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ひまわり(一土)






俺は、お前の笑顔が好きだよ。
よくある、使い古されたような言い回しだけど、夏に咲くひまわりの花みたいだと思う。
太陽みたいに大きくて、周りまで明るくさせる力があると思う。
昔からそうだった。
お前が笑うとそれだけで雰囲気が明るくなって、他の誰かと喧嘩したあともすんなり仲直りできた。
落ち込んでいても、お前が引いてくれる手と励ます笑顔から力をもらったよ。
くよくよしてるの土門らしくないってお前が笑うから、俺はお前が見てる明るい俺でいられたんだと思う。
すごいのは、一之瀬は意図してそうなわけじゃないってところ。
いつも、何か考えて行動してるわけじゃなくてもそういうことができるんだ。
自然なんだ。
作ってない、偽らない。
飾りもしない。
だからすごいんだ。
だって俺にはできない。
だから、俺にはできないことをたくさんできるお前を、眩しい思いで見てきたんだ。

円堂と一之瀬が似てるって思ったのはそういうところだ。
感じるままに動いたら、それが周りのみんなの心の中まで動かしてしまう。
俺の知らない間にも、ばらばらだったみんなを少しずつ変えていったのは円堂だったらしい。
そして、俺は円堂と雷門のみんなに出会って、辛いとき苦しいとき、助け合って励まし合って、時には叱られることだってあるんだって、思い出した。
全部を帝国時代のせいにするつもりはないけど。
でも、実力が全部じゃなくて、そうじゃなくて、苦しささえ分け合って乗り越えるのが仲間なんだって、そういう関係もあるんだって、俺にもそういうのが許されるんだって、俺は雷門に来て思い出した。
そう、思い出したんだ。
元々、俺は知ってたんだ、そんなこと。
忘れていただけで。
雷門のみんなといながらずっと、一之瀬といた頃を思い出してた。
なあ、お前といた頃にはちゃんと知っていたはずのこと、お前がいなくなったら俺はどこかに置き忘れてしまっていたんだ。
でも、ずっと、心のどこかにお前がいたよ。
だから、ちゃんと思い出せた、大切なこと。

円堂のことは、一之瀬とは全然別に、ちゃんと仲間としてキャプテンとして尊敬もしてるけど。
時々、本当に時々、一之瀬が透けて見える気がしてた。
俺にはいつも、お前のひまわりみたいな明るい笑顔が心の中にあって、でも、もう二度と会えないって思ってた。
もう一度があるなんて、夢にも思わなかったんだからな。
お前が日本に突然現れたとき、俺がどれだけ驚いて、喜んだか、お前、本当にわかってるか?
何にもなかったような顔で、俺が大好きだった、……今だってもちろん大好きな笑顔を閃かせられて、俺がどれだけ嬉しかったか、ちゃんとわかってる?

だからもう、二度と離れるのが嫌だった。
だから、ここまで来たんだ。
雷門を離れるのも、自分で思うほど悩まなかった。
いつ出戻ってもきっと受け入れてもらえるっていう安心感もあるからなんだろうけど、でも、それがなかったとしても、きっと俺はお前を選んだよ。
一之瀬のプレーが好きで、追いかけて、背中を守って、試合が終われば飛び付いてくるお前の笑顔を受け止めるのが幸せだった。
練習のふとした時に、言葉がなくても通るパスから、繋がりを感じた。
普段の会話の中で、たとえば言いたいことがかぶったり。
顔を見合わせて笑ったりするのが、何気ない時間が本当に幸せだった。
一之瀬に繋がるすべてが俺の幸せだった。



だからさ。

だから、頼むから、笑ってくれよ。
きっと帰ってこられる。
お前は絶対にこのフィールドに帰ってくる。
誰が信じなくても俺が信じてるから。
待ってるから。
どれだけでも付き合うから。
一生かけたって付き合うから。
ちゃんと、お前の本当で笑ってくれよ。
無理した笑顔なんていらない。
誰かのために自分の痛みを隠して笑うのなんて、本当の一之瀬の笑顔じゃない。
本当のお前が笑えないなら、無理なんてするなよ。
本当に笑えるまで、どれだけ時間をかけたって待ってるから。
ずっと、傍にいるから。

