よしつぐさま、
よしつぐさま、
わたし きょう ゆめ を みたんです。

せきがはらのかっせんで、
みつなりさまと、
とくがわさまがげきとつし、
そして、そして、
さいごにはみんなみんないなくなる。
あなたも、いなくなる。

とくがわのてんかがおとずれ、
わたしはひとり、
あなたのいないせかいでいきていた。


小早川秀秋が布陣していた松尾山の麓、「小早川秀秋は裏切る」そう言い切った大谷吉継の陣営があった。
――――そう、あっ"た"。

「ねぇ、よしつぐさま、」

私の足元には、沢山の兵の亡きがらと、血に塗れた武具と、ぼろぼろになった対い蝶。

「私、"ゆめ"を見たんです。」

そこに転がる愛しい人の、

「三成様率いる西軍と、」

馬に踏み荒らされた、

「徳川様率いる東軍。」

首のない、

「西軍は小早川様に裏切られて、」

亡きがら。

「負けちゃうんです。」

私は小さく へへっ と、笑った。


「よしつぐさま、」

首のない遺体を胸に抱けば、血土くさいが、確かに吉継様の香り。

「よしつぐさま、」

あなたの首は、きっとあなたを愛する数々の家臣たちが、晒しものにされぬよう、土中深くに埋めたのでしょう。

「よしつぐさま、」

あなたは、大切な友のため戦い、そして散り、幸せでしたか?

「よしつぐさま、」

今、夢で見た通り、徳川の天下が訪れようとしています。

「よしつぐさま、」

私は、吉継様、あなたや、いえ、あなたがいない世界で、ひとり、生きています。

「よしつぐさま、」

この思いを伝える事はしなかったけれど、今、今伝えても、よろしいですか?

「よしつぐ、さま、」

ふふっ、あなたは、ちょっと困った微笑みを私にくれるのでしょうね、

「よしつぐさま、」

ええ、伝えません。この思いは、私が地獄まで連れて行きます。

「よしつぐさま、
だから、だから、」


私も、共に――。