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間違えないでね

(不破→竹)



視界が突然真っ暗になった気がした。


「雷蔵はいい奴だよなあ」

「そうかな。どうしたの急に?」


その日に市で何を買うでもなくぶらついた。
偶然にも出会ったハチは私の顔を見た途端に「雷蔵!」と言い当てた。

それなりに離れていた……でもやっぱり彼は間違えない。今思い起こしたら昔から不破と鉢屋を……たとえ同じ顔で同じ服でいても彼は一度も間違えてはいないのだ。


「昨日また委員会してて遅くなってさ。風呂入った後に部屋着いた途端に布団入んないで寝ちまったんだ。」
でも朝に起きたら布団にちゃんと入ってた。


「うとうとしてたからわかんねえけど、机の上に『ちゃんと布団入って寝てね』って書いてある紙あったの」

あの筆跡、雷蔵だろ?


最後の一句は頭に入っていなかった。

「昨日……なの?」

「ああ、気配に感ずけないなんて疲れてるとはいえ情けないよな」

あははなんて渇いた笑い。

ハチ、俺はそんなことしてないよ。だって私は昨日ハチの部屋に行ってない。

ああ、そういえば、昨日は三郎が帰ってくるのが遅かった。そして、朝の三郎。知ってる?お前って私に嘘ついた後に目が泳ぐってのを……。
変わらないなまったく
素直じゃないし、俺には心開いてますってフりしてその深は隠してること。


「ハチ、昨日のは無し。置き手紙も捨てて置いて?」

「……え?」

予想外の返答だった所為かハチは目を丸くしたけど、俺の様子で何かしら彼なりに気を使ったんだろう。しばらくしたらゆっくりと頷いた。

「ありがとう」


胸の奥のドロリとしたどす黒いものに吐き気がする。









(初めて、彼が間違えた日)

消化不良


どんな単語を連ねたらこの思いを言葉にできるのだろう。
世辞にも多いとは云えない自分のボキャブラリーでは伝えることが出来ないのがひどく歯痒い。


「大馬鹿者だよ。」


正座して俯いたままの兵助は、俺には目を合わせずにもう一度大馬鹿と云った後、何も言わなかった。
袴の上に置かれた手は強く握られて指が白くなり爪が深く食い込む。
痛々しくて、見ているのが辛い。
だけど、あんまり握ると血が出るからと一言言うことさえ俺には出来ない。



実習中に起こった事故。運が悪かったんだ。
生徒の持ってた火薬が、運悪く別の生徒が持ってた火で爆発した。偶然近くにいた俺と数名が巻き込まれ重軽傷を負った。
幸いにも死傷者は出なかったが、爆発した中心にいた生徒は一人が脚を失い。もう一人は右腕が使い物にならないらしい。




―――……もう…忍にはなれないだろう



俺も軽い火傷と飛んで来た物の所為で頭と腕に怪我をした。




「俺は大丈夫だからさ、」
お前が泣いてどうすんの


「…………ッ!」



兵助を知らない奴は、無表情だの冷たいだの近寄りがたいだの言うけどさ。

こんな風に他人のために涙を流せるんだよ。

「早く治さなきゃな!」


小さく、頷いた















…………………
消化不良だ(私が

なんか納得した物が書けない
知り合いに文章が気だるいと言われました。
うーん。やはり単調でテンポ悪いか……
難しい

きっとずっと前から


壁を背にしてずるずると倒れ込んだ。
そして子供みたいに泣きじゃくった。

何刻泣いていたかは判らないが、何度もしゃくりを繰り返した為に首は痛み、乱れた呼吸の所為か息をする度に肺からはヒューヒューと音が鳴る。
それでも嗚咽が止まらず、流れた涙は膝に大きな染みを作る。
体中の水分が吐き出されているようだと、どこか冷静な自分がそれを見ていた。




「好きだ。」

―――…やめてくれよ

「今まで怖くて言えなかった。憎まれ口いうくらいしかお前と向き合えなくてすまなかったな。」

聞きたくない

「傷つくのが怖くて言えなかったんだ。でも、もうそんなこと言ってられない。」

やめろよ

「好きだ。ずっと前から好きだった。」

やめろ!
そんな目で……俺を見てくれるなッ!!


手を触れられたそね瞬間俺の世界は壊れた




「――…ッ、遅すぎんだよバカタレ」








この気持ちに気がつくのも、それを聞いたのも、遅すぎた。

もうじき雪は溶ける。


別れの……春が来る。









きっとずっと前から(だけど伝えられなくて)

電話越しのXXX

(現代パロ)


『……どうかした?』


決して問いただす時の強いそれではないのに、金縛りにあったように受話器は話せない。


「―……何でもないんです。ただ……元気かなって」


声、震えてないよな

「最近、会ってなかったですし」

本当は、少し辛いことがありました。
もう、あなたに頼ってばかりじゃ……駄目なのに


「元気そうで良かったです」

いつの間にか握っていた電話で、あなたにかけている。
頼っていちゃ駄目なのに……あなたの声に、安心する。
穏やかで優しい声。


『用件はそれだけ?』


「……はい」


『お前は相変わらず嘘が下手だね』


「―――……ッ」



お前の声が、助けてと云っていたよ。










電話越しのSOS


割れろ (綾浦)

(藤内が幽霊)



お前の居ない世界に何があると云うの?
私に、そんな世界で生きろと云うのかい?

「それは勝手な思い込みです」


「例え俺が居なくなっても、明日は来ます」


生きていける。其処は、貴方次第で地獄にも楽園にもなるんです



「決して此処に留まってはいけません。」


流れ続けなければ水は腐ってしまうんですよ。

「藤内は残酷だね」

お前の居ない世界には、

太陽が

色が

音が

小鳥が

なかったんだもの。




(それでも生きろと云うのかい?)

(俺が見れないモノを見てほしい)


死          生
者          者
の          の
エ          渇
ゴ          望



 Fin.








‐後書き‐

藤内は死んだ。綾部は生き残った。

藤内を失ったその世界で、綾部は後を追って命を絶とうとした。
藤内は止めようとしてる。
生きて幸せに暮らして欲しいと願ってるから、死んだらその可能性さえ殺してしまう。だから生きて欲しい。
けど、綾部にはその願いは理解出来ない
藤内が隣にいてこその幸せだから、彼が居なくなった世界には何も望まないし何も求めないと思った。

多分この後綾部は生きる。
だって、それが好きな子の願いですから
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