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民法 人

第2章 私権の主体・客体

胎児が生まれたとみなされる場合 (1)不法行為による損賠請求(721)、(2)相続関係(886,965)、(3)認知(783) 四宮39

停止条件説 胎児中には権利能力がなく、生きて生まれたときに生まれた時期が問題の時点(相続開始とか不法行為)まで遡及すると考える(判例)四宮39

解除条件説 胎児中でも、生まれたものとみなされる範囲内では(制限的な)権利能力があり、生きて生まれなかったとき、はじめて遡及的にこの権利能力が消滅するにすぎず、従って胎児中も法定代理人が存在すると考える 四宮40

認定死亡 水難、火災、事故その他の事変があり、死体の確認ができないが周囲の状況からみて死亡したことが確実であるとみられる場合に、その取調べをした官公署がこれを死亡と認定して、死亡地の市町村長に死亡の報告をすること(戸89)。これにより、失踪宣告を受けなくても、死亡の法律上の効果が発生する 法律学小辞典、四宮40

同時死亡の推定 複数の者が死亡した場合において、これらの者の間の死亡の先後が不明なとき、これらの者が同時に死亡したと推定すること(民32条の2)法律用語辞典

失踪宣告 ながい間生存不明の状態が続き、死亡の蓋然性が大きい場合には、利害関係人のために、その者に関する法律関係を確定するため、その者を死亡者とみなす宣告を行う制度 四宮42、68

意思能力 行為の結果(自分の権利義務の変動)を弁識するにたるだけの精神能力 四宮44

行為能力 自らの行為によって法律行為の効果を確定的に自己に帰属させる能力 四宮46

未成年者 満20歳になっていない者

→原則として単独で行為できない(例外:4・5・6・753)

成年被後見人(禁治産者) 精神上の障害によって事理を弁識する能力を欠く

→原則として単独で行為できない(例外:9但)

被保佐人(準禁治産者) 精神上の障害によって事理を弁識する能力が著しく不十分な者

12条1項の事由についてのみ単独で行為できない

被補助人 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な者

→家裁の審判を受けた個別特定の法律行為についてのみ単独で行為できない(16条1項)

保護者のなしうる行為
親権者・未成年後見人 代理権  同意権  追認権  取消権
成年後見人        代理権       追認権  取消権
保佐人                同意権 追認権(122) 取消権(120)
補助人           全部△

無能力者の相手方保護 (1)詐術を用いた場合の取消権の排除(20)、(2)取消権の短期消滅(126)、(3)法定追認(125)、(4)催告権(19)

詐術と黙秘 単なる黙秘は詐術に当たらないが、黙秘していた場合でも、それが無能力者の他の言動などとあいまって、相手方を誤信させ、または誤信を強めたと認められるときは詐術に当たる(判例)四宮59

法人 自然人でなくして法人格を認められたもの 四宮73

実体的契機 取引の主体となるのに適した実体が存すること 四宮75

価値的契機 政策的見地から価値判断を加え、取引の主体となるに値すると判断されること

技術的契機 法人は、自然人でないものを権利義務の統一的な帰属点たらしめる技術であるということ

法人擬制説 権利の主体となりうる実体は本来自然人に限るべきであり、法人は特に自然人に擬制したものと説く 技術的契機のみに着眼 四宮76

法人否認説 法人は法の擬制にすぎず、その本体は個人又は財産に存すると説く 技術的契機+実体的契機に着眼 四宮76

法人実在説 法人は、法の擬制した空虚のものではなく、社会的実在であるとする 四宮77

(有機体説) 団体は固有の意思と行為とを有する有機体として、社会的活動単位足りうるものであり、法人はそのような社会的実体に法主体性を認めたものであるとする 実体的契機のみに着眼

(組織体説) 法人格を与えられるに適した法律的組織体であるとする(通説) 実体的契機+価値的契機をも重視

権利能力なき社団 社団の実体を有するが、法人格を認められない団体 四宮84

要件(判例) 団体としての組織を備え、多数決の原則が行われ、構成員の変動にもかかわらず団体そのものが存続し、代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定していること(最判昭39.10.15)内田I208 

