくさくと音を立てた。
「楽しい?」
わざと霜を踏んで歩く彼女に僕がそう聞くと、彼女は無表情のまま小さく頷いた。
時刻は朝の六時半。まだ辺りは薄暗くて、周りを見ても人の気配はない。かろうじて舗装されている位の、田舎の農道。ここは僕らの通学路だ。
「寒……」
霜を踏むのに飽きたらしい彼女は、道の真ん中、といってもそんなに広くはないけれど、に戻ってきて僕の横にくっついた。
触れた場所がじんわりと温い。
「カイロ貼ってる?」
「貼ってないよ」
「そう」
熱は彼女の持つ天然の温かさだ。それをもっと欲しがるように、僕は彼女の手を握る。
「つめた」
「ごめん」
「いいよ」
君といれば、この寒さもあまり怖くはないかも、なんて。
「寒い……」
ただの僕の戯言みたいだ。
「なんでこんなに学校遠いんだろ」
「何、いまさら」
「そうだけど」
町にひとつしかない中学校に通うには、町の外れにある家から片道一時間半がかかる。隣同士の幼なじみ、彼女とこうしてくっつきながら寒さに耐える登校ももう三年目だ。
「来年はさ」
彼女の声が少し小さくなる。
「どうなるんだろ」
来年の冬は僕らは高校生になっている。学校が変われば通学路も変わるし、環境が変われば関係も変わる。
それは君だけの不安じゃない。だけど。
「べつにどうでもいいけどね」
そうだね。君は感情を隠すのが上手いんだ。できる限り精一杯に顔を背けて、あべこべ上手。
でも、僕はそんなに上手にできないからさ。
「寂しいよ」
「は?」
君がこっちを向く。
目が合うのと同時に、柔らかく微笑んでみた。
「たぶん、一緒だけど」
毎年繰り返す冬の朝の僕らの時間。それがなくなるのは、僕にとっては寂しくてしょうがない。
君の隣で感じてこその、僕の冬だから。
「……どこ受けんの?」
「内緒」
「なんで!」
君にもらった僕の帽子と、僕があげた白いマフラー。大事にしているということは、たぶん僕らは似た者同士なんだだ。
愛しているよ、そう伝えるには僕らはまだまだ幼い。
もしその言葉を言うのに相応しいくらいの大人になったときも、変わらず僕らの冬を隣で感じていられたらいいな、なんて。
そんな気持ちを溶かした吐息が、白く染まって空気に解けた。
END
お疲れさまでした。
感想などありましたら…
*素敵な言葉をありがとうございました!こんなげろあまにしてしまってすいません!
つづくことば213
※作者:さかなさん
まとめサイト有マス。
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