体と髪に絡みついた歩さんの匂いを洗い流したくない。
此の匂いが体にまとわりついてる間は、歩さんを近くに感じられて、肌のぬくもりを思い出せる。
シェオルがあるから、シオンを見出せる。
鳥が鳴き、日が昇り、空が明るみ始めて、抱かれ眠りにつきながらいつ私のシェオルに帰るか考えてた。

シ ェ オ ル に 帰 り ま す か ?

YES←
はい

頭の中に出てくるNOのない選択に、歩さんの寝顔見ながら、毒しか与えず、私の心を疲れさせることに心血注ぐ母親と、すべてをあきらめた親父と、心の死んだ姉を思い出して、帰ろう、と決めた。
どれだけ嫌いでも、家族なわけで、私に帰る場所はそこしかないわけなんだ。

今は、ね。

体と髪に絡みついた歩さんの匂いを洗い流したくない。
此の匂いが体にまとわりついてる間は、歩さんを近くに感じられて、肌のぬくもりを思い出せる。
間違いと勢いが芽吹かないように、私はこの体を薬漬けにするわ。
そのために、「私」がいるのですから。