雨にも風にも嵐にも負けない、本当の一之瀬の笑顔を、このフィールド上で俺はずっと待ってるから。





2013.5.26


ことかたへのお題:ひまわりのように笑って/(いっしょに、って言ったら困るかな)/鍵盤の上をあるくような shindanmaker.com より
























待ち合わせ(一土)






「土門、遅い!」

到着するなり頬を膨らませた一之瀬に遭遇して、土門は困った顔をした。
少し眉尻が下がるこの表情が、実は一之瀬はとても好きだ。
お調子者に見せているが、本当はとても人の好い土門の人柄が、笑顔の次によく表れているような気がするから。
だから、こんな顔をさせたくてついつい言わなくてもいい我儘を言ってしまうこともある。

「悪い、ちょっと先生の手伝いしてたらさ」

「今日は練習もないし二人で遊ぼうって前から約束してたのに」

恨みがましく言うと、眉尻がさらに下がる。
大会の合間、普段酷使してばかりの体にきちんとした休養も必要だというマネージャーたちの強い配慮で、今日は自主練すら禁止されるという珍しいオフの日なのだった。
ついつい時間があればボールを蹴ってしまう自分達だけれど、秋にも休むようにしっかり念押しされてしまったものだから、おとなしくボールは諦めようということになった。
だから、久しぶりに二人だけで遊びに行こうと約束をしたのが昨日のこと。
毎日一緒だとはいえ、仲間たちみんなでわいわい騒いでいることが多いから、まとまった時間を二人で過ごすことは少ないのが現状だ。
そう、平日の下校後だけの時間とはいえ、二人だけでというのは本当に久しぶりなのだ。
だから、一之瀬は今日という日をそれは楽しみにしていて、土門だって、それなりに見えた。
どうせなら雰囲気を出そうと、いつもなら一緒の下校をわざわざ別々にして、駅前を待ち合わせ場所にした。
そんなことしなくてもいいんじゃないかと土門は言ったけれど、結局は一之瀬の希望を聞いてくれた。
楽しみだねと言えば、あーはいはい楽しみだな、と軽い調子で返されたけれど、その実土門だってとても楽しみにしているのが一之瀬にはわかった。
そんなの、見ていればわかる。
だってブランクはあれども長い付き合いだ。
それなのに、待ち合わせの場所に土門は待っても待っても現れず、やがて姿を見せたのは約束の時刻から随分過ぎた頃だった。

「悪かったって。荷物運び手伝ったらなんかそのまま片付けまでなりゆきで……学校出るの遅くなっちゃってさ」

言葉の通りが真実なのだろうと思う。
土門だって慌ててこちらに向かってきただろうことは、息を切らした様子から見て取れる。
決して一之瀬を後回しにしたわけではなく、お人好しなところを発揮して、仲の好い先生に親切を施してきただけだろう。
荷物運びを手伝ったというのが嘘でも言い訳でもないことなど、よくわかっている。
わかった上で、

「言い訳なんかいらない」

一之瀬は膨れた振りをする。
そんなに怒るなよ、と困った素振りの土門を横目に。

「悪かったって、なあ」

お前楽しみにしてたのに、ごめん。
真実、悪いと思っているのだろう。
真情が伝わってくる声音は、一之瀬の大好きな響き。
ちらりと顔を盗み見て、しょんぼりとした困り顔を目に入れて、うんと一人、一之瀬は頷いた。
別に本気で怒っているわけじゃない。
このくらいにしておかないと、こちらも引っ込みがつかなくなりそうだ。
それでもまあ、土門が遅刻をしてきたことは事実だ。
だったら、その埋め合わせ的な何かをもらうのは、別に自分勝手な我儘ではないだろう。

「……許してあげてもいいけど、」

「けど?」

その代わり、と、土門の腕をとる。

「一之瀬?」

ぐいと引っ張ると土門はよろめいて、その隙に一之瀬は自分の腕を絡めた。
ぶらさがらんばかりの勢いで絡み付きながら、長身の顔を見上げる。
目を白黒させた土門は、きっとまた人の目がとか公衆の面前でとか考えているのだろう。
彼はまったくもって常識人だから。
でも、そんなことは関係ないのだ。

