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さよなら、君のいない世界【歌刀戦記】

逢坂さんは
1.土砂降りの雨と僕の心
2.後悔してももう遅い
3.さよなら、君のいない世界
4.この想いは時を越え
の中で一番多かったお題を書いてください。
#お題アンケ
t.co
で決まったお題です。キャラは歌刀戦記のうちの子です。

*・゜゜*:.。..。.*:.。. .。.・゜゜・*

さくり、さくりと音を立て、森の中を歩く。動物の気配も、人の気配もしない。今の僕にとっては、木の葉が擦れる音だけでも煩く思える。

「……、」

声帯は震えるも、音にはならない。声が出ない。歌えない。
僕にはもう、価値がない。

「……、」

あなたの事を呼ぶ。音もなく、静かに。届くわけもない名前を呼ぶ。

「…………エーダ」

あなたは、死んでしまった。この世界に、あなたはいない。
あなたのいない世界に、生きる意味なんてない。
鞄から取り出した短剣を握る。そして、喉へと切っ先を向け。

「やめろ!」

突き刺そうとした手を、止める手があった。月白の瞳が、揺れている。

「……」

唇が震える。何を言っていいかもわからない。困ったように笑う彼は、手を離して頭を掻いた。彼の手は、片方しかなかった。

「……あぁ、これか。戦争で無くしたんだよ。腕だけじゃない。大切なモノを、なくしたんだ……」

彼は僕の手から短剣を取ると、自らの首に添えた。僕は驚いて、彼の手首を捕まえた。

「……大丈夫だよ。俺だってそのつもりで来てたけどさ、死のうとするお前を見て……ダメだと思った」

彼の瞳が、柔らかく細められる。きっと、彼は優しい軍人だったのだろう。そして、彼と組んだウタヨミは。

「……」

唇を僅かに開く。言葉は、出ない。

歌を無くしたウタヨミだ。そして、愛する人を失った世界で僕は生きる価値がない。
それでも、この人は僕を生かした。生かした責任は、とってもらおう。

「……、」

「どうした?」

「あなたに、ついて行って、いい?」

さよなら、君のいない世界。
こんにちは、あなたのいる世界。

【腐向け?】成長ホワイトリリー【赤速赤/18】

成長ホワイトリリー


赤のタイ、ブラウンのベスト、グレー地にストライプのスラックス。

「よし」

皺一つなく完璧とも言える服装に、赤城は僅かに目を細めた。

「どうした?」

姿見から振り返ると、組んだ脚に頬杖をつく赤城が見えた。その表情は、どこか寂しげで。

「……いや。お前にも置いて行かれたと思っただけだ」

ふむ、と速水は顎に手を添える。
速水は今回、より強くなれる道筋を得た。新しい、水の力を得た。
それが、どうやら赤城の気に障ったらしい。弟子にせよ、友人にせよ、自分より先に、上へと辿り着く道筋を持っている。その事が引っかかるのだろう。
速水からすれば、ようやく後輩に追いついた、位の感情だったのだが。

「そうか」

速水はそう言うと、ローファーの爪先を赤城の方へ向ける。そして、深く被っていたフードを払いのけ、量の多い銀色の髪をくしゃくしゃと撫でた。

「何しやがる……!」

手を払いのけ、敵意を持って睨み付けるが、その先の速水は笑っていた。普段の不機嫌そうな表情ではなく、唇を吊り上げ、どこか自信すら覗かせる笑みで赤城を見ている。

「そんなに俺を好いてくれていたとはな」

「……!」

僅かに目を見開き、フードを被り直してそっぽを向いてしまう。

「安心しろ。お前が望むなら、いつだってお前の相方になってやる。互いに高め合えるなら、お前とがいい」

赤城は、大きく息を吐く。深く被ったフードと顔を埋めたマフラーで表情は見えない。が。

「……大人になりやがって」

小さく呟いた言葉にどこか照れが混じっていた事を、速水は気のせいにはしなかった。

【腐向け】仄苦ショコラキス【赤速/18】

ベッドサイドのチェストから、しなやかな指が形のいい唇へと向かう。暴食の魔女から貰ったのだという、ハート型のチョコレート。

「美味いのか」

指先についたココアパウダーを舐めとる顔は、年相応の少年の顔。

「俺は好きだが」

「そうか」

さらりと返事をし、赤城はチョコレートを一つ口へと放り込んだ。

「こら、勝手に食べるな」

話を聞いているのかいないのか、思いの外長い睫毛を伏せて赤城はココアパウダーを舐めとる。

(思ったより甘いな……)

ほろ苦いココアパウダーの下には、舌触りの良いチョコレート。じわじわと口の中で溶けていき、広がる甘さに赤城は眉をひそめた。

「お前には甘かっただろう」

「ああ、コーヒーが欲しくなる」

甘い溜め息を吐く赤城の脇から、速水はチョコレートへと手を伸ばす。
それを見て、赤城は小さく声を上げた。

「ああ、そうだな」

チョコレートを入れた直後の唇に、赤城は己の唇を重ねた。

「ん……っ!」

身体を寄せ、頭を捕らえ。舌でこじ開けた唇から歯列をなぞり、先端同士を擦り合わせる。

「んっ、んんぅ……」

ご丁寧に耳を塞いだことにより、頭蓋の中でくちゅくちゅと互いの粘膜が擦れる音が響く。
じれていく速水は自ら溶けかけたチョコレートの乗る舌を絡め、赤城の背に腕を回し抱き寄せる。
互いの口の中で溶けていくチョコレート。形を失った後も残る甘みを奪い合うように、あるいは、そんなものは意識の外に投げ捨てて互いの舌を、唾液を、熱を求めるように。