(学説) 構成員の脱退・加入に関わらず、団体としての同一性が保たれ、団体が構成員から独立していること(対内的独立性)、団体が構成員から独立した財産をもっていること(財産的独立性)、代表者の定めがあること(対外的独立性)、代表者の選出、団体の意思決定方法などが確定していること(内部組織性) 伊藤眞民訴89

法人の不法行為責任(44)の要件 (1)理事その他の代理人(代表機関)の行為、(2)その行為が不法行為(709)の要件を満たす、(3)その職務を行うにつき

職務を行うにつき 行為の外形から客観的に職務に属する行為であればよいが(外形標準説)、相手方が悪意重過失のときはあたらない(判例)四宮112

有体物 気体・液体・固体 四宮121

不動産 土地およびその定着物(86条1項)

定着物 現に土地に直接・間接に固定されており、取引観念上土地に継続的に固定されて使用されるものと認められるもの

建物(建築中の建物) 屋根をふいただけでは足りないが、独立に雨風をしのげる程度、すなわち、屋根瓦がふかれて周壁として荒壁がぬられた程度に達すればよい(判例)四宮127

動産 不動産以外の物(86条2項)

無記名債権 債権者を特定せず、証券の正当な所持人を持って権利者とする債権(無記名の小切手・商品券・入場券・乗車券など)四宮130

代替物・不代替物 取引上一般に、種類に着眼されるものを代替物 四宮133

特定物・不特定物 具体的取引において取引の当事者が物の個性に着眼したか、種類に着眼したかによる区別

従物 独立の物でありながら、客観的・経済的には他の物(主物)に従属して、その効用を助ける物 四宮133

果実 物の用法に従い、かつ物の本体を害することなくして産出される経済的収益 四宮136

天然果実 元物から直接産出される経済的収益(88条1項)四宮137

法定果実 物の使用の対価として受けるべき金銭その他の物(88条2項)四宮137

使用利益 元物そのものの利用による利益 四宮138

民法 法律行為

第3章 私権の変動

第1節 法律要件・法律事実、法律行為

法律事実 法律要件を組成する個々の要素 四宮139

法律要件 一定の私権の変動(法律効果)を生ずるための一定の事実 四宮139

法律要件(法律事実)の種類 四宮140、近江130

(1)適法行為

 a)意思表示(法律行為)

 b)準法律行為

  イ)観念の通知

  ロ)意思の通知

(2)違法行為(例:債務不履行、不法行為)

(3)事件(人の精神作用に基づかないもの、なお(1)(2)は人の精神作用に基づく事実)(例:人の生死、時の経過など)

法律行為 意思表示を要素とする私法上の法律要件 我妻I238

準法律行為 直接に法律効果の発生を意欲する旨(意思表示)以外の精神作用の表示 近江I131

観念の通知 ある事実の通知(代理権を与えた旨の通知109、債権譲渡の通知467、承諾延着の通知522、社員総会招集の通知62、)我妻I234

意思の通知 一定の意思の表示(無能力者の相手方の催告19、債務の履行を要求する催告153、弁済受領の拒絶493)

意思表示の結合の仕方による分類 四宮143

単独行為 一方的な意思表示のみで法律行為が発生する法律行為(解除、取消、免除、遺言、相続放棄)

契約 対立する二者の意思表示の合致によって法律効果が発生する法律効果

合同行為 方向を同じくする二個以上の意思表示の合致によって法律効果が発生する法律行為(社団法人の設立行為)

決議 団体や団体の複数人からなる機関が団体内部を規律するためになす意思の表明

協約 当事者の一方・双方が多数の者・団体であって、当事者の合意がその多数の者または団体の構成員に対して規範としての効力を認められるもの(労働協約)

処分行為 およそ権利の変動を直接目的とする行為 四宮145

物権行為 物権の変動を直接目的とする行為

準物権行為 物権以外の財産権の変動を直接目的とする行為(債権譲渡、債務免除)

第2節 意思表示

心裡留保 内心的効果意思と表示との不一致を表意者自身が知っていて、そのことをつげない意思表示(93)我妻I287

虚偽表示 相手方と通じてなす真意でない意思表示(94)我妻I289

第三者(94条2項) 他人の虚偽表示に基づいて新たにその当事者から独立した利益を有する法律関係に入ったために、虚偽表示の有効・無効について法律上の利害関係を有するにいたった者 無過失も登記も不要(判例)四宮163

