話題:ペットの死について



私が中学生だった時、小さい頃からまるで兄妹のように一緒に育ってきた猫のラルが死にました。
17歳での大往生。

ラルは気が強くて、でも優しい、とても綺麗な猫でした。



ラルが死んでしまった時、私は悲しくて悲しくて涙がとまらなかった。
なんだか体の一部がなくなってしまったようで、心に穴が空いてしまったようで。



でも、私以上にラルの死を悲しんでいる人がいました。
それは私のおばあちゃん。

おばあちゃんは足が不自由だったから、あまり外出をしないでいつも家にいたんだけど、そんなおばあちゃんの傍にはいつもラルがいました。

おばあちゃんは毎日「ラルはええ子やけんなぁ。ずっとばあちゃん所おってなぁ」って、シワシワな手でラルをなでては、ニコニコ目を細くして笑っていました。



ラルが死んでしばらく経った時、私の友達が「虹の橋」というお話を教えてくれました。

私はその話を、すぐにおばあちゃんに話しました。






『虹の橋』


天国のほんの少し手前に「虹の橋」と呼ばれる場所がありました。
この地上にいる誰かと愛し合っていた動物たちは死ぬと『虹の橋』に行くのです。

そこには草地や丘があって、彼らはみんなで走り回って遊んでいます。たっぷりの食べ物と水、それに日の光に恵まれて、暖かく快適に暮らしているのです。

そしてそこでは、病気だった子も年老いていた子も、みんな元気を取り戻して、傷ついていたり不自由な体になっていた子も、元のからだを取り戻すのです。まるで過ぎた日の夢のように。



みんな幸せで満ち足りているけれど、ひとつだけ不満がありました。
それは、自分にとっての特別な誰かさん、残してきてしまった誰かさんが、ここにはいないということでした。



動物たちはいつもみんな一緒に走り回って遊んでいるけれど、ある日その中の一匹が突然立ち止まって、遠くを見つめました。
その瞳はきらきら輝いて、からだは喜びに小刻みに震え始めて…

突然その子はみんなから離れて、緑の草の上を走り始めます。速く、それは速く飛ぶように。



愛する人、あなたが、遠く向こうの方から歩いて来るのを見つけたからです。

そう、
最愛の友が亡き後も懸命に生き続け、今人生を終えたあなたが虹の橋へ、友の元へとやって来たのです。



ふたりは、再会の喜びに固く抱き合って…そしてもう二度と離れたりすることはありません。

あなたは信頼にあふれる友の瞳をもう一度のぞき込みます。
あなたの人生から長い間失われていたけれど、その心からは一日たりとも消えたことのなかったその瞳を。

それからあなたたちは一緒に「虹の橋」を渡って行くのです。










おばあちゃんは、黙って涙を流しながらこの話を聞いていました。

そして、いつかまた虹の橋でラルに会えることを楽しみにしていようと、にっこり目を細くして笑いました。








そのおばあちゃんは昨年の11月に亡くなりました。

きっと今頃虹の橋のむこうで、また昔みたいにラルと一緒に幸せに暮らしているんだと思います。