!!!!!!!!!!!ホモ注意!!!!!!!!!!!!!!
このダルい感覚。まだ着いてすらいないのに帰りたいと度々思う。二ヶ月程学校に行っていないという事実は俺に怠惰を覚えさせた。いや、それは俺だけではないから許されるはずだ、許されなければならない。そもそも許せって言ったって誰に許してもらうんだという話だが。
まだまだ夏の暑さは抜けない。電車に乗った時の冷房がとても心地良い。日差しが厳しく窓際にいると首が焼けてしまいそうだ。昼の時間帯だというのに座席にみっしりと人が座っているのは都会ならでは。少し視線を動かし空いてる席を探すもなし、仕方なしに吊革に捕まる。後期初日からツイてない。
「あれ、大川じゃん」
「お、川井」
途中の駅で電車に乗り込んできたのは同じ大学の、同じ学科で同じサークルのヤツだった。
「なんだお前も昼から?」
「おう、そっちも?」
「おー、なんか前に入れようかと思ったんだけどいいのなくてな」
「なんかうちのとこ時間割クソだよなー」
他愛もない話をして、どうだった、と聞いて、そういやどうだったも何も、一緒に遊びまくったな、と思い返す。忘れる訳がない。誘えば用事がない限り付き合ってくれるコイツを。
案の定一緒に遊びまくっただろ、なんだよ忘れちゃったのか、俺寂しいー、などと冗談混じりに言われ、俺は気持ち悪いホモかよ、なんて笑って返すのだ。それにいつも決まって川井はちげーよ、ばっかじゃねーの、と言う、はずだった。けれど、今回は違った。そうだよな、ホモって気持ち悪いよな、なんて寂しそうな表情をしたのである。その表情を見て俺は申し訳なさと、愛おしさとの感情を抱いた。
どうしてお前が寂しそうな表情をするんだ、ホモなのかそうなのか。いいやホモなんてことより、誰が好きなんだ。
混乱して、その先まともな受け答えなんて出来なかった、誰が好きなのかなんて聞くことも出来なかった。ただ、それからぎくしゃくした空気のまま学校へ行ってそれぞれの授業を受けに向かうだけで。俺にはどうしようもなかった。
これは叶うことのない恋で、この気持ちは誰にも知られずに終わるだろう、自分の気持ちに気づいた次の瞬間にこの恋を俺は諦めていた。けれどそれは相手がノンケだったからで、性別という大きな壁があったから、それがなかったら諦めてなんかいない。だから納得がいかなかった。だったらなあ、俺を選んでくれよ、そう言いたくて仕方が無かった。言える訳もなかったが。
それからはどうもぎくしゃくして仕方なくて、夏休み馬鹿みたいに遊びまくったのが嘘みたいに距離が出来た。同じ授業でも隣の席に座ることなく、距離を置いて違う席に座った。それがどれくらい続いただろう?1ヶ月くらだと思う。もう終わってしまったんだ、と思い始めていた時だった。
メールでアイツに呼び出しを食らったのは。
『今暇?』
『まあまあ暇してるけど』
『じゃあ203教室に来てくんね?』
『分かった』
何を言われるんだろう、話があるんだろうか、もしかしてバレたのか、なんて思って、どうやって大学の203教室まで行ったか後から思い出しても覚えていなかった。教室に入った瞬間俺は険しい顔をしていたらしく河合に爆笑をされた。それにムッとしてなんだよ、と言ったら身構えすぎと笑われて、それが本当に普通で、ああ気にしてたのは俺だけなのかと思って肩の力が抜けた。
「で、何で呼び出したんだよ」
「ん、いやなー、ちょっと」
「何だよ」
「気持ち悪いと思うんだけどさー、オレお前のこと好きだわ」
「はぁ?」
「いや、だから好きだわ」
二度言われて尚理解することが出来なかった。いや、理解したけれど信じることが出来なかった。到底信じることが出来るものではなかった。
「だからさ、恋愛的な意味で好きだと言ってるの、ホモだよホモ」
「いやいやいや……」
「お前の返答しだいじゃまあ友達のままだしまあそっちなんだろうけどさ」
こうもあっさりしているコイツを目の前にして混乱していた。大混乱だ。俺の方がずっとコイツを好きだったのに、告白を先にされて、こうも男が廃ることはないだろう。でも、嬉しくないなんてことはなかった。叶う訳がない、そう諦めかけていた恋が叶うのだから。
「いいよ、なあ、お前のことずっと好きだったんだ」
「え……」
「だから、ずっと好きだったっつってるだろ馬鹿」
表情を一気に明るくして、まじで、と騒ぐコイツが可愛くて、やっぱり好きだなあと思って腕をひいてほっぺに軽くキスをした。
end.