錯誤 内心的効果意思と表示との不一致を表意者自身が知らないこと(伝統的見解)

真意と表示との不一致を表意者自身が知らないこと(有力説)四宮173

表示上の錯誤 表示意思と表示行為の間に食い違いがある場合(書き間違いなど)

内容の錯誤 効果意思と表示意思の間に食い違いがある場合(ドルとポンドは同価値と誤信など)

動機の錯誤(属性の錯誤) 動機と効果意思の間に食い違いがある場合(意思形成に関して錯誤が生じたもの)

動機の錯誤 動機が明示または黙示に表示され、法律行為(意思表示)の内容となったときに限り、「要素の錯誤」となる(判例) 四宮175、近江I172

法律行為の要素 表意者が意思表示の内容の主要な部分とし、この点について錯誤がなかったら、表意者は意思表示をしなかったであろうし(因果関係)、かつ、意思表示をしないことが一般取引の通念にてらして至当と認められるもの(重要性)(判例)四宮178

第三者の無効主張 第三者において表意者に対する債権を保全するため必要がある場合において、表意者が意思表示の瑕疵を認めているときには、表意者自らは当該意思表示の無効を主張する意思がなくても、第三者は錯誤無効を主張できる(最判昭45.3.26)近江I179

詐欺の要件(96条1項) (1)詐欺、(2)詐欺による意思表示 四宮184

詐欺 他人をして錯誤に陥らせ、その錯誤によって意思を決定・表示させようとして(故意)、欺罔行為をすること

詐欺による意思表示 他人の詐欺によって錯誤に陥り、それにより意思を決定・表示したこと

善意の第三者(96条3項) 詐欺の事実を知らないで、詐欺による法律行為に基づいて取得された権利について、新たな利害関係に入った者 四宮196

強迫の要件(96条1項) (1)強迫 (2)強迫による意思表示

強迫 他人に畏怖を与え、その畏怖によって意思を決定・表示させようとして(故意)、害悪を告知する行為(強迫行為

強迫による意思表示 他人の強迫によって表意者が畏怖をいだき、その畏怖によって意思を決定・表示したこと

第3節 無効・取消

無効と取消の違い(3つ) (1)当然に効力を有しないか、一応有効か、(2)追認によって治癒されないか、されるか、(3)時の経過により無効は変化がないが、取消は不可能になる(取消権の消滅)四宮106

取消(120) 意思表示に瑕疵がある場合にいったん発生した意思表示としての効力を廃棄する旨の意思表示 四宮215

取消と撤回 法律学小辞典
撤回

要件 取り消し原因がなくても可。しかし、すでになされた意思表示によって当事者間に権利義務が生じてしまった場合には、原則としてその意思表示を撤回できない
効果 将来効
取消
要件 一定の取り消し原因(行為無能力、詐欺、強迫)のあるときに限って可
効果 遡及効

追認(122) 取消得べき行為について、確定的に有効とする取消権者の意思表示 四宮220

追認の要件 (1)取消権者であること(120)、(2)取消の原因たる状況がやんでいること(124条1項)(法定代理人等は不要)、(3)取消得べきものであることを知っていること(124条2項) 四宮220、我妻I399

法定追認の要件(125) (1)125条所定の事実 (2)追認のできる者(取消の原因たる状況がやんでいるか、同意を得てする場合か、法定代理人等が) (3) 成年被後見人のみ取消権の存在の了知 四宮222

第5節 代理

代理の要件 (1)代理行為 (2)代理権 (3)本人の権利能力 四宮224

代理行為 顕名(本人に効果を帰属させる旨を明らかにすること)ある意思表示

使者 本人の決定した効果意思を表示し(表示機関)、又は完成した意思表示を伝達する者(伝達機関)

代理権の範囲 管理行為 − (1)保存行為(財産の現状を維持する行為) (2)利用行為(財産の収益を図る行為、ただし客体の性質を変じない範囲で) (3)改良行為(財産の使用価値又は交換価値を増加する行為、ただし客体の性質を変じない範囲で)

