午前1時、
どうしても会いたくなって、会いに来てくださいと言ってしまったわたし。
彼は会いにきてくれたのです。
ふたりでお酒を飲んで、笑ってお話をして、一緒に寝たのです。
ゆうさんの匂いがして、ゆうさんの音が聞こえて、離れたくないとおもったのです。
何度も強く抱きしめて、
「ああ、ゆうさんがいる」と何度も何度も確認したのです。
ゆうさんの胸に耳を当てて、ゆうさんの音を聞くのがすき。
毎日のようにあってるのに、と抱きしめてくれるゆうさんがすき。
それはもう、どうしようもないほど会いたかったけれど
ほんとうに会いにきてくれるなんておもってもみなかったから
わたしは終始へらへらしてました。
次の日も朝から仕事なのに、一緒にいてくれたゆうさん。
ねえ、やっぱりすきだよ。
だいすきだよ。
こんなの、よくないのわかってる。
都合のいいおんなだと思われても、仕方ないとおもってる。
それでもこの時間が、一緒にいられる時間がわたしにはどうしようもなくしあわせで。
だいすきな彼女は言ったの。
いつぽいって捨てられるかわからないじゃない
そんなのしあわせなんかじゃない
惚れたもん負け、なんて言葉に逃げてる
痛いくらいに、
もうそれはそれは痛すぎるぐらいに胸に刺さった。
それでわたしは、離れられないよ。
彼がわたしを、わたしだけを選んで特別にしてくれることなんてもう一生ないことなんてわかってるし
彼女のいう通り、ほんとうにいつぽいって捨てられちゃうかもわからないし。
しあわせだとおもうことも、間違っているのかもしれない。
それでも、彼といられる時間があるのならわたしは手放したくないの。
わたしからは、手放せないよ。
ひとりの夜はきらい
いろんなこと、おもいだすから
やっぱりこの部屋に彼を招いたのはまちがいだった。
わかっていたのに
彼がいないこの部屋にひとりでいればいるほど、彼を探して求めて、さみしくなってしまうこと。
だから躊躇した、のに。
彼との時間を選んだのはあたしで。
きっと彼の中では、もう、なかったことになっているのだろうとおもう。
彼にとってあたしの気持ちとか想いとか、そういうのってきっとどうでもよくて。
それがわかっていたから、いままで口にしなかった。伝えなかった。
それでもどうしようもなくなってしまったから、知ってほしくなったから、心の奥底でもいいからあたしに想われているんだってことわかっていてほしかったから、初めて伝えたのだけれど。
「離れたくない」と
「ずっと一緒にいたいの」と
「前に進みたい」と
「ずるいのはあたしじゃない」と。
彼にはどーでもいいことだって、痛いくらいわかった上で。
彼がこれ以上の関係を望んでいないことも、わかったうえで。
いや、少しは期待していたのかもしれない。
ううん、期待してた。
もしかしたら、あたしを選んでくれるんじゃないかって。
もちろん選んでくれるわけもなかったのだけれど。
「お前が笑っていてくれるならそれがいちばん」
「お前が悲しむならもうこういうことするのやめる」
そういいながらあたしの手を握る彼をたたしはまた拒むことができなかった。
すこし、距離をとった彼をみて離れてほしくないとおもってしまった。
都合のいい女でも、そういう関係だとしても、彼のそばにいられるなら
彼が求めてくれるなら
それでもいいとおもってしまった。
ばかだなあっておもう。
じぶんでもじぶんに呆れてしまう。
でもそれ以上に、彼のそばにいたいと強くおもってしまうじぶんがいて。
あたしがあのとき、NOと首を振っていたならおわってしまったであろう関係をあたしが、あたし自身が続けることを選んでしまった。
やっぱりずるいのは、あたしなのかなあ。
その日、今まででいちばん彼が優しかったから。
あまりにも優しく抱かれてしまったから。
彼の眠る姿をみて
しあわせすぎて、このまま時が止まればいいのにとおもってしまった。