「みんなで花見をいたしましょう!」
いつものように元気に、いつものように唐突に兼続がそういった。
言ったそばからわさわさと準備をしている。相変わらずだが、忙しくてもとても楽しそうなのは人徳だろう。
春のあたたかさが似合う武将だとふいに思った。
我知らず笑んでいたのだろうか、こちらをみた兼続にたずねられた。
「何かおかしいのですか、姫様?」
「兼続には春が似合うなと思ったのです」
「春、ですか?」
「はい、草木が芽吹き、色づく季節がお似合いになると」
「うれしいお言葉ですな!。確かに小生は春が好きです。あたたかくなってくると心も浮き立ちます。ちなみに殿にお似合いな季節はなんだと思われますか?」
「謙信さまは冬でしょうか・・・花よりも雪の白さの方がお似合いに見えます。」
「なんだかやけるね。私も花が似合うほうがいいなぁ、姫」気がつけば、すぐ後ろに謙信さまが立っていた。
「いえ、そんな失礼な意味は・・・」としどろもどろになる私に、兼続が満面の笑みでもっていいそえる。
「殿は殿御自身が花のように美しくあられますから!。それに冬には戦がありません!。小生も殿には冬がお似合いかと思いますぞ!」と。
「戦」という言葉に体が反応した。そうなのだ、雪がとければ戦が始まる。この平穏もいつまで続くのか・・・
私はきっとけわしい顔をしていたのだろう。
伏せていた目線を上げると謙信さまと目があった。少し眉根をよせた顔をやわらかい笑みに変えてこうおっしゃる。
「私が雪なら、そうだね。姫には雪椿にでもなってもらおうかな。寒さの中であでやかに咲く美しい花だからね。」
雪椿・・・冬の白さの中に真っ赤にもえる花。 椿の色が血の色にかさなってみえた・・・
謙信さまはなでるように髪にふれながら、言葉をつづけた。
「 吾妹子(わぎもこ)を 早見浜風 大和なる 吾待つ椿 吹かざるなゆめ」
( 「我が妻を早く見たい、松が生い茂る浜を吹きぬける風よ、大和にいて私を待っている椿の所まで吹いて行ってくれ」)
「昔の皇子も奥さんを椿になぞらえたんだよ。姫もただそうやって美しく咲きながら待っていてくれたらいい。私は必ず君のところに帰ってくるよ。」そういって、あでやかに、やわらかに、ほほえまれた。
「・・・謙信さま・・・」目頭が熱くなった。
「愛ですな〜!」と兼続がカラカラと笑った。
冬が終わる。戦いの季節がやってくる。願わくば、最後の戦いでありますよう。
皆が無事でありますよう。願いながら私たちは春風にふかれた。
越後投稿会のために書きました。物語を書いたのなんて、小学生以来だ。だって参加賞がほしくって(*^^*)。兼続の好きな季節は秋だってのは投稿後に知りました・・・米ができるからか(`・ω´・)。
今日参加賞が配信でした。
三人衆の待ち受け、かっこいい〜O(≧▽≦)O。いやね、はずかしくて設定できんけどね。
ちなみにこの越後の春、姫がちょっと病んでるバージョンも投稿してしまった
。はまりすぎです、私。