代理権の制限

自己契約 特定の法律行為の相手方の代理人となること 四宮238

双方代理 特定の法律行為の当事者双方の代理人となること

共同代理 数人が共同しなければ代理することの許されない場合

法定代理権の濫用 子の利益を無視して自己又は第三者の利益を図ることのみを目的としてなされるなど、親権者に子を代理する権限を授与した法の趣旨に著しく反すると認められるような特段の事情のない限り、代理権の濫用とはいえない 家族法百選59

代理権の消滅(111,653)
本人   死亡、破産(法定代理は×)
代理人  死亡、破産、後見開始の審判

無権代理の相手方保護 (1)催告権〔114〕 (2)取消権〔115〕 (3)無権代理人の責任〔117〕

追認 代理行為の効果を自己に帰属させる意思表示(単独行為)

追認拒絶 本人に代理行為の効果を帰属しないことに確定させる本人の行為

取消権の要件(115) (1)本人の追認なきこと (2)善意(無過失不要)

取消権の効果 (1)効果不帰属に確定 (2)無権代理人の責任追及不可 四宮251

無権代理人の責任の要件(117) (1)本人に対する効果帰属事由の不存在〔代理権の証明・追認・表見代理の証明がないこと〕 (2)善意・無過失 (3)無権代理人が能力者 四宮251

無権代理人の責任の効果 履行(無権代理人との間に法律関係が発生)、または、損害賠償(履行利益)−無過失責任

無権代理と相続(判例の見解まとめ)

本人が無権代理人を相続(本人相続型)

資格が併存すること前提(当然有効ではない)に、追認拒絶権が信義則に反しなければ行使できる(最判昭37.4.20百選T38解説参照)。無権代理人の債務(117条責任)も相続し、追認を拒絶できる地位にあったとしても債務は免れない(追認拒絶権と矛盾しない)(最判昭48.7.3百選38)

無権代理人が本人を相続(無権代理人相続型)

(単独相続の場合)「本人が自ら法律行為をしたのと同様な法律上の地位を生じたものと解するのが相当」とし当然有効説をとる(最判昭40.6.19判例ハンド62百選39解説参照)

(無権代理人を本人とともに相続した者が、さらに本人を相続した場合)単独相続の場合と同じように考えて当然有効とした(最判昭63.3.1判例ハンド63)

(共同相続の場合)追認権は不可分的に帰属するから、共同相続人が共同して行使しない限り有効とはならない(無権代理人の相続分に相当する部分も当然有効とはならないとした)

(無権代理人に相続する前に本人が追認拒絶した場合)本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合には、その後に無権代理人が本人を相続したとしても、無権代理行為が有効になるものではない。本人が追認を拒絶すれば無権代理行為の効力が本人に及ばないことが確定するから(最判平成10.7.17)H10重判P56

無権代理人と後見人就任 事実上の後見人としてなした未成年者の財産管理に対して何人からも異議が出ず、また、無権代理行為をするについて未成年者との間に利益相反の事実がない場合には、その者が後見人となり法定代理人の資格をもった以上は、信義則上その無権代理行為の追認の拒絶は許されない(最判昭47.2.18判例ハンド親相84、四宮253) 

109条の要件 (1)他人に代理権を与えたことの表示 (2)表示された代理権の範囲内で代理行為 (3)善意無過失

110条の要件 (1)基本代理権の存在、(2)代理人の権限踰越の代理行為、(3)正当理由

事実行為と基本代理権 対外的な関係を予定しつつ一定の行為の委託をした場合には認められる(四宮262、内田I173)なお、判例は否定(最判昭35.2.19)

公法上の行為と基本代理権 基本代理権は私法上の行為についての代理権でなければならないが、登記申請行為が私法上の契約による義務の履行のために(特定の私法上の取引行為の一環として)なされるものであるときは、その権限を基本代理権となしうる(最判昭46.6.3)四宮264、内田I178

761条と基本代理権 相手方において、その行為が当該夫婦の日常家事の範囲内に属すると信ずるにつき正当の理由があるときにかぎり、110条の趣旨を類推して保護する(判例)四宮267、内田I176