「っは……」

ちゅ、と小さな音を立てて、速水から離れた赤城は濡れた舌で唇を舐めた。

「こうすれば、食えるな」

捕食者の笑みを見せる赤城に、速水は熱の籠もった息を吐いた。

「……馬鹿者……ッ!」

【腐向け】bitter game【赤速/18】




「赤城」

名前を呼ばれ振り向くと、赤い箱を持った速水がこちらを向いていた。

「ゲームをしよう」

封を切った速水は一本を取り出して唇に咥え、こちらに突き出して見せた。
その姿は、知っている。いわゆる、あれだ。咥えた反対端から食べ進めていくあれだろう。

「ああ、やってやる」

チョコレートのかかっていない側を口に咥える。
長い睫毛は伏せられ、薄い唇に誘われるように食べ進めていく。サクサクと噛んでいく音だけが、ホテルの部屋に響く。
速水の整った顔が徐々に近付く。呼吸がかかる位まで近付いた所で、ゆっくりと瞼が上げられる。そして、小さく唇を歪めた。

「……!!」

心臓を掴む笑みだ。それだけで、俺は支配されてしまう。
思わず力の入った歯は、プレッツェルを折ってしまった。

「お前の負けだな、龍也」

残りを食べ、唇を舐めて指先で拭う。

「誘っておいて、とんだ卑劣さだな」

わかっている癖に。俺がお前の微笑み一つで屈服させられる事を。視線一つで容易に操れる事を。
策を弄する事を嫌う癖に、なんて事をしやがる。

「簡単に触れることを許すと思ったのか?」

くすくすと小さく笑う主に、熱を抱いた息を吐く。

「……わかった、俺の負けだ」

満足げな笑みを見せる唇に、許可を待たずに噛みついた。

隷従クオリフィケーション(赤速/18)

隷従クオリフィケーション(赤速)


整えられた爪を見る。繊細な飾りの施された、銀の鑢で爪を研く。ベッドの端で脚を組んで、長い睫毛が瞳に陰る。
くれてやったリップは、使ってくれているらしい。仄赤く艶めく唇が指先に近付き、ふっと息を吐き屑を飛ばす。
それだけの所作。それだけの所作であるのに、何故俺は心臓を掴まれたように捕らわれているのだろうか。

「何を見ている?」

「……いや?」

視線だけをこちらに寄越し、速水はまた爪弄りに戻る。神経質なまでの作業だ。だが、それが美しい。
自然と、奴の足元に座る。床から見上げる表情は、やはり美しい。
速水悠斗は繊細な男だ。と、思う。造形の繊細さもあるが、精神の繊細さも美しいと思う。
電車の中で見かけた時、美しい男だと思った。幼さを残した横顔に、細く整えられた眉。寄せられた眉間、不機嫌そうな唇。シャツから覗く鍛えられた腕、吊革を持つしなやかな手に嵌まる整えられた爪。完璧な男だと思った。
夢世界で見えた時、その心の繊細さを見た。己の正義を持ちながら、暴力を伴う青春をしてみたいという願望。
きっとこいつは、味を教えれば堕ちてくれる。そう思った。
だから俺は、ベッドの中でとことん甘やかした。したいと願ったことは何でもしてやったし、俺が気持ちいいと思う事をたくさんしてやった。望むことは叶えてやり、欲しがるものは与えてやった。

「速水、俺はお前を好いている」

爪を研く手が止まる。
組んでいた脚を両手で包み込み、骨の間をなぞるように触れる。ぴくりと丸まる指先にそっと唇を寄せ、上目遣いで笑う。

「俺を支配してくれ、悠斗」

速水は、表情を変えなかった。興奮したような唇を引き結ぶ表情でも、侮蔑したような眉をひそめる表情でもなかった。

「支配してくれ、か……」

爪先をついと浮かせ、俺の顎を持ち上げる。その表情は、穏やかで優しげな、微笑みだった。

「口調がなっていないな」

ぞっとした。背筋に衝撃が走った。心臓を奪われた。鼓動が痛い。呼吸が荒れる。脳が、指先が冷えていく。それなのに、俺の情欲は首を擡げている。

「主人には相応の言葉を使うべきだろう? それとも、使うべき言葉を知らないか?」

親指が器用に唇を撫でる。思わず舌を出そうとして、顎を持ち上げられる。

「言ってみろ、その唇で。それがお前の望みだったのだろう?」

脳を溶かす熱に、視界が滲む。興奮に、唇の端がつり上がる。
才能があるとは思ったが、ここまでとは思わなかった。俺が今まで出会った中で、最高の主人だ。

「俺を、支配して下さい……」

満足げに笑う顔が、最高に美しい。
さすが、俺のマジェスティだ。
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