備え付けられた窓からの眺めはいつもと違う。草原に広がる光景なんてここにはなくて、ただ一面の銀世界が広がっている。私が皆のことを覚えているということは、どうやら皆生きているみたいだ。もうそれだけが私が生きてる糧みたいなものだった。
「飯だ」
その時奥の扉が開いた。そこからやってきたのは、我らが敵国の准将様。質素ではあるが、それなりに食べれる飯を乗せたトレイを私の目の前にそっと置いた。
「食え」
朱雀とは違う食材、料理。最初こそは戸惑ったが、今では慣れた。それほどここでの生活は長かった。だけど、今日は箸が進まなかった。
「食わないのか」
「…」
「無理して食う必要はない」
「…なんで」
「…なんだ」
「なんで捕虜なんかにするの」
資料などでしか見たことはない。でもそれはれっきとした事実だ。白虎はこの気候のせいで食糧の自給率は高いとは言えない。聞いた話では兵士でさえ満足に満たせないという。
「なのに捕虜なんか取って馬鹿なの」
「貴様、立場が分かって言っているのか」
「立場?私は朱雀兵であなたは皇国の准将。それで十分じゃない」
兵士だけじゃない。兵士でさえ満たされない食生活だ。ならば、市民は言うまでもない。
「馬鹿は貴様だろ。捕虜の身ながら敵国の心配をするなど愚の極みだ」
「誰があんたらの心配なんてするものか。私はただ、こんな捕虜に食わす飯があるなら市民に回した方が良策って言いたいだけだ」
やはり図星だったらしい。そこで会話は途切れた。
「ねえ」
黙り込んだ准将を見つめる。じわり、と近付いていく。
「殺してよ。もう死んだ方がマシよ」
たとえ生きて朱雀に帰れたとしても、その命は白虎に助けられた命。敵の白虎に助けられた命で朱雀で生きていくほど私は図太くない。生き恥を晒すより、今ここで死んで皆の記憶から消える方がマシだ。
「ねえ……殺してよ」
そう言って私は彼の側にいくも、彼は相変わらず黙ったままだった。
続く?
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准将様でSS(?)
あっちに置くほどでものものじゃないので
2011-12-3 12:37