112条の要件 (1)かつて代理権をもっていた (2)その代理権の範囲内で代理行為 (3)善意無過失

第6節 条件・期限

条件 法律行為の効力の発生又は消滅を成否未定の(不確実な)事実にかからせる、法律行為の付款 四宮271

停止条件 法律行為の効力の発生に関するもの

解除条件 法律行為の効力の消滅に関するもの

純粋随意条件 債務者の意思だけに関わる停止条件のついて法律行為(は無効である) 四宮273

期限 法律行為の効力の発生又は消滅を将来の確実な事実にかからせる、法律行為の付款 四宮280

期限の利益 期限が付されていることによって、その間に当事者の受ける利益 四宮282

民法 総則

 

民法 定義集1/6

参考文献 四宮(4版)、内田I(2版)、我妻I、近江I(2版補訂)、百選、判例ハンドブック

第1編 総則

権利能力平等の原則 全ての自然人は、差別されることなく、等しく権利義務の主体になる資格(権利能力)を有するという原則 四宮16

所有権絶対の原則 近代的所有権は、何らの人為的拘束を受けない・侵害をなす天下万民に対して主張することのできる・完全円満な・支配権であり、しかも国家の法よりも先在する自然権として神聖不可侵であるという原則 →権利行使自由の原則、物権法定主義(175)、売買は賃貸借を破るの原則 四宮17

私的自治の原則 私法的法律関係に関しては、個人がその自由意思に基づいて自律的に法律関係を形成することができるという原則 →法律行為自由の原則、契約自由の原則、過失責任の原則 四宮17

第1章 私権

人格権 人の人格的利益(身体・自由・名誉・貞操・指名・肖像・プライバシー)を目的とする私権 四宮24

身分権 身分上の地位(親とか夫婦とか)に基づいて認められる権利

財産権 権利の内容が財産的価値を有するもの(物権、債権、無体財産権など)四宮25

社員権 社団を構成する社員が、その社員としての資格に基づいて社団に対して有する包括的権利

支配権 権利者の意思だけで権利の内容を実現することのできる権利(物権、無体財産権、人格権など)

請求権 他人に対してあることを請求することのできる権利 

形成権 権利者の一方的意思表示によって法律関係の変動を生じさせることができる権利 四宮26

抗弁権 他人の権利(特に請求権)の行使を妨げる効力をもつ権利

信義則(1条2項) 人は当該具体的事情のもとにおいて相手方から一般に期待される信頼を裏切ることのないように、誠意を持って行動すべきであるとする原則 四宮30

禁反言 自己の行為に矛盾した態度をとることは許されない

権利失効の原則 権利者が信義に反して権利をながく行使しないでいると、権利の行使が阻止されるという原則 四宮33、288

クリーンハンズの原則 自ら法を尊重する者だけが法の尊重を要求することができるとする原則

事情変更の原則 契約締結当時の社会的事情や契約成立の基礎となった事情に、その後著しい変動を生じ、契約をそのまま強制することが信義公平に反するにいたった場合には、不利益を受ける側はその廃棄又は変更を請求することができる、という原則 四宮33

権利濫用の禁止(1条3項) 自己の権利を行使する者は何人に対しても不法を行うものでないという原則 →客観面と主観面を総合して判断。→効果:(1)権利本来の効果が認められない(宇奈月温泉)、(2)損賠義務を負う(信玄公旗掛松事件)、(3)権利自体の剥奪(834,835)

憲法 統治 司法

 

 

第5章 司法

司法権 具体的な争訟について、法を適用し、宣言することによって、これを裁定する国家作用 芦部300

法律上の争訟 a)当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、b)法律を適用することによって終局的に解決できるもの 芦部302

客観訴訟 個人の権利・利益の侵害を前提としない法規の客観的適正を確保するために認められた訴訟類型 戸波428 法律上の争訟にはあたらないが、特に行政の適法性確保のために法律で訴訟として争うことを認めたもの 有斐閣II265

法律上の争訟性にあたらない場合

(1)具体的な権利侵害がないのに、抽象的に法令の解釈・効力について争う場合〔警察予備隊事件最判昭27.10.8百II199〕

(2)単なる事実の存否・個人の主観的意見の当否・学問上技術上の論争などについて争う場合〔国家試験の合否の判定最判昭41.2.8〕

(3)純然たる信仰対象の価値ないし宗教上の教義についての判断を求め、あるいは単なる宗教上の地位の確認を求める場合〔板マンダラ事件最判昭56.4.7百II196〕

統治行為 直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為で、法律上の争訟として裁判所による法律的な判断が理論的には可能であるのに、事柄の性質上、司法審査の対象から除外される行為 芦部306。政治部門の行為のうち、法的判断が可能であっても、その高度の政治性のゆえに、司法審査の対象とされない行為 佐藤幸354

