もしも、天国と地獄が存在するなら。
きっと、僕も君と同じ場所にいけるね。
「本日の予定は、これで以上です。皆様、お疲れ様でした。また明日もよろしくお願いします。」
部下を労う言葉をかけるとナナリーが、ゼロであるスザクをそっと振り返る。すぐにそれを察したゼロは、ナナリーの車椅子を押すと、執務室を後にした。
極悪非道の独裁者がいなくなり、世界は話し合いで物事が決められるようになってきた。残されたナナリーのしなくてはいけないことはとても多い。
ナナリーを部屋に送るとスザクは、一言も発することなく部屋から出て行こうとする。彼女は、あのルルーシュの妹だ。きっと、ゼロの正体にも気付いているだろう。
でも、それでもスザクは枢木スザクである顔を出すつもりはなかった。
「あ、あのスザクさ………いえ、ゼロ。おやすみなさい。」
「…………。」
一礼だけするとスザクは、ナナリーの部屋から出ると、自分の部屋に歩きだした。
大丈夫だよっとスザクは、心の中で呟く。ギアスは、まだスザクにかかっている。ルルーシュの願いは、スザクの罰はまだスザクの心の中にある。
ルルーシュの最後の願いは、必ず守るとスザクは誓った。正義の象徴であるゼロの仮面は、死ぬまで被り続けるつもりだ。
最後まで完璧だった頭の良い彼。ルルーシュの思う通りに、世界はとても優しくなった。
「でもね、ルルーシュ。一つだけ君は間違った。」
人の出入りが出来ないように厳重にロックがかかった部屋にスザクは戻ると、仮面を外しながらそっと呟いた。
そう、ルルーシュは一つだけ間違えた。
ナナリーは、あれから一度も前みたいには笑わない。クラブハウスで、見せていた笑顔はもう失われてしまった。それは、ルルーシュが居ないから。
「ナナリーは、強いよ。僕や君よりもずっと………でも、君が必要なんだ。」
心から笑うのには。君が居ないのだと、スザクはそっとマントを床に落とした。
「にゃー。」
「!?」
突然の猫の声に、スザクが咄嗟に顔を隠して声の方を見ると。そこにはどうやって入り込んだのかアーサーが、床にちょこんと座っていた。
「にゃーん。」
「………もう居ないよ、アーサー。枢木スザクは、もういないんだ。」
そんなスザクの言葉を聞いていないのか、分からないのかアーサーは、近くにあったソファーを経由して、スザクに飛び付く。
「う、わぁ!?」
持ち前の運動能力でアーサーをキャッチしたスザクの、腕の中でアーサーが満足そうに鳴き声をあげる。
温かな体温を、ぎゅっと抱きしめながら、スザクはそっと目を閉じる。
平気だよ。願いは必ず守るとスザクは再び心の中で違う。
「………だから、少しだけ待ってて。ルルーシュ。」
この世に、天国と地獄が存在するなら。きっと、スザクとルルーシュは同じところにいくだろう。
また、一緒に居られる。今度こそすれ違うことなく。
だから、待っててよ。ルルーシュ。
すぐにいくから。
地獄で待ってて。
[100年後には好きって言うよ]最終回後ルルスザ
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25話をみて、うっかり思いついてしまった話です。
スザクがゼロを演じきり、生き抜いて、いつかルルと同じ場所にいけるといいなぁという願望でした。
色々やっちゃった二人なので天国はないかなっと、でも一緒ならどこでもいいかなって。
ああ、もう幸せになれよ(笑)