2015/6/21
Sun
23:29
亡き父よ
話題:創作小説
僕がまだ軍に入って、それからバルトの下で生活するようになってから間もなかった頃。
遊びに来ていたヘンリーと共に街で特に目的もなくぶらついていた。
ふと、目に入った「父の日」の言葉。
ああ、そうか。今日は父の日だったんだ。
口にしなくてもヘンリーは気づいたらしく偶然、本当に偶然見つけた花屋を指差して「行こう」と言った。
あの日から3年。
世間を騒がせた無差別殺人事件はついこの間のような気がしていたのに。
巻き込まれて死んだ父も母も昔の存在になっていくのかと思うと、少し変な気分になる。
僕の心はまだあの日のままなのに、時間だけは無言で過ぎ去り止まらない。
白い薔薇で花輪を作ってもらって僕たちは墓地へと向かった。
夫婦が仲良く眠る墓石に僕はそっと花輪をかけた。
空を仰ぎ見ると少し強い風が僕の背中を押す。
「ヘンリー」
「なに?」
「風が、気持ちいいね」
「うん……そうだね」
目を閉じればまだあの光景を思い出せる。
僕はきっと、この先ずっと許さないんだと思う。
負の信条を。
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