統治行為論の内容

(1)国家全体の運命に関わる重要事項(国家の承認、条約の締結その他の外交活動や国家の安全保障に関わるもの)〔砂川事件(最判昭34.12.16百II203)−条約の違憲審査〕

(2)政治部門の組織・運営に関する基本事項(意思決定手続、議員の懲罰)〔警察法改正無効事件(最判37.3.7百II192)→自律権論〕

(3)政治部門の相互関係(衆議院の解散など)〔苫米地事件(最判昭35.6.8百II204)−衆議院の解散〕

(4)政治部門の政治的・裁量的判断に委ねられた事項 →裁量論

部分社会の法理 自律的法規範をもつ社会ないし団体内部の紛争に関しては、その内部規律の問題にとどまる限りその自治的措置に任せ、それについては司法審査が及ばないという考え方 有斐閣II208、佐藤幸303・芦部309参照

(1)地方議会〔地方議会議員の懲罰最判昭35.10.19〕

(2)大学〔富山大学単位不認定事件最判昭52.3.15百II194〕

(3)政党〔共産党袴田事件最判昭63.12.20百II195〕

(4)労働組合

(5)宗教団体〔・銀閣寺事件(最判昭44.7.10)・種徳寺事件(最判昭55.1.11)・本門(ホンモン)寺事件(最判昭55.4.10)・板マンダラ事件(最判昭56.4.7百II196)・蓮華(レンゲ)寺事件(最判平1.9.8)・日蓮正宗(ニチレンショウシュウ)管長事件(最判平5.9.7百II197)・日蓮正宗(最判平11.9.28平成11重判)〕佐藤幸495〜

立法裁量 立法に関して憲法上立法府に与えられた判断の自由 有斐閣II205

陪審制 一般国民から選任した陪審員が、刑事事件の被疑者を起訴するか否かを決定したり(大陪審)、民・刑事事件で事実審理に参加し評決をしたりする制度(小陪審) 芦部318

裁判を受ける権利(32条)の意味 当該事件に対して法律上正当な管轄権をもつ裁判所で、当該事件を処理する権限のある裁判官の裁判を受ける権利 芦部231

実質的証拠法則 行政委員会が認定した事実は、これを立証する実質的な証拠があるときには裁判所を拘束する、というルール(独禁法80条1項2項)

参審員 参審員を一般国民から選任し、参審員と職業裁判官とが合議体を構成して裁判をする制度 芦部312

裁判の公開(82)

当事者公開 訴訟関係人に審理に立ち会う権利と機会を与えるという意味

一般公開 国民に公開されるという意味 佐藤幸326

「裁判」(82)判例:「性質上純然たる訴訟事件」、すなわち、当事者の意思如何に関わらず終局的に事実を確定し当事者の主張する権利義務の存否を確定することを目的とする裁判(最判昭35.7.6)佐藤幸317

多数説:32条の「裁判」とは、82条によって公開・対審・判決が原則として保障される訴訟事件のみならず、国民が紛争の解決のために裁判所で当該事件にふさわしい適正な手続の保障の下で受ける非訟事件に関する裁判も含む 芦部231

インカメラ方式 裁判官だけによる公文書の審査 佐藤320

司法権の独立(76条3項) 裁判が公正に行われるために、裁判を担当する裁判官が、いかなる外部からの圧力や干渉をもうけずに、公正無私の立場で職責を果たす(裁判をなす)こと 芦部319

「良心」 裁判官としての客観的良心 芦部320

「独立してその職権を行ひ」 他のなにものの指示・命令をもうけずに、自らの判断に基づいて裁判を行うこと 芦部320

 