「遅刻の埋め合わせ!」

「え?」

「遅れてきた分、いっぱいベタベタさせてもらうから!」

「えぇえちょっとお前、それはさ」

「駄目って言っても駄目! 土門は遅刻したんだから、今日は俺の言うこと聞いてもらうからね!」

びしりと指を突き付ければ、また困り顔。
しかし、それもしばらくすると呆れ顔と諦め顔になって、やがては一之瀬だけに向ける笑顔に変わることも知っている。
今日という日の残り時間は少ないけれど、思う存分楽しめそうだと一之瀬は微笑んだ。





2013.5.18

ことかたへお題は『許される境界線を飛び越えた/迷わず君を選んだ/言い訳する暇があるならもっと愛して』です。 shindanmaker.comより







腕の中(一土)





なんだよいきなり、と、土門は困ったような呆れたような声を出した。
決して自分を拒否しない腕の中、自分よりも高い身長の相手に飛び込んだ先で、ぎゅうぎゅうとその胸に顔を押しつけて甘えると、再び呆れたような声。

「なんだよ、どうした?」

言葉ではなく、背中に手を回した仕草で応えると、小さく温かい溜め息が聞こえた。
仕方ないなぁ一之瀬は。
吐いた息の感触からして、たぶん、土門は今少し上を見上げていて、どんな顔をしているかなんて見なくてもわかる。
きっと困ったような呆れたような、それでいてどこか嬉しそうな、一之瀬に対する愛情しか感じない顔だ。
付き合いの長さの分だけの遠慮のなさで、隠されないその愛情にどれだけ安心をもらってきたか。
いつでも自分の傍にいて振り返れば見守る視線があって、だから自分は走り続けられたのだと思う。
一之瀬にとって、何より大事な存在で、何にも変えがたいもので。
二度と失ってはいけないもので。
「ねえ、土門」

「ん?」

なんだよと見下ろしてきた気配。
同時にぽんぽんと頭を撫でられて、心地よさに目を閉じる。

「俺だけの特等席だからね、ここ」

「はいはい」

「ずっと、これからもね」

「あー、うん」

あやすような響きの中に、一之瀬のストレートな表現にわずかばかり照れる色が見え隠れしている。

「大好きだよ、土門」

おそらくそれなりに赤くなっただろう顔を目の裏に浮かべて、一之瀬はふふと笑う。
そして、この腕を二度と離すまいと、抱き締める両腕に力を込めた。





2013.5.18


一土へのお題は『腕の内側に飛び込んだ・泣けない死神・ゆっくりと●●てあげようか』です。 shindanmaker.comより








短い話で


短い話ですみません。

最近文章書けない感じだったので、いろいろなジャンル、キャラ書いてリハビリ中です。
やっぱり文章書くの、楽しいです。
やめられないなあ。

自分でなかなか書き出せないキャラなんかをリクエストもらうと、すごく新鮮でおもしろいですね!
興味はあるけど自分では書かないだろうなあ、というのがたくさんあるので、新しい組み合わせをリクエストいただくと修業になる、かな、とか。
肝心の書きたいものはなかなか進まないんですが……。



ゲームは、あいかわらず対戦ルートに苦戦しています。
何回戦ったらあのグローブもらえるんだろう優一兄さん……。

ツイッタ投下小話(虎豪)





「傍にいます、俺だけは」

昔から意志の強い瞳だった。
口にする訳ではない言葉を何より明確に伝えてくる。
向けられる方がもどかしくなる程の一途さで。
後輩以上の存在としては受入れられなかった昔を乗り越えて、今、昔以上に傍にあるこの瞳に、一体自分はどれほど救われてきただろう。

「……ありがとう」

自分も思いを言葉にはしない。
けれど、真っ直ぐな瞳を見つめ返せば、彼は微笑むのだ。

「離れませんから、決して」

それが二人の暗黙の了解だ。







* * * * * * *



聖帝になるにあたり、いったいどんなやりとりが二人の間でかわされたのか、というのがココ最近の妄想の種です。


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