第6章 憲法訴訟

憲法保障 憲法を侵害や違反から守り、憲法秩序の存続と安定を保つこと 法律学小辞典。

憲法が守られることを確保すること、あるいはその方法 有斐閣II360、佐藤幸44、芦部335

明文ある 事前 憲法の最高法規(98)、尊重擁護義務(99)、硬性憲法(96)、権力分立(41、65、76)

     事後 違憲立法審査(81)

明文なし 抵抗権、国家緊急権

抵抗権 国家権力が人間の尊厳を侵す重大な不法を行った場合に、国民が自らの権利・自由を守り人間の尊厳を確保するため、他に合法的な救済手段が不可能になったとき、実定法上の義務を拒否する抵抗行為

国家緊急権 戦争・内乱・恐慌・大規模な自然災害など、平時の統治機構をもっては対処できない非常事態において、国家の存立を維持するために、国家権力立憲的な憲法秩序を一時停止して非常措置をとる権限 芦部337

付随的審査制 通常の裁判所が、具体的な訴訟事件を裁判する祭に、その前提として事件の解決に必要な限度で、適用法上の違憲審査を行う方式 芦部340

抽象的審査制 特別に設けられた憲法裁判所が、具体的な争訟と関係なく、抽象的に違憲審査を行う方式

警察予備隊事件(最判昭27.10.8百II199)

憲法訴訟の当事者適格 憲法問題を提起し裁判所の判断を要求する資格を持つ者 佐藤338

立法不作為と違憲 (1)憲法の明文上または解釈上立法をなす義務があり、(2)合理的期間を経過した場合には、立法不作為は違憲となる 佐藤346

立法不作為と違法 立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うというごとき、容易に想定しがたいような例外的な場合でない限り、国賠法上の違法の評価を受けない(在宅投票制廃止事件)佐藤350

立法不作為と国家賠償 (1)立法義務が明確、(2)合理的期間の経過、(3)立法不作為が国民の具体的権利に直接影響を及ぼす処分的性格をもち、(4)立法不作為と損害との間に具体的・実質的な関連性があるとき 佐藤350

憲法判断回避の原則 憲法判断は事件の解決にとって必要な場合以外は行わないという「必要性の原則」に基づいて準則化されたルール 芦部342

回避しない場合 事件の重大性、違憲状態の程度、その及ぼす影響の範囲、事件で問題にされている権利の性質等を総合的に考慮し、十分理由があると判断した場合は、憲法判断に踏み切ることができる 芦部342

恵庭事件(札幌地裁昭42.3.29百II173)

合憲限定解釈 法令について、ある解釈の下ではたしかに違憲となるかあるいは違憲の疑いが生ずるが、別の解釈の下では合憲となるか少なくとも違憲の疑いは生じないという場合に、裁判所があえて後者の解釈をとり、法令そのものの違憲判断を回避すること 有斐閣II280

法令違憲 法令そのものを違憲とするという違憲判断の方法

適用違憲 法令の規定が当該事件に適用される限りにおいて違憲とする方法

(a)法令を合憲的に限定解釈することがそもそも不可能な場合に、その法令を当該事件に適用することが違憲であるとする場合 猿払事件第一審判決

(b)法令を合憲限定解釈することは可能であるにもかかわらず、そうせずに法令を適用した場合にそのような解釈・適用をその限りで違憲とする場合 全逓プラカード事件第一審判決

(c) 法令そのものは合憲だとしても、その執行者が人権を侵害するような形で解釈・適用した場合にその解釈・適用行為が違憲であるとする場合 家永教科書検定第二次訴訟第一審判決(杉本判決)

憲法判例 憲法上の争点についての判断を含む判決例 有斐閣II295、芦部352参 佐藤幸27

先例拘束性(法源性) 一般に最高裁判所の判例は後の裁判を拘束するかどうかという問題

判決理由・レイシオデシデンダイ 判決の結論を導く上で意味のある法的理由付け

傍論・オビタディクタム 判決文中「判決理由」と関係のない部分 芦部352

判例変更 先例における法令の解釈が明らかに誤りであるとき、先例が新しい社会的・経済的等の諸条件の下で時代の要請に十分対応できなくなったときなど。有斐閣II298

憲法 財政 内閣 地方自治

第2章 財政

財政 国家がその任務を行うために必要な財力を調達し、管理し、使用する作用 有斐閣II301

財政議決主義(財政立憲主義、財政国会中心主義) 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基づいて、これを行使しなければならない(83)有斐閣II302

租税法律主義(84) 租税の新設および税制の変更は、法律の形式によって、国会の議決を必要とする建前 有斐閣II304

課税要件法定主義 課税要件(納税義務者・課税物権・税率等)および税の賦課徴収手続が、法律で定められなければならない

課税要件明確主義 課税の要件および賦課徴収手続は、誰でもその内容を理解できるように、明確に定められなければならない 有斐閣II304

固有の意味での「租税」 国または地方公共団体が、特別の役務に対する反対給付としてではなく、その経費に当てるための財力取得の目的で、その課税権に基づいて、一般国民に対して一方的強制的に賦課し徴収する金銭給付

84条の「租税」 固有の意味での租税の外に、負担金、手数料、国の独占事業の料金なども含む。すなわち、およそ国がその収入のために国民に一方的・強制的に付加する金銭負担(多数説)。(なお芦部323・有斐閣II306・佐藤幸180参)。

通達 上級官庁が下級官庁に対して、法令の解釈や行政の運用方針等についてなす命令

通達課税 従来課税対象とされてこなかったものについて、通達で法令解釈を改めるなどして課税対象とすること 判例)通達内容が正しい法解釈に合致する限り、法律に基づくものといえ合憲(最判昭33.3.28百II208)

予算 一会計年度における国の歳入歳出の予定的見積もりを内容とする国の財政行為の準則 有II314

 

第3章 内閣

行政権 全ての国家作用のうちから、立法作用と司法作用を除いた残りの作用(控除説)芦部288

独立行政委員会 特定の行政について、内閣から独立的な地位においてその職務を行う、合議制(⇔独任制)の行政機関 有斐閣II177、芦部288

文民 職業軍人の経歴を持たない者(A説)職業軍人の経歴を有し、かつ強い軍国主義思想の持ち主である者以外(B説)現役軍人以外の者(C説)佐藤219

内閣総理大臣の指揮監督権 閣議にかけて決定した方針が存在しない場合でも、少なくとも内閣の明示の意思に反しない限り、行政各部に対し、随時、その所掌事務について一定の方向で処理するよう指導、助言等の指示を与える権限を有する(ロッキード事件)芦部291

閣議 国務大臣全体の会議

議院内閣制 (1)議会と政府が一応分立し、(2)政府が議会の信任に依拠して存在し(責任本質説)、(3)多面政府は議会の解散権をもつことにより、制度上議会と政府との間に連携と反発(均衡)の関係を内包せしめている統治体系(均衡本質説) 佐藤207、芦部296

大統領制 議会と政府を完全に分離し、政府の長を民選とするもの 芦部295

会議制 議会に全権力が集中し政府が完全に議会に従属するもの 佐藤207

命令 行政機関によって制定される法規 有斐閣II379

政令 内閣の制定する命令

政府委員 国会において国務大臣を補佐するため、衆参両院の議長の承認を得て内閣が任命する者 佐藤167

政府参考人 国会の委員会が、行政に関する細目的又は技術的事項について審査又は調査を行う場合に、説明を行う政府の職員(衆規四五の三、参規四二の三) なお、「国会審議の活性化及び政治主導の政策決定システムの確立に関する法律」(平11)により、政府委員は廃止され、委員会における政府に対する質疑は国務大臣等に対して行い、委員会が必要があると認めるときに政府参考人の出頭を求めることに改められた

 

第4章 地方自治

地方自治の本旨(92) 住民自治と団体自治

住民自治 地方自治が住民の意思に基づいて行われること 芦部329(地方団体の支配意思の形成に住民が参画すること 佐藤幸268)

団体自治 地方自治が国から独立した団体に委ねられ、団体自らの意思と責任の下でなされること(地方団体が自律権を有すること 佐藤幸268)

地方公共団体(判例) a)事実上住民が経済的文化的に密接な共同生活を営み、共同体意識を持っているという社会的基盤が存在し、b)沿革的に見ても、また現実の行政の上(実態)においても、相当程度の自主立法権、自主行政権、自主財政権等地方自治の基本的機能を付与された地域団体であることを必要とする(最判昭38.3.27)

 

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